● 輪切りになった胴がアスファルトへと落ちる。 同時、切断面から溢れた夥しいほどの血が、辺り一面を染めてゆく。 「……え?」 女は間の抜けた声をあげていた。血は彼女の頬までも跳ねていたが、彼女はやや不快そうな顔をして、その生暖かい液体に触れる事を躊躇するような仕草をみせるだけ。 そして、女は漸くにして隣に居る筈の男へと視線を向ける。視線は僅かに彷徨った後、すとんと足元へと落ちて、息を飲むような短い悲鳴が路地には響く。 その頃にはもう、男を一瞬で切り刻んだ者はその場を離れていた。 口には湯気の立つ臓物を咥え、硬い地面に爪の鳴る音を響かせながら。 ● 「今回の相手はエリューションビースト。識別名称『ブレードハウンド』」 集まったリベリスタ達を前に、告げる『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)。 「元になったのは『犬』。全身から何本か、日本刀のような鋭利な刃物が生えているのが最大の特徴で、これは見たとおり一般人の体程度なら軽く両断する事が出来る」 映像は既に止まっているが、確かに先程リベリスタ達はその光景を見ている。 さほど勢いをつけた訳でもない『それ』が、するりと男の脇を通り過ぎる所を。 剃刀を水に通すが如くにかすかな抵抗も無く、刃が人の身体をすり抜ける所を。 「体の大きさは大型犬程度。装甲も無いし、耐久力もそんなに高くはないけど、攻撃力だけは油断できない。そして……今見せたのは討伐対象のうちの一体でしかない」 端末の操作に従い、イヴの背後にあるモニターには更に二体の姿が映し出された。 そのうち一体は先に見た映像のものとほぼ同じ容姿だが、もう一体は。 「さっきのがフェーズ1。これがフェーズ2の『ブレードハウンド』。外見的な違いは頭部にもう一振りの刃が生えただけ。だけど、その攻撃力は大幅に上昇している」 それは斬撃に加え、刺突を可能としているのだ。更に刃は天を向いており、突き刺した後渾身の力を込めて心臓へと斬り上げる技を得意としている。 まともに喰らってはリベリスタとてただでは済まなかろう。 「以上、三体。これが今回の討伐対象。貴方たちは朝、E・ビーストの棲み処を襲撃するか、それとも明け方にE・ビーストが戻って来るのを待ち伏せるかを選べばいいと思う」 「今から行けば、どんなに急いでも夜になる、って事か?」 「そう。そしてその夜のうちに四人くらいの犠牲が出るけど、それは止められない」 「そうか……」 リベリスタ達は、少なくとも表面的には淡々とそれを受け入れた。 イヴの方も表情を変えない。その奥で何を思っているのかは分からないが。 「それじゃあ、お願い。……完遂は疑っていないけれど、くれぐれも気をつけて」 そして、そのままの表情で送り出す。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:RM | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年12月06日(火)23:27 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 待つ時間というものは、常に長く感じられるものだ。 今回の場合は特にであろうか。日付を跨ぐ頃に現地へと到着したリベリスタ達は、アクセス・ファンタズムの連絡先を交換しあった後は言葉少なに、時が過ぎるのを待っている。山川 夏海(BNE002852)が運転する4WDのシートに座りながら、夜が白みゆくのを眺めている。 この夜のうちに少なくとも4人の命がすぐ近くで喪われると聞きながら。 それに手は出せない。止められない。 歯痒い、と――視界の端に廃工場の黒々とした影を収め、『つぶつぶ』津布理 瞑(BNE003104)は思う。 「何もしないで、ただ夜が明けるのを待ってるだけだなんて……」 呟きを聞く『守護者の剣』イーシェ・ルー(BNE002142)の指先が、軋む音すら立てて座席に深く沈みこんだ。 こちらも同じ思いか。 さて、その間仕ておくべき事があった者は、僅かに待つ事の苦痛から逃れていたかもしれない。 ノートパソコンを弄る『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)。廃工場の間取り図をアークから得ようという試みはやんわりと却下されていた――ひとつひとつの仕事について、始めの説明以上の援助を行う暇は残念ながらアークには無い――ので、自力でそれを求めようとしていたのだ。 結果は、入手には成功すれど然程参考になるものではない、といった所。収穫と呼べるものは、出入り口が大きく分けて二つ存在するという事が分かった程度だろうか。 「少なくとも分かれ方は決まりました。無駄ではありませんよ」 「そう思いたいわ……」 『ガンランナー』リーゼロット・グランシール(BNE001266)の言葉に、アンジェリカは返す。ついと身を乗り出して施工当時の図面を覗き見た『殲滅砲台』クリスティーナ・カルヴァリン(BNE002878)は、薄く口元に笑みを浮かべながら頷いてみせる。 「屋内、複数の敵、障害物。うん、実に私向けの物件ね」 そしてシートへと深く体を沈ませながら、彼女は満足気に続けていた。 「結構、万難排して完璧な仕事を仕上げてあげようじゃないの」 ――殲滅砲台を敵に回すとどう言う事になるか、思い知らせてあげるわ、と。 空は朝焼けの紅に侵食されつつある。こちらが動き出すべき時までは、あと一時間ほどか。 『超守る守護者』姫宮・心(BNE002595)は、廃工場の前に先程までの闇では見えなかったものを認めた。零れた油のようにも見える赤黒い染みと、何かの残骸だ。それは彼女が注視する前で、引きずられるようにして工場の中へと消える。 「む……」 気付かなければ良かったかもしれない。同様に軽く目を伏せ、口元に手を当てる風見 七花(BNE003013)。 「犬は、好きです。だけど、この子達は……」 「ええ……私も嫌いじゃないデス。それにお食事にどうこう言っても仕方ないとは思いますのデス、けど」 これ以上の犠牲は出さない。七花と心は頷いていた。 出来る事ならば本当は、今回の犠牲も。 (いつかはその運命さえ、覆せるようになりたいのデス) 心はそう心中に呟く。 ● 「それじゃ、行こうか」 夏海に促され、車から降りるリベリスタ達。冷えて固まった身体をほぐしながら、それぞれに得物を抜く。 既に空色からは夜の残滓も失われつつあり、人の気配こそなかったが彼等はそれを低く構えた。 攻め方は既に決まっている。正面の広い入り口をイーシェと心、アンジェリカ。後方の搬入口には瞑と七花、夏海、そしてリーゼロットが固める。クリスティーナだけはその場でふわりと浮き上がり、上へ――つまりは廃工場の屋根へと向かう。 緩やかに旋回しながら、透視で工場の中を確認するクリスティーナ。 実際に見てみれば間取りからは分からない部分が多いものだ。特に残された機材類は、施工業者の図面からは確認できない。仲間に障害物の位置などを告げ、彼女は工場の中に寝そべるものへと眼を向ける。 E・ビースト達は全身に生やした刃を畳み、毛布の上に身を横たえていた。それぞれがある程度の距離を開けた配置とはなっているものの、その距離は5メートルの円に十分収まる。目を細めるクリスティーナ。 しかし、仲間からの配置完了の連絡が来るのと時を同じくして、クリスティーナは一体のE・ビーストがぴくぴくと耳を揺らすのを見た。その身体は伏せたままではあるが、いつの間にか横倒しになるような姿勢から、いつでも立ち上がれる足を畳んだだけの姿勢に変化させている。 気付かれた、と背筋に寒いものが走る。同時、フレアバーストを点火。廃工場内に生まれた紅い光は次の瞬間紅蓮の炎をぶちまける。舐める炎に全てのブレードハウンドが呑まれた事を確認し、唇に笑みを戻す。 「殲滅砲台からは逃げられない。さあ、焼け死になさい」 一撃ではそれは終わらない。次々と咲き乱れる大輪の華。その度に開け放たれた入り口からは熱風が吹く。 「いやぁ、派手ッスね」 思わず口にするイーシェ。しかし次の瞬間、彼女の眼前には刃が生える。身を潜めていた分厚い鉄扉を重い音色と共に貫いて、薄い刃が生えていた。 飛び出してくるE・ビースト。その刃を心が構えたラージシールドが受け止める。青白い火花を散らしての一瞬の拮抗は、足を止めたまま競り合う事を嫌がったブレードハウンドが後退する事によって解かれる。 当然の話だが、E・ビーストの側もそのまま廃工場内で焼き殺されるままという事は無かったのだ。一撃を喰らってパニックにはなったものの、その後は散開しつつ出口へと殺到し、そしてこの状況に至る。 「クリスティーナ、爆撃を中止して……」 ゆらりと影を立ち上がらせながら、アンジェリカ。 彼女に見えるE・ビーストは2体だった。そして廃工場の奥からは一発の銃声が轟く。 流れるように身を屈め、安定した膝射姿勢へ。 リーゼロットの構えるショットガンから低い咆哮と共に吐き出されたのは、魔力を帯びた一発の弾丸。 跳躍の最中にそれを見舞われたブレードハウンドに、逃れる術は無かった。腹に大穴を穿たれながら地面へと叩き落され、その傷口からは滝のような血が滴る。 「イヌですか……、忠誠心溢れるイヌは嫌いじゃないですが」 それでも尚、唸りたてるE・ビーストを眺めながら、リーゼロットの呟き。狂犬には用は無い、と。 「物騒な犬だね。こんなのはさっさと狩ってしまうに限るよ」 両手に嵌めるフィンガーバレットを一振りし、夏海が言う。そこから銃火が放たれるまでの一瞬はまさに手品のようだ。E・ビーストは脚部を銃弾に貫かれてから回避運動を開始する。よろめくだけに終わったそれの終点には、既に瞑が待ち構えていた。 踊るように閃くナイフ。身体を刻みたてる連続攻撃に、E・ビーストはその身を硬直させるばかり。水音と共に首を背側から斬りつける一撃にて、瞑は動きを止める。ぐらりと傾いだ犬の身体が自らの血溜りに落ちる。 「ごめんね……」 それだけを言って、瞑は武器を身体に引き寄せた。 「こちら側には一体だけ……正面に向かった人達が心配です。急がないと」 七花が告げ、彼女たちは廃工場の中を突っ切るようにして走ってゆく。 ● 工場内には黒い煤が漂っていた。僅かに火種を残す、かつて毛布だったものの脇に、人形ではありえない、確かに人体の一部でありながら、ひどく小さな手首を見つけてイーシェの唇が引き結ばれる。 そっか、三体で四人とは、そういう事だったんスか。 「……償いは、テメェの命で賄わさせて貰うッス。くたばれ、エリューション」 全身から吹き上がる闘気。灼けた心とやけに冷えた瞳のままに、Knight's of honorと名付けられた白銀の長剣を振り下ろす。 手応えが無いと感じるのには刹那さえも要らない。打ち下ろした勢いに乗って前方へと身を投げ出し、首を狙って放たれた断頭台の一撃を回避していた。 膝立ちの姿勢のまま、舌打ち。頭部をやや下げ突進するフェーズ2が背後に迫る。しかし横合いからその刃だらけの身体に抱きつく心が、回避不可と思われた突進をよろめかせる。 「何を……っ」 信じられない、とでも言うようなアンジェリカの台詞。しかし心は犬の身体に抱きつき、のみならずその身体を撫でさえしながら、振り落とされないようにしがみついていた。当然のように至る所が切り裂かれる。 「私は、守る人なのデス!」 もがくフェーズ2。その頭部が空いた僅かな隙を狙い、自らの影に隠れたアンジェリカの片腕が振るわれる。黒い鞭状のオーラは頭部に生えた刃を狙うも、空を切って地面を叩く。 だが次の瞬間、フェーズ2の前肢は見えざる腕に払われたように跳ねていた。心を纏いつかせたまま、転倒するE・ビースト。衝撃の方向を見れば、そこにはリーゼロットの姿。 次いで屋根にあったクリスティーナが正面入り口前へと降り立ち、リベリスタ8人は漸くこの場に揃う。 「無茶ですよ、姫宮さん」 心を助け起こしながら、七花。同時にフェーズ2へと視線を遣り、対象をスキャンする。スキャン結果はそれが強敵である事を告げていたが、彼女たちの戦力であれば食い破れない訳も無い。 「このくらい大丈夫なのデス!」 心は言ってのけるも、ダメージが笑い飛ばせる程度では無い事は理解していた。特に今回は癒し手が居ない面子だ。出来る限り無駄な負傷は避けるべきだったが、それが自分ならば構わないとも思う。 「遅くなりました」 「いや、ナイスタイミングッス!」 油断なくショットガンを構えるリーゼロットの声に、イーシェ。 先程までの視界が赤く染まるような激情を振り払い、間合いを取ろうとするフェーズ1へと電撃を纏った一撃を放つ。反動に自らの腕までもが灼けるが、元よりそういう技だ。覚悟は出来ている。そして感電に身を震わせたE・ビーストへ、夏海と瞑はタイミングを合わせて襲い掛かる。 「ほらほら、こっちだよ! 瞑ちゃんは甘くておいしーのよ!」 右から瞑の挑発。と見せて左からの夏海による拳の一撃。 「どこを見てるの? わたしはこっちだよ!」 左を向けば、右から瞑の連続斬りが叩き込まれる。 まるで撞球のように。可能な限りの的球をポケットへと沈め、攻め手を交代しながら二人はE・ビーストの体力を削り落としていった。そして頃合と見た夏海の姿が犬の背後へと回る。首筋に鈍い光が回される。 「遅い、後ろっ!」 笛のような呼吸音を首から曳きながら、フェーズ1が崩れ落ちた。脆いと告げられていた通り、リベリスタ達が作戦通りの連携を発揮すれば、然程時を費やす必要も無い。 「まぁ、私が削りを入れておいたお陰だけどね」 クリスティーナが鼻を鳴らす。さあ――と言って、フェーズ2に向き直る。 「爆撃が中途半端になった所為で、持て余し気味なの。貴方はあそこまで呆気なくはない、その筈よね?」 ● フェーズ2の突進。盾を構えて前に出た心の前で、それは強引な軌道変化。 擦過音を響かせて盾の下端を擦り抜けながら、横に生えた刃が胴へと叩き付けられる。 「……っ!」 痛みを感じるより、背筋に走る電流じみた悪寒の方が強い。深刻なダメージを負った時はそういうものだ。 血は花弁に喩えるほども舞い上がらない。足元は既に、犠牲者の血に黒く汚れている。朝日が差し込む中といえども、廃工場の中は未だ薄暗く――よってアンジェリカが振るう黒色の鞭はそれに良く馴染む。 強打がフェーズ2の頭を仰け反らせていた。天を向いた頭部の刃に狙いをつけるリーゼロット。 「野良犬が……」 訓練されたアークの犬である自分達と、どちらが上であるのか。教育してやろう。 銃声。金属質の悲鳴をあげて、浅く折れ曲がる刀身。使い物にならなくなった訳ではないが、その狙いは随分と狂う事だろう。 次いで周囲に魔方陣を展開する七花。収束された魔力の弾に援護を受けながら、瞑と夏海が心とフェーズ2の間に割り込むように突進する。 斬撃の応酬。かき鳴らされる金属音。フェーズ2は後退したものの、二人がかりの攻撃をまとめて切り払ってみせる。対して夏海の上腕は大きく切り裂かれており、脈を打って血が噴出していた。 「こ、の……犬畜生めっ!」 毒づく夏海。なるほど、フェーズが上がっただけあって、外見的に然程の相違はなくともこれは最早別物である。瞑はむしろ哀れみをもってそれを眺めていた。 それはもう、イヌである事すら止めてしまったのだろう、と。 クリスティーナの放つ一条の雷光が、激しく絡み合いながらE・ビーストを射る。焦げた黒血を点々と曳きながら、円を描くようにじりじりと接近、足を止めて唸りをあげるE・ビースト。 次の一撃はかわせないと見て取り、防御を固める瞑。突進からの跳躍、体側に生やした三本の刃を、まとめて振り抜く一閃。分かっていてすら顔を顰めたくなるほど、それは強烈だった。視界にまで散る自らの血に、自分の肩が今どういう状態になっているのか見たくも無い。 「おおおっ!」 咆哮と共に、未だ中空にあるE・ビーストへとイーシェが放つ、すくい上げるような剣閃。一条の銀は電光を纏いながら、柔らかな腹部へと叩き込まれ鮮血を撒き散らす。 軽やかな着地の音色はその後に生々しい水音を伴っていた。リーゼロットと夏海の放つ銃声がそれを追い、打ちっ放しのコンクリ床と放置された機材を削り立てる破砕音が鳴り響く。 「流石に、しぶといね……」 僅かに顔を顰めながらアンジェリカが言う。それでも確実にダメージは与え続けている、相手の体力も深刻なレベルにまで低下している筈だが、一撃一撃が脅威だ。これ以上暴れ回るのを許す訳にはいかない。 「次で勝負をつけるよ」 出血に息を乱した夏海の声。しかし自らの血に濡れて、その瞳にはやや赤みを帯びた笑みがある。 そしてリベリスタ達が待ち構える中、E・ビーストの最後の突撃が敢行された。 床を穿つ銃撃。急停止によって遣り過ごしたブレードハウンドの、霞み消えるかのような跳躍。偏差を取った雷光がその身体を打ち、しかし一振りの刃と化した獣の跳躍は止まらない。 「切れる得物を持ってるのは……うちらだって一緒なんだから!」 捻じるように身体を投げ出しながら、瞑はそれとすれ違う。握るナイフの先端に緋の一線が引かれる。 跳躍の終着点にはイーシェが控えていた。堅牢な防御の型を取った長剣を襲う、凄まじい衝撃。肩口を割って止まった刃を横目に眺めながら、彼女は笑みを浮かべる。 「恐るべき切れ味ッスね……正しく血を吸ってきたってヤツッスか」 だが、それもこれが最後だ。イーシェは犬の身体を突き放し、真っ向から長剣を振り下ろす。 罅。どさりと地面に落ちる屍に僅か遅れて、折れた刃が涼やかな音を立てていた。 ● 「……はい、殲滅完了、っと」 負傷者にとりあえずの応急処置をして、リベリスタ達は引き上げにかかる。 後始末を進めながら、寂しげな目で廃工場内を見回す瞑。七花に促され、彼女は歩き出す。 「それ……持ち帰るのですか?」 「出来れば、と思ってたッスけど。これはもう役に立たなさそうッスね」 罅だらけの刃を摘み上げるイーシェ。彼女は何かを考えるように俯き、自嘲ぎみな笑みを浮かべる。 「奪われた命は帰って来ない、でも、これから奪われる筈の命は護れたと思うことにするッスよ」 ただの野良犬なら可愛げもあったのに、と振り返る夏海。そして、彼女は撤収を促す。 次生まれ変わった時は幸せになれますように。アンジェリカはそう祈りを捧げて、誰も居なくなった廃工場を後にした。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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