●白い封筒、白い便箋 『これは不幸の手紙です。 この手紙を受け取ってから一週間以内に、 同じ文面の手紙を五人に出して下さい。 さもなければ、あなたの身に不幸が降りかかるでしょう。 ※必ず書き直して下さい。』 薄暗い部屋。乏しい明かりの下、複数の男達が静かに手元と向き合っている。 丁寧に、かつ正確に。 机の上で走らされるペンの音は規則的だ。 「……しかし、この部屋も広くなったものだね」 最も上座に座る男が、紙の端を合わせながらぽつりと呟く。 その言葉に、男たちは手を止めた。 「……仕方ありません、リーダー。彼らは相容れなかったのです」 「我等はあくまで不幸の『手紙』チーム。部門を越えた行動を容認する訳には行きません」 「電子媒体は別のチームが存在します。越境行為です」 「そもそも。『ボタン一つで撒き散らされる軽薄さが良い』等と言い出した怠惰な徒を残らせておく理由もありません。我らの信条はなんですか。『全身全霊を注ぎ込む』ですよ。手書きであるからこそ、書き続ける中で感じる背徳感、そしてそれを今から配るという罪悪感があるというのに」 「増してやメールなんて差出人が分かるじゃないですか。分からないのならばそれは単なるスパムです。来た手紙が『あいつか、もしやあいつだろうか』と苦悩させる楽しみもない」 「画像を添付する手段もあるそうですが、邪道。実に邪道。半端に現実味を持たせようとするから逆に人は現実に立ち返るのです」 一様に、苦悩の表情。 端に座っていた男が、リーダーと呼ばれた男を振り返った。 「若い連中はほとんどあちらへと行ってしまいました。このまま、我等は遺物として取り残されてしまうのでしょうか」 「……東君。それは違うよ」 「ですがリーダー」 「今野君。我々が伝えるべき事はなんだい。そう、『手書きの重み』だよ。人の手から手へと繋げて行く、その営みだ」 「人の手から、手へ……」 「ああそうだ、宇津木君。幾らメールが時代の流れを取ろうとも、手紙という手段はなくならないと私は信じている」 「リーダー……!」 「泣くな、映見君。便箋が濡れてしまうだろう」 何故か感極まった様子で泣き出す仲間に、男は優しく語りかけた。 「古き良き物は、時を経ても決して廃れはしない。いや、我々が廃れさせてはいけないのだ」 落ち着いた口調でそう告げたリーダーは――きゅっ、と封筒を、閉じた。 ●差出人も宛先も真っ白 「やあやあ皆さん、お集まり頂きありがとうございます。皆さんのお口の恋人断頭台・ギロチンです。さてぼくは喋るのが大好きですけど、手紙も趣があっていいですよね。特に最近は連絡事項もメールで済ませる事が多いですから、手書きってそれだけで嬉しくなりますよね」 笑いながらフォーチュナ、『スピーカー内臓』断頭台・ギロチン(nBNE000215)が集まったリベリスタに封筒を差し出した。 訝りながら開けた目に飛び込んできたのは、『これは不幸の手紙です』の文字。 微妙な表情で見詰めるリベリスタを気に留めた様子もなく、ギロチンは話を続けた。 「でもほら、嬉しくないですよね不幸の手紙。今回皆さんに潰して頂きたいのは、【悪の軍団ショーキヴォン】のチーム不幸の手紙『保守派』で――」 流石に突込みが入った。 なんだそれ。 「【悪の軍団ショーキヴォン】というのは自称であり、小規模な悪事に全身全霊全力を賭けるフィクサードの集団です。世も末だなあと思うレベルに人員がいるみたいですね。世紀末は終わったのに世も末です。で、今回、ぼくと名古屋のメルクリィさんが見たのは、その中で『不幸の手紙』を専門に扱うチームです」 不幸の手紙を専門に。 ナチュラルに意味が分からないが、多分不幸の手紙愛好会みたいなものなのだろう。多分。 「で、この集団、今『急進派』と『保守派』に別れて争ってるみたいなんですね。Eメールでの不幸の手紙を可にするべきだという急進派と、あくまで『手紙』という路線を守って行こうという保守派。皆さんすげえどうでもいいって雰囲気してますがぼくも同感なのでもうちょっと聞いて下さい」 渡されるペラい資料。 というよりほとんど地図。ネット印刷のコピーに丸が付けてある。 「ここのビルの一室で彼らは不幸の手紙を書いています。大体想像が付くと思いますが、彼らはそもそも戦闘をする方々ではないので、はっきり弱いです。でも『自分たちは悪い人間だ』と思っているので、部屋に踏み込めば勝手に自己完結して戦おうとしてくるでしょう」 なんで、油断しない程度にちょっとばかし拳で叱ってついでに不幸の手紙破棄してきて下さい。 どこまで真剣なのか分からない、曖昧な視線が考えるように空を向いた。 「敵はリーダー、それに仲間が十人います。あ、『急進派』に関しては別のチームが向かってくれるので大丈夫です。心配はないでしょう、きっと。他に説明する様な事はなかった気がします。なくても何とかなるでしょう、皆さんなら」 全力で投げっぱなしを決め込んだフォーチュナは、ふと携帯を取り出した。 「所で、同じ人から不幸のメールが五通来たらその人に二十五通送り返すべきですかね」 最早無視して出て構わないだろう。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:黒歌鳥 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年12月10日(土)23:23 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●「無駄な努力」は褒め言葉です 不幸の手紙。 それはチェーンメールの一種である。 人の手から手へ、形を変え媒体を変え情報を伝達する。 本来は情報を伝達する為の手段であったのかも知れないが、こと『不幸の手紙』に関しては情報はない。振りまくのは疑心暗鬼と不安だけである。 利のないこの品物が今も流布する理由は合理的に考えれば分からないものだろう。 いや、不特定多数に不安を振りまく愉快犯的感情が元だとすればそれはそれで理解ができる。 しかし、『不幸の手紙』自体に執着し存続させる理由となると――。 「アホな悪の組織だなあ……」 そう、『血に目覚めた者』陽渡・守夜(BNE001348)の呟いた結論にしか至らない。 そもそも本当に悪なのかすらも分からないが自称悪の組織で悪いって言ってるんだから悪いんだろう。きっと。 「不幸の手紙にデジタルもアナログもねーだろ」 本人達としては重大な問題であろう事をあっさり切り捨てた『さすらいの遊び人』ブレス・ダブルクロス(BNE003169)には全く理解できない感覚である。 もっとも、理解できない方が正しいのかもしれない。大人として。 ただちまちまちまちま不幸の手紙を書く集団が存続するというのも、想像すればそれはそれで邪魔くさい。何となく。 「でも、不幸の手紙を直筆で書くなんて凄いよね!」 「こどもの時流行ってましたよ」 わたしは全部止めてましたけどね、と『気紛れな暴風』白刃 悟(BNE003017)に向けて『蒼輝翠月』石 瑛(BNE002528)が笑う。 リミット。三日、五日、一週間。長ければ一月以上。期限を付ける事で焦らせ判断力を鈍らせるという目的もあるのだろうが、そもそも信じていない人間――もしくは恐怖よりも怠惰や忘却が勝った人間の場合は実に無意味だ。 「手書きは味があっていいよね♪」 「ええ、まあ、古き良き物は、時を経ても決して廃れはしない……という言葉自体はいいものだとおもうんです、が……」 その場でステップを踏みながら楽しげに言う『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285)に、『のんびりや』イスタルテ・セイジ(BNE002937)が若干言葉を濁す。 手紙自体はいいとして、不幸の手紙が『良き物』かどうかは賛否両論というか否が八割以上だろう。 「ま、どんなことでも心血を注いで取り込む姿は美しい、ですが……」 「こまけーことはいいんだよ! あくをたおせー、あくをこらしめろー」 本日は別ですね、と呟く『一葉』三改木・朽葉(BNE003208) に、『ひーろー』風芽丘・六花(BNE000027)が片手を上げた。 確かに、細かいことを気にせずとりあえず殴る姿勢が今回は正しいに違いない。 何人かの仲間は何故か同じ色の服で統一したりしているが――理由は後ほどに。 ●何の話だったか ブルルルルルッ。 守夜のバイクが、夜闇にその存在を響かせる。 気付かれたら? 大丈夫、バイクの音まで気にするような悪事してないから。 「……馬鹿らしくなって、逆に怒りが沸いて来たぜ」 赤――しかし明るい赤ではなく、血を思わせる鎧を纏った守夜が、ヘルメットを脱いだ。 入れ替わりに、兜を装着すればそこにいるのは正義のヒーロー『ブラッドムーン』 頷いた彼を先頭に、メンバーはビルの中へと入り込み、或いは明かりを目標にして翼を羽ばたかせる。 強結界の効果を信じているのか入り口には鍵すらなく、内部にも罠の類はない。 もしかしたら罠とか用意すると自分たちが邪魔なのかもしれない。 敵の本拠地にて、リベリスタたちは息を潜めて目的の部屋へと足を進める。 やがて聞こえてくるのは、かすかな声。 二つある扉に分散し、聞き耳を立てる。 『……リーダー、しかし滅入(めいる)の処分に関しては……』 『処分か……妥当な所では、チーム不幸の手紙からの抹消だろうな……』 『ですが、彼らは既に自分達こそチーム不幸の手紙である、と名乗りを……』 声だけ聞けば酷く重大な会話をしているようだが、内実を知っている身としては何を真面目に話しているのかという話題である。 が、そこで膝を突いて内容を聞いていた一人の少女が立ち上がった。 「まてーい、しょーきぼん! これ以上の不幸の手紙はアタイ達がゆるさねぇ!」 「何ィ!?」 「侵入者だと!?」 「誰だっ!」 打ち合わせでもしてたのかお前ら。 そんな反応速度でそれっぽい返答をした保守派メンバー目の前で、バンッと扉が開かれる。 「こ、子供……!?」 飛び込んだ六花に、保守派の一人が戸惑ったような声を出した。 しかし、そんな相手に不敵(っぽい)笑みを浮かべて六花は足を踏み出す。 「あまくみるなよ、アタイは」 ばっ。(両手を揃えて横に) 「うんめーの」 ばっ。(右手だけ上げた) 「りーだーおぶりーだー!」 ばっ。(その右手を敵に向けて突き出した) 「りべれすたれっど!」 どーん。(胸をそらした) すごいぞれっど。りべれすた? とか保守派の若い一人がまだ空気読めてなくてちょっと呟いたりしたけど気にするなれっど。 それに続き、ノリノリの瑛が隣に並ぶ。 「正義に萌える緑の輝き! リべグリーン!」 親指と人差し指を無駄に立てて、腕をクロスさせる謎ポーズもとい正義のポーズをし、 「闇から現れ悪を討つ正義の夜警、リべブラック!!」 だんっ、と机に乗った守夜が指先を向け、つうか夜警ってダークヒーローっぽいな。 「清らなる純白の正義、リべホワイト」 ミステリアス系キャラっぽい朽葉が前髪を掻き揚げて保守派を睨み、 「あ、アンチ悪党、イエス正義! リベブルー!」 ちょっと照れたが故に頭を噛んだ悟がきりりと敵を指差した。 な、と一歩下がった保守派にも逃げ場はない。 派手な音を立てて窓をぶち破って来たのは一人の少女――とら。 「皆のエンジェル・リベピンク!」 まあエンジェルなのは見た目的にそうかも知れないけど、ピンク成分どこに、 「細けぇこたぁ、いいんだよっ☆」 なんかさっきも聞いた気がすんなそれ。そうですね。 ともかく揃った六人は、保守派に向けて一斉にポーズを取る。 「「「「「革醒戦隊(かくせーせんたい)、リベリスター!」」」」」」(どーん/六花のフレアバースト背後に無駄打ち) すごいぞリべリスター。 「……よくやるな」 全く注意を向けられなかったので普通に後ろの扉を開けて入ったブレスが、思わず呟いた。 もし口上を無視して攻撃してきたら、という彼の考えは常識的であったが故に杞憂である。 ノリを無視して戦闘ができるような思考回路だったならば、そもそも不幸の手紙チームもとい悪の軍団とかに入ってない。 呆気に取られている集団の中、リーダーの文夫がそれっぽく眼鏡を上げた。こいつ眼鏡キャラだったっけか。まあいいや。 「……なるほどね。いつかこんな日が来ると思っていたよ。一面的な道徳のみ偏重し、我らが伝統を絶やそうとする『正義』が訪れる事をね」 「いや、シリアス気味に言われてもそんな大層な事では」 「不幸の手紙書いてる奴に一面的な道徳とか言われても」 同じく窓から全く注目されずに入り込んだイスタルテと交互に突っ込むブレスだが、そもそも聞いちゃいねえ。 メンバーの中では年長が故に恥ずかしさが先に立った二人にとっちゃ突っ込みどころばかりだというのに、ひしひしと感じる謎のアウェイ感。 とんとん、と肩にかけた得物の柄を叩く仲間の手持ち無沙汰っぷりを察したか、悟が保守派に向き直って宣告する。 「不幸の手紙を撒き散らす悪党を懲らしめにきた。いざ尋常に勝負!」 その言葉に、他の保守派メンバーもはっ、と顔を引き締めた。 各々取り出すのは、各自の得物か。 一応拳銃とか取り出してくるのでそれっぽいとか思ったけど多分エアガンだこいつら。 スーツ姿の文夫が、別にマントをつけている訳でもないのに腕を振り上げる。 「ふふ、ならば悪の軍団ショーキヴォン、チーム不幸の手紙リーダーであるサバスゴートがお相手しよう!」 「リーダーその名前初耳です」 「適当につけた!」 「えっ、ならば僕はえーとえーと」 「待て、様式美としては怪人一人に戦闘員多数というのがセオリーだ。つまり私達は戦闘員!」 「イーッとか鳴けばいいんですか先輩!」 「皆で集まってそれっぽいポーズを!」 全員ノリノリだ。 というかまあ、様式美を愛するからこそ保守派なのかも知れない。 ちょっと輝いてるぞ。おっさん達。 きっとこういう『悪の組織』的なノリも好きなんだろう。だがまあ、それはそれ。 「えーとぉ~……」 わやわやしてる所に、ちょっと考えたイスタルテが問答無用で光を放った。つまり神気閃光。 室内で群れてるからよく通る事通る事。 「ぐはあっ!?」 「ぐおおお!?」 「つ、強いぞ、リベイエロー……!」 「やーん、やっぱり間違えられたぁ~!?」 フラグは踏むもの。 一足先に立ち直った文夫もといサバスゴートが注意を促した。 「皆、イエローのメガネビーム如きで後れを取るな!」 「……メガネビームじゃないです……」 そんなイスタルテの悲痛な呟きも、当然ながら聞いちゃいねえ。 ●戦闘? いいえ一方的な粛清です 部屋自体は若干薄暗くはあったが、そもそも細かい事を考える必要もない。 元からある照明に加え、とらと悟の懐中電灯で十分過ぎる程に照らされた室内は――大方予想通りの光景であった。 「全く、加減してやってんだからな」 本来ならば己の身に向ける側、石突で一人の腹を突いたブレスが肩を竦める。 どうしようもなく無駄な行為に熱を燃やす連中ではあるが、殺すほどの理由は感じられない。 柄を回し、今度は刃の裏側で敵の頭を打ち据える。 「悪は滅ぼしてあげるよ!」 「ぐああ!?」 照れてる割には結構ノリノリなリベブルーこと悟の雷撃が荒れ狂う。 じりじりと近寄ってきていた数人が、モロに食らってびたんびたんと地面を転がった。 数人というかモロに全員食らってたりするのだが、あとは根性で耐えた様子である。 「手紙ばっかり書いてないで運動もしたほうがいいですよ?」 「うぐふっ!?」 瑛の白蝋杆がしなり、一人の足元を掬い上げる。 転んだ所に叩き落される一撃にもだえる男に、彼女は笑いかけた。 「体硬いですねー。しっかりストレッチしないと怪我しますよ」 ストレッチ以前の問題だとか言っていいんだろうか。 朽葉は妙な感覚を感じる。 覗き込まれる感覚。心を見透かされる、その感覚。リーディング。心を読む術。 本意を探る為だったのか、次の行動を読むつもりだったのかは分からない。 だが、朽葉の振り返った先で保守派の一人――面倒なんでお前久地な。久地は目を見開いた。 「なんだ、と……これほどまでに正義を愛しているとは……!」 すいません、それペルソナです。 と真正直に言う訳もなく、再び朽葉の手から白い光が部屋中に広がる。 打ち据えられた久地が、床の上に転がった。 「痛いのならば、それこそ不幸の手紙を送りつけられた者の心の痛みです!」 まあ死なないからいいよね。 そんな中、イスタルテが声を上げる。 「不幸の手紙とか、いけないと思います」 「何だと!?」 「手紙っていうのは、ラブレターみたいな……貰うとほんのちょっぴり幸せな気分で胸がいっぱいになるものなんですよ」 胸の前で手を組んで、少しばかりはにかんだ口調で言うイスタルテ21歳。 ラブレターを貰った経験はないので想像でお送りしております。 もっとも彼女に恋文を貰った経験の有無などショーキヴォンの皆様は分からないので素直にくっ、とか言って引いたりしている。 そこにとらが大きく頷きを添えた。 「そう、お兄さん達の手紙には足りないものがあるの!」 「なん……だと……」 「それはね」 とらが飛んだ。部屋の中心へと。 「相手は今、何を考えているのかな?」 頬に手を当て、憂いのポーズ。 「この手紙、喜んでくれるかしら?」 屈み込んでのの字。 「お返事がもらえるといいな☆」 立ち上がってくねくね。 「そんな、ドキドキ! 興奮! エクスタシィ! お兄さん達に欠けているものは、ズバリ愛よっ!」 「愛だと……!?」 「一方的でリターンアドレスさえ書かれていない手紙にいつまでも囚われる人なんていない。そこには『情緒が存在しない』から!」 どどーん。少女に指を突きつけながら告げられた言葉に、保守派が顔を見合わせる。 何だろうこの意味が分かるけど分からない説得力。 ざわめく保守派に、リーダーがすっと手を上げた。 「愛ね、お嬢さん、我らに不幸の手紙に対する愛が足りないというのならば、証明してみせるがいい!」 「あれ、今そんな話だっけ」 「つまり殴ってくれって事だろうからいいんじゃないかな」 大見得を切ったものの、そんな会話がぼそぼそと交わされる間にもブレスや守夜が黙々と保守派雑魚メイツを殴り倒している。 気付いたら敵はリーダーだけ、という状態になっている訳で。 「残るはお前だけだ、ヤギ男っ!!」 「ふっ……やれるものならばやってみるがいい!」 そして放たれる光。べ、別に敵の攻撃描写忘れてたから今慌てて攻撃したんじゃないんだからね。 意志の込められた力強い十字の光は、六花を打ち据えるが――彼女は駆けた。文夫の元へ。 組み付いた六花は、澄んだ青の瞳で文夫を見る。正直父親に抱きついた娘の如き平和な光景に見えなくもない。 が。 「くらぇい! りべりすた・だいなまいと!」 「……な、自分ごと――」 驚愕に歪む文夫の顔。 そう、彼女が放ったのはフレアバースト。ちなみにご存知の通り別に接敵する必要も自分を巻き込む必要もないが雰囲気だ雰囲気。こまけえこたいいんだよ。 ともかく、ほぼ無傷であった六花はともかく、地味に他の攻撃も食らっていた文夫は一溜まりもない。 爆発の煙が納まった中、立つのは少女、一人。 倒れた文夫から漏れたのは、呻きのみ。 「ば、ばかな……」 かくて悪の軍団ショーキヴォン、チーム『不幸の手紙』は敗れたのである。 展開速いのは巻きだ。 ●師走の焼き芋会開催中 ダンボールから取り出された手紙が次々と炎の中に投げ込まれる。 炎の傍に正座した保守派メイツがこの世の終わりのような悲痛な顔をしているが、それはそれ。 「他に焼くもんはねーか?」 「あ、机今解体中なんで待って下さい」 ついでとばかりに内装も大半引っぺがし、模様替え。良い子は粗大ゴミを許可なく外で燃やしちゃいけないぞ。 元の部屋では朽葉によって掛けられた白いカーテンが風に踊っている。 「そろそろ大丈夫かなあ」 悟が枝の先で突いた所から転がってきたのはアルミホイルの塊。否、アルミホイルに包まれたサツマイモ。 早速かぶりついた六花があぢーとか言って転がったが、これならば大丈夫だろう。 ちなみにリベリスタ、芋持参である。 そんな光景を見て、ふとイスタルテが微笑んだ。 「不幸の手紙が、誰かに幸せを振りまいてく……そんな光景は滅多に見られませんよね」 いい話っぽくまとめようとしているが、どことなく疑問を感じなくもない。 「やー、なんか厄落としな感じでいいですね」 瑛が空に吸い込まれていく煙を眺めてそう呟いた。 そんな彼女も保守派が頑張って書いた手紙で焼いた芋を美味しそうに食っている。 保守派が泣いている。 と、意気消沈で俯いていた文夫の前に、上昇気流に乗って舞い上がった手紙の一部が落ちた。 記されていた文字は、何の因果か『幸』の文字。 それを見て、彼はふと優しい目になる。 「ああ……そうだな、私たちは、大切な事を忘れていたようだ……」 「忘れてたっつうか根本から見失ってただろうが」 「幸いであるという事は、大切な事だ……」 相変わらず人の話を聞いちゃいねえ相手に遠い目をするブレスの横から、悟が芋を差し出した。 「そう。一文字ずつ気持ちを込めて手紙を書くならさ。人を幸せに出来た方がきっと嬉しいよ」 神妙な顔で芋を受け取る保守派メンツ。食うのか。結局。 煙が目に染みるなあ、とか言いながらもそもそと芋を食う保守派の前に差し出されたのは、手紙。 差出人は、一人の少女。 「だから、ね、良かったらお返事してね☆」 ――にこっと微笑んだとらの元に、きっちり11通のお返事が届くのは、もう少し先の話である。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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