● 『その占い館で不幸な未来を告げられると、確実に不幸なことが起こる』 そんな噂の流れる占いの館。 「不幸が起こるって言われなかったら、別に悪いことは起きないらしいし……運試し?」 「だよねー、良いことがあるよと言われたら、ほとんど当たらないって話だしね!」 噂を知る人々は、誰もがこう語る。 良い結果を告げられても、特に何か良い事が起こるわけではない。 「問題は不幸を告げられた時よね……」 ある者は、そう言った。 その占いの館で不幸を告げられた時だけ、その占いは確実に当たるのだ――と。 「でも、回避するグッズを買えば大丈夫なんだっけ。馬鹿みたいに高いけどさ」 しかしその不幸の運命も、占い館で勧められた高額のグッズを買えば回避する事が出来るらしい。 ――転ばぬ先の杖という事だろうか? 「……どうでしょうか?」 その占い館に今日もまた1人の女性が訪れ、自身の未来を占ってもらおうとしている。 カーテンで外の光を遮り、蝋燭の灯りだけが室内を照らす室内。彼女の眼前の占い師の表情は、部屋の暗さに加えてフードも被っているため、はっきりと見ることは出来ない。 「そうですね……あなたは今日、恋人とのお付き合いで悩みここを訪れた……違いますか?」 「ええ、そうです! やはりすごい占い師さんですね!」 静かではあるがはっきりとした言葉で、ピタリと女性の悩みを当てて見せる占い師。 「占ってみたところ、あなたはその恋人と別れなければ酷い目に遭うという結果が出ています。今すぐにでも別れなければ大変なことになりますが、このお守りを買えばその不幸は回避出来ますよ」 しばらくの後、占い師は結果を告げると同時に小さなお守りを女性へと差し出した。 「あ、いえ……良いです。今から連絡を取って、直接彼に別れ話を切り出しますから」 だが彼女はそのお守りの購入をきっぱりと断ると、代金を置いて静かに立ち去っていく。 酷い目に遭う。 ここで不幸な結果を告げられると確実に不幸になるという事は彼女もわかっているらしく、その行動は迅速そのものだった。 それが本当に『迅速』だったかどうかは、さておき。 「……もしもし? 今の客、後をつけて何時もの通りに」 女性が館の扉を閉めて出て行った事を確認した占い師は、おもむろに携帯電話を取り出すと、その言葉だけを残して電話を切る。 「グッズを買わない客には、不幸な目に遭って広告塔になってもらわないとねぇ……」 不幸な未来を告げられると現実に不幸が起こる。 それは当然の話だろう。 占い師が配下の者に、高額のグッズを買わなかった客が実際に不幸な目に遭うように仕向けていたのだから――。 ● 「確実に当たると噂されていますが、占いではなくインチキですね」 不幸になると言った相手に、占い師の関係者が何らかの行動を起こして不幸にしているのだから、『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)がそういうのも当然だった。 むしろインチキというより、詐欺というのが妥当か。 「厄介なのは、この詐欺師達がフィクサードである……と言う点です」 あたかも占いによって相手の悩みを当てているように見せかけていたのは、どうやらエリューションとしての能力を使用して相手の心を探っていたから、という事らしい。 彼等の犯行の方法は、 ・まず占い師が不幸な未来を予言する ・そして占い師から連絡を受けた者達が、指示通りに相手に不幸をもたらす という2つのシンプルなものだ。 ここでもしも高額の不幸回避グッズを買えば犯行は実行されず、フィクサード達は労せずして金を得ることが出来る。 買わなければ上記の作戦を実行し、被害者は『本当に不幸が訪れた』と噂をばら撒き占い館の広告塔になるだから、相当に狡猾な面もあると言えるだろう。 「ですが占い師の配下のフィクサードは連絡を受けるまで、バラバラに行動しています。このままでは捕まえるのは困難でしょうね」 まずは連絡を取らせて集結させなければ――。別に和泉がその後にそう言わずとも、集まったリベリスタ達はそれが何を意味しているのかは理解したようであった。 その別働隊は占い館の近くに待機しているものがまず連絡を受け、その後に他の仲間に連絡しつつ、標的の後を追う。 「そして適度に人がいない場所に標的が足を踏み入れたところで、眠らせたところで犯行に及ぶようです」 となると、逆にリベリスタ側が網を張ることも十分に可能だと和泉は続けて言った。 「別働隊はこの場所でなら、迎え撃ちやすいかもしれません。ですが……」 占い館から適度に離れた空き地を指し示した和泉の表情が、そこで少しだけ曇る。 「厄介なことに、占い師はハイリーディングで相手の思考を読み取るんです。少しでも怪しい気配があれば、別働隊に連絡が飛んでしまいますよ」 相手の悩みを読み取るために使用しているのだろうこのスキルの存在が、大なり小なり戦局を左右するというのだ。 ここを上手く乗り切れば別働隊に油断が生じ、乗り切れなければ相手の警戒を招く。 「占ってもらうために館に入れるのは1名のみですので、その人が占いと称した相手のハイリーディングをどうかわすかが重要ですね」 どう切り抜けるかは、対応するリベリスタ次第。 「占い師はしばらく別働隊の連絡が入らなかったり警戒された場合、危険を察知して逃走します。捕縛は相当難しいと思われますので、別働隊だけでも抑えてください」 そして当の占い師も一般的なリベリスタと同等か、やや勝る力を持っている。 館には占い師以外は誰も存在しないため、捕縛のために踏み込む場合は人数制限はない。あるのは時間の制限と警戒されるか否かだけだ。 「こんな詐欺を見過ごすわけにはいきません、どうかその犯行を阻止してください」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:雪乃静流 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年12月10日(土)23:23 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●覗いたのは偽りの心理 「いらっしゃい。じゃあ……早速占うから、そこにかけてくれるかしら?」 相手の心を読む力を駆使し、人から金を巻き上げるフィクサード、浦辺・芽衣。 訪れた客を席へと誘う芽衣は、フードの下から覗く口元にわずかな笑みを浮かべていた。 (この子はグッズを買うのかしら? それとも……不幸を望むのかしら?) 笑みと共にそんな考えが脳裏を過ぎるが、どちらにしろカモには間違いないのだからと、彼女は静かに水晶球に手をかざす。 「はじめまして、私、罪姫さん。悩みは……」 「言わなくて良いわよ、きっちり当ててあげるから」 しかし今日の客、『積木崩し』館霧 罪姫(BNE003007)がカモではない事に、芽衣は気付いていない。 (最近突然犬歯が伸びたり、陽射しを浴びると気分が悪くなったり、体質が変わったみたいで困ってるの) ハイリーディングで読み取った彼女の思考は、ペルソナによって作り上げられた偽りの心。 (なるほど……私と同類のようね) などと罪姫がエリューションとして覚醒している事実には気付くものの、彼女が敵であろうとは気付きはしなかったようだ。 「ふむ、犬歯が伸びたり、日差しを浴びて気分が悪くなったり……ねぇ」 「何か悪い事の前兆ではないかしら?」 不安な気持ちを装うために尋ねる罪姫の演技は、ハイリーディングのみに頼る彼女を欺くには十分すぎるものだったと言えよう。 (内心、前から思っていたの。きっと私の前世は平行宇宙に在る闇の国の皇女で、使命を与えられて転生して来たんだって) さらにそんな心情をペルソナによって築き上げ、手首に巻いた包帯を見せ付ければ、芽衣にとって罪姫は所謂『そっち系の子』と判断したらしい。 「あなたの前世は、平行世界に在る闇の国の皇女……間違いないわね。でもその前世の力は、あなたに不幸をもたらすわ」 「ではどうすれば良いの?」 「丁度良い物があるわ。前世の力を封じてくれるお守りがあるの。といっても、あなたが本当に過去の力に目覚めるまでの間だけね」 おもむろにお守りを取り出した芽衣は、続けて値段が『10万円』だと罪姫に告げる。 「今すぐにでも身に着けないと、大変なことになるわよ」 「10万円……今はそんなに持ち合わせてないの」 もちろん罪姫に、最初からそんなグッズを買うつもりはない。 「そう。なら、お金が出来たらまたいらっしゃい。それまで不幸が起きないように祈っているわ」 「わかった、そうするね」 最後にそう言葉を交わした罪姫が館を出た後、携帯電話に手を伸ばす芽衣。 「今の子、何時もの通りにね。ただ、私達と同類の能力者のようだわ。慎重にいきなさい」 ターゲットが同類である事を軽く注意した彼女は、客が並んでいない事を確認するとカーテンを開け放つ。 次の客が来るまでの休憩時間に、部屋を暗くしている必要はないのだから――と。 『今、罪姫が出た。大野も後を追い始めた。後は手筈通りにやるぞ』 その連絡が『さすらいの遊び人』ブレス・ダブルクロス(BNE003169) から広場に待機するリベリスタ達へと飛んだのは、それからすぐの事であった。 『部屋は暗いけど、他に客はいなかったの。部屋の広さは、カーテンで遮られてたけど、普通の広さだったね』 と同時に、占い館の近くに待機していた『高校生イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)にはブレスからの電話に加えて罪姫からのメールが届く。 「よし、了解。ホントは派手に行くほうが得意なんだけど、そうも言ってられないか」 館周辺を警戒していた大野が動いた以上、夏栖斗が周囲をうろついても不審に思う者はもういない。 安全を確認した夏栖斗は、じっくりと館の周囲を観察して芽衣の逃走ルートを推理し始める。別働隊は仲間がきっちり抑えてくれるはずだという信頼と、芽衣を絶対に捕らえるという決意を胸に秘めて。 「向こうはかずとんに任せて、こっちはこっちの準備だお」 一方の広場では、連絡を受けた『おっ♪おっ♪お~♪』ガッツリ・モウケール(BNE003224)が待ち受けるのに適した隠れ場所を探し始めていた。 周囲に人気がないと判断しなければフィクサードは襲い掛かってこないため、この行動は至極当然の行動だろう。 「それにしても詐欺ねえ、真面目に働きなよ君達。と言った所で、フィクサードには馬耳東風だろうからなあ」 ガッツリと同じように隠れ場所を探しながらそうぼやいたのは、『彼岸の華』阿羅守 蓮(BNE003207)だ。 「儲かってるからやめられないんだろ。羨ましい限りだぜ……私も乗っからせてくれねえかなあ、なんてな。──勿論冗談だぜ、冗談」 彼のぼやきに冗談交じりでそう答えた『捻くれ巫女』土森 美峰(BNE002404)の言うとおり、儲かっているならば、そんな注意をフィクサード達は聞きはしない。 しかしその儲けの手口は人の心を踏みにじる犯罪であり、到底許せるものではないのも事実。 「占いは……決して……人に……絶望を……与えるための……ものだけではない。迷う人に……指針を……与え……その……未来への……道程の……手助けをするもの」 「だな、占いってのは規範と哲学なんだよ。未来が見えるとか解るとか、大概はインチキか思い上がりだな……」 本当の意味での占いとはかくあるべきだと言うエリス・トワイニング(BNE002382)は、同意した『地火明夷』鳳 天斗(BNE000789)の言葉に頷くと、さらに言葉を紡ぐ。 「……人の……心を……食い物にする……人は……許せない」 それは今ここに集まったリベリスタが、フィクサードと戦うための理由そのものだった。 ●追う者、待ち受ける者 時は流れ、約1時間後。 「さて、では手筈通りにやりましょうか」 「了解した、おあつらえ向きにやりやすいシチュエーションだ、抜かりなくいこう」 罪姫が襲撃をしてくれと言わんばかりに広場へと入ったのを確認した大野の言葉に、合流した松木は『抜かりなく』と応えながらも、その顔には軽い笑みすら浮かんでいる。 「あの女……同類なんだよな?」 だが坂井がそう言う通り、彼等は罪姫が自分達と同じく能力に目覚めている事を決して忘れているわけではない。 「眠らせられないだけだろう? なら、同類だという事を理由にして襲えば良い、何時もと変わらん」 それでも一般人を襲うのと大差はないと近藤が言い切る辺り、警戒心はないらしい――。 「来たな……」 罪姫、そして4人のフィクサードの到達は、天斗を始めとして待ち構えていた全てのリベリスタ側も察知していた。 後は飛び出すタイミング次第ではあるものの、フィクサード達が罪姫に近づく姿を見れば、もはや時間はないと言える。 キキィッ……! そしてフィクサードが攻撃をしかけようとしたのと、ブレスの駆る4WDのブレーキ音が広場に響いたのは、ほぼ同時だった。 「ナイスタイミングだ、いくぜ!」 何事かと思ったフィクサードが4WDの方向へと目を向けたのを好機を判断し、真っ先に飛び出すと近藤へ張り付く美峰。 否、張り付くと同時に陰陽・氷雨を放ち先制攻撃を仕掛けた彼女だけではなく――、 「近藤さんは誰だお?」 「――え?」 4人の内で誰が近藤なのかと言う問いにご丁寧に答えた近藤の急所をガッツリが撃ち抜いた直後、離れたところに隠れていた蓮やエリスまでもが姿を現し、フィクサード達を取り囲んでいく。 「なるほど……どうやら、罠にかかったようですね」 「いやあ、御覧の通り殆ど素人でね。お手柔らかにお願いするよ」 状況を冷静に判断し、やれやれと軽くため息をついた大野は、投げかけられた蓮の言葉にさらに深いため息が零れるのを止める事が出来なかった。 この時、彼はすでに戦闘は無意味だと判断していたのかもしれない。 「さぁて、今度はおたく等が不幸な目に遭って貰おうか」 「はは、それは遠慮したいですね!」 4WDから降りたブレスの放つ疾風の刃が近藤に飛んだ時、その言葉に返事を返したのもやはり大野だ。 「大野さん、どうするんです!?」 「余所見をしている暇はないのよ?」 当の近藤は罠を張られたという事実に軽く混乱していたのだろう。距離を詰めてきた罪姫が血を吸うべく噛み付いたその時、ほとんど無防備だったのである。 血を啜る罪姫を振りほどいた彼の視線は、彼女ではなくその先へ。 「なんとか耐えてくださいよ、突破して逃げます!」 すでに逃げる態勢を取ろうとしている、大野の方へと向けられていた。 「くはっ……どこから!?」 「6人しか居ないと思ったか? ここにもいるぞ」 だがその近藤の顔が、最後に飛び出してきた天斗の投げた苦無が背中に突き刺さり、苦痛に歪む。 「なるほど。攻め方を察するに、こちらの手の内もわかっていらっしゃるようだ」 真っ先に最も邪魔な存在であろう近藤を倒すこと。 全員の捕縛を目指すリベリスタ達にとって、これは最も手痛いミスだったのだろう。 「では、後は任せましたよ、皆さん! 先に芽衣に連絡を取り、態勢を整えてから合流しますので!」 「何……!? 逃がすか!」 最後まで動かずに戦況を静観していた大野は、近藤が集中攻撃を受けて自身に攻撃が集中しなかった事を良いことに、戦いもせずに一目散に逃げ出していったのだ。 絶対に逃がすまいと美峰が投げた式符をすんでの所でかわすと、その姿は戦場から真逆の方向へと離れていく。 「逃がすかよ!」 さらにブレスがその背中目掛けて疾風の刃を飛ばすが、大野はその攻撃を受けながらも強引に走り抜けていってしまった。 「最初に狙うべき、だったか? もう少し足掻きたかったがな……!」 そして天斗が式符を構えた時には、大野はすでに式符の射程の外。 「……深追いは……駄目……」 ならば当初の作戦通りに他の3人をどうにかすれば良い。 そう仲間達に注意を促したエリスの放った魔法の矢が近藤を撃ち倒すと、浮き足立ったままのフィクサードは序盤から2人も仲間を欠く事となった。 「どうするよ!」 「いや、どうするって言われて――も!?」 「よそ見してると被害が増えるだけじゃないかな、そっちもさ?」 あまりにも予想外の事態に顔を見合わせた松木と坂井ではあるが、そこに出来た隙は連が斬風脚を仕掛けるには十分だった事は間違いない。 『そっちも』 蓮はそう言ったものの、浮き足立つフィクサード達は大した攻撃もしないまま、リベリスタ達に取り囲まれてしまっている。 「どうするお? 投降するなら、聞くお?」 意識を研ぎ澄ませ、構えたガッツリが2人に問う。 「大野はお前達を見捨てて逃げた。抵抗はやめた方が身のためだと思うが……?」 「状況くらいは、判断出来るだろ」 ガッツリに続いて天斗と美峰が畳み掛けるように言った時、戦意を半ば喪失したフィクサードの答はすでに決まっていたのだろう。 「……降参、する……?」 「あぁ……参った、降参だ」 エリスの言葉に2人がそう答えたその時、広場での戦いは集結を迎えた――。 ●詐欺商法の終焉 「しかし参ったな……カーテンが開くとは思わなかった」 広場での戦いが始まったのと同じ頃、占い館に潜り込んでいた夏栖斗は芽衣がいる部屋の前で軽く頭を抱えながら呟く。 占い館の周辺を観察し始めた時、彼は芽衣がカーテンを開く様子をしっかり目に焼き付けていた。 突入する時に人数制限はない。 それ以外に注意された事はなかったため、罪姫の連絡もあって客足はないだろうという事は予想できた。 ゆえに彼は蝋燭の光を消し去り、芽衣の視界を奪った上で攻撃を仕掛けて捕縛するつもりだったらしい。 「まぁ……1時間もあるなら、蝋燭の光だけの部屋で過ごすわけもないって事か」 しかし罪姫が館を出て、すでに1時間。 芽衣が電灯の光をつけるなり、カーテンを開くなりする事を計算に入れていなかったのは、誤算だったと言えよう。 こうなれば頼りになるのは、己の拳から放つ土砕掌のみ。 運良く芽衣を麻痺させる事が出来れば、捕縛も難しい話ではない。だが逆にその一撃を外せば、逆に動きを止められる可能性もある。 「後はなるようになる――だな」 集中して意識を研ぎ澄ますと、意を決して扉を開く夏栖斗。 「あら、今はちょっと準備中……!?」 突然の来訪者にそう言いかけた芽衣までの距離は、ぎりぎり攻撃が届く範囲といったところか。 「悪いが、詐欺はここまでにしてもらうぜ」 一気に部屋を駆け抜け、叩き込むのは勢いに乗せた土砕掌。 「……くっ、う……!」 芽衣のうめき声と同時に、夏栖斗の手には確かに手応えがあった。 が――。 「いきなり……何するのよ!」 (浅かったか!? 後1人いれば――!) 不意の乱入者による攻撃によろめきながらも、芽衣の体は麻痺に縛られる事なく、鋭い視線がしっかりと夏栖斗を射抜く。 そして彼女がかざした手から四色に輝く魔光が放たれると、その光の全てが夏栖斗を貫き、 「……くそっ、動かねえ……!」 彼の体は動きを止め、体内には毒が駆け巡り、その肌には血の筋が赤い線を残す。 もしも誰か1人でも仲間がいればと思う夏栖斗ではあったが、いまさらそれを悔やんでもどうにもなりはしない。 ピリリリリ……ピリリリリ……。 その時、鳴り響く電話の着信音。 「――はい? ええ、うん……そっちにも現れたのね、わかったわ」 どうやら電話をかけてきたのは、広場の戦闘から真っ先に逃走した大野からだったらしい。 「待て……お前ら逃せねえからな……!」 「お断りよ。まったく、変な邪魔をするから仕事が出来なくなったじゃない……次は、邪魔しないで頂戴ね?」 捨て台詞とも恨み言とも取れる言葉を残し、壁をすり抜け姿を消す芽衣。 「――わかった、後で迎えにいく」 広場での戦いを終わらせたリベリスタ達に夏栖斗からの連絡が飛んだのは、それからすぐの事であった。 「……どう……だったの?」 「逃げられたらしい……だがこれで、奴等もしばらくは何も出来ないだろう」 連絡を受けたブレスが告げたエリスに対する答を受け、その場にいる全てのリベリスタの表情はわずかに暗くなったようにも見える。 「当初の目的は果たしたが――」 「逃がせない2人をどっちも逃がしちゃったんだお」 確かに3人のフィクサードは当初の目的の通りに捕縛する事は出来た。 だが天斗やガッツリのみならず、誰もその事実を素直に喜ぶ気持ちにはなれなかったらしい。 詰めの甘さ、運の悪さ。 この2つが重なった苦い結果を噛み締め、リベリスタ達は帰路につく――。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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