●依頼 三高平市、アーク本部――ブリフィングルーム。 「公園で、フットサルしてきて」 入ってくるなり言い放った『リング・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)に対し、リベリスタ達は「は?」といった顔。 「フットサル。5対5になって独自のルールで行うミニサッカーのようなもの」 いやいやいや、意味を聞いてるんじゃなくて。なんで、フットサル?? 「三高平公園内にあるフットサルのピッチに、エリューション達が大量に現れたの。フットサルとその観戦の為に」 そんなの、普通に倒せばいいじゃん。フットサルなんてしなくても……。 「ダメなの。彼らは全員フェーズ1の大した事ないエリューションだけれど。 何人倒しても、すぐに新しいエリューションが入れ替わりで現れるの。延々と、際限なく。 彼等はフットサルの対戦相手を待ってるの。対戦して勝利すれば、選手も観客も全員消えてくれる」 じゃ、強いフットサルチームとか呼んで戦わせれば……。 「ダメなの。彼らは活性化した特殊な技を駆使して戦うから。一般人じゃ、勝てない」 あーもしかして、あれですか。 選手が物凄い無駄な回転かましたり、ありえない高さで飛んだり、仲間踏み台にして跳ねたりするんですか。 シュートしたらボールが物凄い残像描いて光ったり、ネット突き破ったり、ポストに直撃して粉々になったりするんですね。 そんでもって、それをキーパーが手刀(以下略) 「だから、みんなも全力で戦って。そして勝つか、最低限引き分けて。もし負けたら……ピッチにいるエリューション全員が爆発するから」 な、なぬー!! 「これ、着て」 イブが用意したのは、『三高平リベリスターズ』と入った捻りも情緒も何にもない、裏にゼッケンの入ったユニフォーム。 「この服着たままピッチに入れば、相手チームの選手として扱われるから」 さり気なくアークのマークなんかが胸や肩にオシャレに入ってて、いつの間に作ったんだこんなの? といった感じ。 「試合開始は今日の正午。 あ。念の為、一般市民はピッチ周辺から避難させてるの。だから今現場にいるのは、ピッチを取り囲んだエリューションの観客と選手だけ」 ……ホームなのに、完全アウェーじゃねーか!!!! ●承前 三高平市、三高平公園――午前11時半。 フットサルのピッチの外側を囲むように、埋め尽くさんばかりの黒くて細長い棒達が直立している。 黒い棒の胴体から、二本の足と手がにゅっと生えていて、マッチ棒の先のような丸い球体が頭。でも全身がのぺっとして真っ黒。 ピッチの外側から中にいる黒い棒達を見て(どっちが前か判りゃしないんだが)、声援を送っている(口もないんだけどね)。 一方、ピッチの中はというと。 黒い棒たちが器用にボールをコントロールしてパスを回したり、ランニングやストレッチ(らしき)行為を続けていた。 これから始まる試合に向けて、彼等はウォーミングアップを行っていたのだ。 キックオフは正午とあって、観客席にいる彼等の興奮も徐々に高まって来ていた(表情はわからんけどね!)。 無数の黒い棒達は相手チームの到着を、今や遅しと待ち続けている。 そして三高平公園(の極一部分)の命運を賭け、『三高平リベリスターズ』の面々がピッチへと登場した――。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ADM | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年12月01日(木)23:52 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●三高平リベリスターズ登場! 三高平市、三高平公園――フットサル会場。 ピッチから周囲を見渡すと、360度黒い棒が会場を取り囲んでいる。 真っ黒いマッチ棒のような姿、手足が申し訳程度に生え、のっぺとしててどちらが前か後ろか良く判らない。 そんなエリューション達は新たにピッチへと姿を現した8人のリベリスタへと、激しいブーイングをかましている。 口もないのに。 『三高平リベリスターズ』というお揃いのユニフォームを着た一同。 アーク機構のエンブレムを肩と胸に、背番号もしっかり付いていて、サッカー選手らしさを醸し出している。 キャプテンマークを腕につけた『素兎』天月・光(BNE000490)は、『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)とウォームアップを始めている。 「スポーツ勝負か……平和的なんだか、厄介なんだか」 彼女はやれやれといった表情で軽くシュート練習。 快はイメージトレーニングしながら、左へ右へと軽く飛んでセーブしていく。 「俺はSGGK(シュゴシングレートゴールキーパー)、新田快。 俺はSGGK、新田快。 俺はシュゴッ…………」 どうやら舌を噛んでしまったらしい。ちょっと痛そうだ。 屈伸をしながら、パッツンパッツンにはち切れそうなユニフォームを気にするのは『爆砕豪拳烈脚』天龍院神威(BNE003223)。 「これ、ちょっと胸がきつくない?」 ストレッチをしているだけで一層くっきり強調されるすいかっぷ。 胸の部分に引きずられたユニフォームが揺れるおかげで、おへそが丸見えだ。 軽くステップをしながら源カイ(BNE000446)は、『我道邁進』古賀・源一郎(BNE002735)とパス練習を行っていた。 「フットサルは初めてなんですよね、ちょっと予習復習してきました」 カイは今日の午前中、DVDで映画『イナズマ少林寺!ジャイアントキャプテンのキリングサッカー』をレンタルして観ている。 映画の殆どが後半ロスタイム(3分間)の攻防だったので、ルール的にはさっぱりだったが。 源一郎も淡々とボールを受けているが、もちろんカイと同じくサッカー経験はない。 「初の試みであるが、用は少人数サッカーのようなものであろう?」 なれば自ずとやる事は解る、と落ち着いた感じで練習を続けていた。着流しにユニフォームで非常にアンバランスだが。 前半は控えに回る『影たる力』斜堂・影継(BNE000955)は、ベンチに一冊の本を置く。 「授業でしかやった事無いな……だが、予習は完璧だ!」 彼が読んでいたのは映画『イナズマ少林寺!ジャイアントキャプテンのキリングサッカー』の原作マンガ。 やっぱり殆どがロスタイムだった。 一方、七布施・三千(BNE000346)ベンチの向こうで光が持って来たチアガール服を吟味している。 「セクシーか、かわいいタイプか……どっちが良いんだろう?」 どうやら回復時に召還する天使に着させる衣装を考えてたご様子。 ウォームアップもそこそこにして、『覇界プリンス』設楽悠里(BNE001610)はベンチに座った。 「じゃあみんな、前半は任せた!」 彼はルールブックを探し、ベンチにあった『イナズマ少林寺!ジャイアントキャプテンのキリングサッカー』を読み始める。 やっぱりロス(ry) ●前半開始 スターティングメンバーは以下の通り。 ポジション:リベリスターズ選手(エリューションズ選手) ゴールキーパー:快(1番) ディフェンダー:三千(2番、3番) ミッドフィルダー:源一郎(4番) フォワード:カイ、神威(5番) 影継が気を利かせてエリューションズにゼッケンを配っておいたので、とりあえず相手も識別はできるようにはなっている。 解説を始めた影継に、隣の黒い棒はのぺっとふんぞり返っている。 「さぁ、始まりましたエリューションズ対三高平リベリスターズ! 前半の実況は私、斜堂影継。解説は偉そうな棒人間でお送りします」 「とれびゃーん、とれびゅぃっ、あーん!」 棒人間の声はやたらとご機嫌に甲高い。 解説を見ても観衆の声を聞いても『とれびあーん』以外の単語は発言しないようだった。 「果たしてこの解説に日本語通じるのか?」 「とれびあーんっ、とれびゅぁーんっ! ……シネ」 ツッコミを続けようとした影継は、初めて聞く『とれびあーん』以外の単語――そこだけ低音――に一瞬だけ凍りついた。 キックオフと共にボールを神威に蹴りだすカイ。 「某国での無念を此処で晴らしましょう」 先日観た代表の試合結果が、ちょっとだけ残念だった様だ。 ボールを受け取り、まずは様子見に勢い良くドリブルを始める神威。 「よーしっ!それじゃ最初からガンガンいっくぜー!」 しかしスルスルっと出てきた敵のフォワードとミッドフィルダーが交差し、二人がかりでボールを奪う。 彼等のサッカーの腕は確かなものの様だ。 まずは落ち着いてゆっくりパスを繋いでリベリスタ達の出方を窺っている。 幾つかの攻防を経て、突然ミッドフィルダーが振り向き様にシュートを放った。 しかし直感と感知に長けた三千が素早く反応する。 「何かしかけてくる……そこですっ」 足を伸ばしボールをカットしようとしたが、突然ボールは軌道を変えて大きく上昇する。 そこへ空中を跳んだフォワードが宙返りをし、オーバーヘッドキックを見舞う。 ボールは不思議な回転を描きながら、急降下でゴールを襲ってきた。 快は両手を広げセービングするが、回転の掛かったシュートの威力を止める事ができない。 「馬鹿な、体ごとゴールに押し込まれる?!」 そのまま吹き飛ばされ、ボールはゴールへ――。 ●0対1 今度は攻撃一辺倒ではなく、細かくパスを繋ぐリベリスターズ。 「どうやらリベリスターズはテンポの良いパス回しで繋ぐ作戦のようです」 影継の実況はなかなかのものだったようで、黒い棒達は実況に反応して歓声を挙げたりブーイングを入れている。 隣の偉そうな解説者――棒人間も観衆と一緒になって「とーれーびぃ! あぁーんっ! シネシネ!」と憤慨しているようだ。 明らかに、日本語を理解出来ている。むしろ、駆使している。 するとボールを受け取った三千が、ふわりと浮き上がった。 「う、ウィングフォーメーション……!」 仲間に翼の加護を渡し、彼等に三次元的な動きを与える。 「そして、ペンタゴンジハード……!」 続けて五角形に変化した光の加護が、チームの意志力を高めていく。 そのまま三千はパスをカイへ。 カイが受け取りドリブルしようとすると、敵のディフェンダーが止めに入る。 しかし彼は揺らめく影を身に纏い、軽やかなステップを踏んで敵を翻弄していった。 「おおーっとこれはっ!」 思わず影継の実況にも力が入り、光は驚いて反応する。 「し、知っているのか影堂!」 「シャドウサーヴァントにダンシングリッパーを掛け合わせた、絶妙なドリブル攻撃!!」 そのままカイは山なりにゴール前へと緩いトスを上げる。 「いきます!」 敵のキーパーがディフェンダー達を制して、ボールをキャッチしようと前に出た。 だがボールには驚異的な回転が付き、着地した瞬間に爆発的な加速で翔る。 それに素早く反応してゴール前に上がっていた源一郎。 「好機!」 瞬時の移動で飛び出したキーパーの背後を奪い、そのままゴールへと押し込む。 「……之即ち、ナイアガラシュート也」 ●1対1 そこからは一進一退の繰り返し。 互いにパスカットし合い、決定的なチャンスはなくシュートまで持ち込めない時間が続く。 途中、光が神威と交代してピッチへ。 一度シュートチャンスがリベリスターズに訪れるが、敵の好ブロックに阻まれる。 前半終了間際、エリューションズに押し込まれそうになったが、快が身体を張って吹き飛ばされながらもシュートを防いだ。 サッカー初心者が多くても、彼等の持ち前の運動能力でこれまでは同点で対応できている。 ここで前半が終了。 スポーツドリンクを手にした悠里が選手達を労う。 「はい、お疲れ様ー!」 隣ではカイが用意してたバナナを配り、選手達は手早く水分と栄養を補給した。 ベンチで休んでいたメンバーを、三千は天使を召還して体力を回復する。 もちろんチアガール姿で。 「あ、快さんはナースがお好きみたいなので、ナース姿の天使で」 一同はコスプレ天使達によって体力を回復。 後半開始前、チームで円陣を組んだ。 光が中心となって声をかける。 「いくぞー、アークインパルス! オー! オー!」 どう考えてもユニフォームは三高平リベリスターズと明記されている。 一体いつからアークインパルスになったのだろうか。 ●後半開始 スターティングメンバーは以下の通り。 ポジション:リベリスターズ選手(エリューションズ選手) ゴールキーパー:快(1番) ディフェンダー:光、影継(2番) ミッドフィルダー:悠里(3番) フォワード:カイ(4番、5番) 後半開始早々。敵は前線に2人置くフォーメーションに切り替え、キャプテンの光自身がディフェンダーへと回った。 敵の4番と5番は、マッチ棒の身体で器用に細かいパスを繋ぎ、立て続けにシュートを放つ。 しかし前半を通して感覚を掴んできた快は、落ち着きを見せ始めていた。 「打たせろ! 一対一なら俺が止める!」 光と影継に的確に守備位置の指示を出しながら、シュートを撃とうとする敵へ目掛け十字の光を向ける。 すると敵は怒りに任せ、快の真正面に目掛けてボールを打ち込む。 ガッチリとセービングした快から、ボールを受け取った光に4番と5番が殺到してきた。 しかし光は残像を残すスピードで動きを惑わせ、前へと素早いパスを送る。 「僕に集中しすぎたのは失敗だ!」 そこにオーバーラップした影継が飛翔し、ジャンピングボレーを叩き込んだ。 「フライング雷獣シュート!」 雷を纏ったボールが敵のキーパーを襲い、辛くもパンチングで防いだがその場で感電してしまう。 こぼれ球に反応したカイだが、敵の2番がマークに入っていたのを確認し、後方へとボールを折り返す。 そこへ飛び込んだ悠里は、ボールの手前で炎と氷の力を右足に送り込み、疾風する様な蹴撃で加速を付けた。 「これが僕の必殺シュート! 極大消滅シュートだ!!」 放ったシュートは感電したキーパーを正面から打ち砕き、ゴールネットを突き破って後ろの黒い棒達をも次々と吹き飛ばしていく。 「僕達は勝つんだー!」 力強く宣言する悠里。ついにリベリスターズが勝ち越しに成功する。 ●2対1 試合に慣れてきた両チームの動きも良くなり、チャンスを作っても好セーブとカットに阻まれ続けていた。 時間も進んで神威がカイと交代し、ついに試合も終盤に差し掛かる。 観客である黒い棒達のブーイングは一層、耳障りな音がより一層高まった。 エリューションズは形振り構わず、5人全員が攻撃に転じる。 ゴール前を空け、ドリブルとパスワークで必死の突破を図ってきたのだ。 応援に回る三千、カイ、源一郎の拳にも力が入る。 相手フォワードへと悠里が魔氷のブロックを張り、後方から影継がタックルを仕掛けた。 「任せろっ!」 突然相手の姿を2人は見失ってしまう。驚く悠里。 「な、なにぃ!」 飛翔したフォワードは、空中で回転するとヘディングでミッドフィルダーへラストパスを送った。 そこへ駆け込んでくるミッドフィルダー、対するは光。 「幻影タックル!!」 ボールが突然消失したように消え、動揺する敵を尻目に光はそのまま大きくクリアーする。 ただ1人敵の前線に残っていた神威と、慌ててその前まで走り込んだキーパー。 「まだまだ甘いっ!!」 神威はトラップせずに闘気を爆発させ、ダイレクトで全員の気を脚に込めてシュートを撃ち込む。 キーパーの伸ばした手よりも速く、ボールは拉げた形ですり抜けてゴールへと突き刺さる――。 そこでホイッスルの音が鳴り響いた。 3対1、三高平リベリスターズの勝利である。 その瞬間。ピタッと歓声も、音も止み、一斉にエリューションが掻き消えてしまった。 神威は笑顔で消えていくエリューションを見送る。 「ふぅ、お疲れ様! 楽しかったぜ」 ●打ち上げ 三高平市――焼肉屋『もーもーぱらだいす』。 試合を終え、集まった一同へキャプテンの光がグラスを握った。 「さぁ、打ち上げだ! アークインパルスの勝利を祝って!」 首に巻かれたタオルにもリベリスターズと書いてあるのを完全に無視して、光が高らかに宣言する。 最早、彼等にチーム名はどうでもいいのだろう。 影継が立ち上がって音頭を取る。 「いい試合だったぜ! 乾杯!」 「「「かんぱーい!!」」」 ジュースやお酒を片手に、焼肉を頬張るリベリスタ達。 激しい運動の後、試合の緊張が解けた全員の疲労は心地よいものとなっていた。 リベリスターズの宴会の向こう側で、何やら変な会話が聞こえる。 宴会の仕切りで姿は見えず、声も小さなものだ。 何故か垂れ幕が張られており、『祝勝会』と書かれた部分を『残念会』と直されている。 やはり、日本語が理解できている。というか読み書きまで出来たらしい。 「とれびぃ…あぁん(だからさー、フットサルじゃダメなんだって)」 「とれびゅーあーん(でもさー、相手強すぎ。キーパーどころか後ろの客死んでるし)」 「とれびぁあん……(ちくしょー、何か互角でいけるスポーツねぇかなぁ……)」 「シネシネシネシネシネ……」 ……聞かなかったことにしよう。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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