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【封印されし炎帝竜】Armside

●破られた静寂
 市街地から離れた、山間部の開けた草地。
 何もないその場所に突然大きな音が響き渡った。
 何かが破裂するような、引き裂かれるような……表現し難い轟音。
 その後に続いたのは不気味な地鳴りだった。
 黒い霧のような、その場所だけ夜が訪れでもしたかのような闇が現れ……そしてその中から……巨大な生物の頭部が、姿を現わす。
 赤い鱗に覆われた蜥蜴のようにも見える生き物の大きさは桁違いだった。
 鱗は一枚一枚が大きく厚い。鋭い牙は、一本で人の背ほどの長さがあった。
 牙の林に覆われたその口からは……ときおり熱気と共に炎が噴き出し、周囲を焦がす。
 少し遅れて別の場所にも闇が拡がり……続くように鉤爪の生えた巨大な腕が姿を現わした。
 鉤爪が大地に刺さり、そのまま地面を抉り取る。
 もがくように腕を振るい、頭部を暴れさせたその竜は、天を仰ぐと怒り狂ったように咆哮をあげた。

●封印されし炎帝竜
「それでは詳しい説明を始めさせて頂きます」
 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はブリーフィングルームに集まったリベリスタ達に 緊張したようすで一礼すると、ディスプレイにアザーバイトの画像を表示させた。
 赤い鱗を持った蜥蜴に似た存在……例えて言うなら、西洋の物語などに出てくるドラゴンのような、とでも言えば良いだろうか?
 もっとも表示されているのは体の一部分だけである。
 角と鋭い牙を持った頭部と、鉤爪の生えた巨大な片腕。
 その根元は、どちらも黒い靄のような闇のような……何かの中へと消えている。
「『フレイム・タイラント』と呼ばれていたこのアザーバイトは、以前この世界に襲来し何らかの手段で……放逐というか封印というか、とにかく追い出された存在なのだそうです」
 倒すことができず、それでも何とかこの世界から追い出そうとした結果、この世界ではないどこかへと追放し力を封じて閉じ込めることに成功したらしい。
「それがどのような手段で行われたのか……詳しいことは分かりません。資料等も消失してしまったみたいで」
 そう言ってからマルガレーテは、ですがその追放は完全ではないみたいですと説明した。
「この世界から追い出す時に使用した穴が完全には消滅しておらず、アザーバイトが力を取り戻すとホールが開き、拡大していってしまうらしいんです」
 ホールが開き切るとアザーバイトは力を完全に取り戻し、この世界へと戻ってきてしまう。
「現在はホールがある程度まで開き、アザーバイトの体の一部がこの世界に侵入してきている状態です」
 皆さんにはこのアザーバイトの体の一部を攻撃し、撃退して頂きたいんです。
 少女がそう言って端末を操作すると、画面にその体の一部が拡大して表示され、様々なデータが表れた。

「まず、本体……頭部と腕部に共通するものですが、頑丈な鱗に覆われているため高い防御力を持ちます」
 物理防御力の方がやや高め。神秘攻撃に対しても充分な防御力を持っている。
 また、鱗そのものが攻撃を弾く力を持っているらしく回避能力も巨体の割に高い。
「速度そのものは低いみたいです。力を封じられている影響もあるのでしょうが」
 ただ、麻痺無効と呪い無効に似た力を持っているようなので、先手を取って動きを封じるというのは難しそうですとマルガレーテは口にした。
 それ以外にも、冷気無効と火炎無効に似た能力もあるらしい。
「ですが、氷結や凍結はしませんが冷気のダメージそのものには弱いようです」
 加えて、炎の方に関しても強力ものであるならば炎によるダメージを与えられる可能性はあると彼女は説明した。
「あと、耐久力や特殊な力を使用するためのエネルギーに関しては、分かれてはいても同じ個体ですし共有しています」
 両方の部位に与えたダメージの合計が一定以上になれば、敵は行動できなくなって封印される。
「それまでは、ダブルアクションを強化したような能力で2回攻撃を行ってきます」
 通常は頭部と腕部で1回ずつだが一方のチームが撤退などを行えば、もう一方の部位で2回攻撃を行ってくると思いますと説明してから、マルガレーテはそれぞれの部位に関しての説明を開始した。

●Armside
「こちらの皆さんにはフレイム・タイラントの片腕と戦って頂く事になります」
 説明と同時に画像が、鱗に覆われ鋭い鉤爪を備えた腕部へと変わる。
「頭部から離れた少し離れた場所になりますが、何らかの手段で敵を確認できるようです」
 攻撃や回避に関しては特に変化等はないようである。
「攻撃手段は鉤爪による薙ぎ払いと、体内に蓄えたエネルギーを体表から吹き出す火炎攻撃です」
 鉤爪による攻撃は、近接距離を薙ぎ払う物理攻撃。火炎の方は、遠距離までの全ての敵を巻きこむ神秘攻撃。
「あと、もうひとつ……体内の熱を鱗に移し炎を纏わせた状態で周囲に撒き散らすという攻撃を行うようです」
 こちらは威力もさることながら、対象を燃やし、鱗で切り裂いて出血させる効果も持つようだ。
 もっとも、威力が高い代わりに弱点もある。
「攻撃を行っても短時間で新たな鱗が生えてきますが、その間は防御力と回避力が著しく低下するようです」
 加えて、完全に鱗が再生するまでは炎鱗による嵐を使用することはできなくなるらしい。
「……危険な相手ではありますが、皆さんでしたらきっと大丈夫だと思います」
 どうか、御気をつけて。
 マルガレーテは更に緊張した表情で説明を終え一礼すると、リベリスタたちを送りだした。





■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:メロス  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年12月15日(木)23:00
オープニングを読んで頂きありがとうございます。
メロスと申します。
今回はドラゴンに似たアザーバイトと戦うというシナリオになります。
(便宜上、ドラゴンや竜と呼称させて頂きます)
実際に戦うのは、巨大なドラゴンの一部となります。
このシナリオは『【封印されし炎帝竜】Headside』と一部を共有したリンクシナリオとなっております。
ご注意ください。
此方のシナリオでは腕部との戦闘となります。


■封印されし炎帝竜(フレイム・タイラント)
高い耐久力と防御力を持ちます。
防御力は物理防御の方が高めです。
また、鱗が攻撃を弾くため回避力もそれなりにあります。
反面、速度の方はやや低めです。
麻痺無効、呪い無効に似た能力を持っています。
氷結無効に似た能力も持っており体が凍りついたりはしませんが、冷気によるダメージそのものには弱いようです。
(防御力を引いた後のダメージが増加します)
火炎無効に似た能力を持ちますが、強力な炎は効果があるようです。
(威力判定で200%の場合のみ効果あり。ダメージが通らない場合は無効)

ダブルアクションを強化したような能力を持ち、2回の攻撃を行います。
通常は頭部で1回、腕部で1回の攻撃を行います。
一方のチームが全滅もしくは撤退した場合、もう一方で2回攻撃を行うようになります。
頭部と腕部を合わせて一定のダメージを与えると、力を失い封印されます。
(闇の奥へと押し込まれ、ホールが閉じられます)


■腕部
攻撃方法は以下の3つになります。

・鉤爪による薙ぎ払い(物理・近・範囲)命中:中  威力:高
・火炎噴射(神秘・遠・全/EP消費)命中:高  威力:中
・炎鱗の嵐(物理・遠・全)命中:高  威力:高
(BS火炎、出血。使用すると防御と回避が0になる。1ターン毎に回復し5ターンで元通りに)



両チームで与えたダメージの合計が一定の値を上回った時点でドラゴンは力を失い封印されます。
(依頼成功となります)

それでは、興味を持って頂けましたら宜しくお願いします。





参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
源兵島 こじり(BNE000630)
デュランダル
神狩・陣兵衛(BNE002153)
デュランダル
蜂須賀 冴(BNE002536)
覇界闘士
焔 優希(BNE002561)
デュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
ソードミラージュ
ユーフォリア・エアリテーゼ(BNE002672)
クロスイージス
ミミ・レリエン(BNE002800)
クロスイージス
神谷 要(BNE002861)

●フレイム・タイラント
「わお……」
 でかすぎでしょう。
『毒絶彼女』源兵島 こじり(BNE000630)は素直な感想をこぼした。
 見通せぬような闇の中から、それは唐突に現れた。
 鋭い鉤爪を生やし、鱗に覆われた一本の腕。
 指どころか爪ですら、人の背丈を上回るほど大きいそれが、何かを求めるように伸ばされ、空を裂き、地を抉る。
「とんでもないのが出てきましたね……」
『不屈』神谷 要(BNE002861)も腕だけで見上げるほどの巨大な存在に視線を向けつつ言葉少なく呟く。
「おっきなおっきなドラゴンさんですね~」
 対してのんびりとした口調のユーフォリア・エアリテーゼ(BNE002672)だったが、彼女もその存在、アザーバイトの危険さは理解していた。
「全身出れなくても16人も撃退に必要なんて~あまりこちらの世界に来て欲しいと思いませんよ~」
 その言葉に『煉獄夜叉』神狩・陣兵衛(BNE002153)も頷いた。
「封印されし竜を退治するとは、まるで物語の世界の話じゃのう」
「神秘の世界に身をおくものとしてありえない話しとは思いませんが、流石に想像しませんでした」
 陣兵衛に続くように『斬人斬魔』蜂須賀 冴(BNE002536)も口にする。
 いっぽう、『手足が一緒に前に出る』ミミ・レリエン(BNE002800)も真面目な顔でそれを見上げているたが……思う処は少々異なっていた。
(……封印せざるを得なかったほどの、ドラゴン……食べたらどんな味がするのでしょうか……)
「興味は有りますが……マクスウェルさんの話を聞く限り、勝てる相手ではなさそうですね……」
 すこし残念さが滲むように感じられる表情でそう口にする彼女とは対象的に、『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639)のテンションは高かった。
「どらごん! どらごん!! ドラゴンの爪がほしい!!!」
 なんかかっこいいし!! お守りにしたいじゃん、強くなれそう!!
「あ、でも大きいかな?」
 そう呟いてその腕の先端……指の先に生えた鋭い鉤爪をじーっと見てから、ミミと同じようにすこしの残念さを顔へと滲ませる。
(と言うか、竜って、ドラゴンって)
 何時から私たちの世界は、ファンタジーに鞍替えしたのって感じ?
 こじりはそんな仕草をしつつ、巨大な腕を確認するように眺め、見上げた。
「でも、ま、燃えないわけないのだけれど」
 竜殺しとか、熱いじゃない?
「取り敢えず、お肉でも焼いておく?」
 どこか冗談めかした口調で呟く。
「敵は強大なれど相手にとって不足無し」
 陣兵衛が口にする。
(竜と戦える機会なぞ滅多に無い事)
「思う存分剣を振るって返り討ちにしてくれるのじゃ」
 この場に集まった者たちは、その強大さを知れど怯えを持たぬ者のみである。
「封印された状態でこの強さなら封印が解ければ恐ろしい災厄になります」
 ここで討ち果たしますと、冴も断言する。
「わたしがかっこよく封印してあげるから!」
(ドラゴン狩るなんて勇者みたい~! がんばるっ)
「ドラゴンには悪いけど、この世界を守るために、ちょっと封印されてね!」
 相変わらずのテンションで壱也も宣言した。
「いずれにせよ押し返すのみなのですが」
 要は静かに、短く口にする。
「敵は殲滅する。それだけだ」
 憎しみにも似た闘志を静かに燃やしながら、『紅蓮の意思』焔 優希(BNE002561)は炎の暴君と名付けられたアザーバイトを見上げた。
 そして、戦いは始まった。

●破壊vs破壊
「固い相手には相応の戦い方をするだけですよ~」
 適度に距離を取った状態でユーフォリアは敵の動きに意識を集中する。
 一方、優希は一気に距離を詰めると巨大な腕へと組みついた。
 全身に力を篭め……大きさを、重さを、物ともせず、巨体を地面へと叩き付ける。
(今回は……勝つことよりも、負けないことが重要……でしょうか……)
 攻撃準備を、そして直ちに攻撃に移る仲間たちを確認しながら、ミミはこじりに駆け寄ると世界から借り受けた癒しの力を注ぎ込んだ。
「ふれいむたいらんとー!! 爪、頂いていくよっ! ごりっとね!」
 壱也は自身のリミットを解除する。
 その技はエリューション的な力を全く必要としない。
 自身の生命力を戦闘力に換えて敵を打ち砕くための技(スキル)だ。
 冴と陣兵衛も敵の鉤爪の届かぬ場所に位置を取ると、闘気を爆発させ全身へと漲らせた。
 要もクロスジハードによって味方全員に十字の加護を与え、意志の力を向上させる。
 そして……巨大な腕がリベリスタたちの力を窺うように薙ぎ払われた。
 攻撃を受けた優希は無理な抵抗はせず直撃を受けぬようにわざと吹き飛んで受身を取り、衝撃を軽減する。
 それを見ながらこじりも、鉤爪の届かぬ範囲で闘気を爆発させた。
 優希が竜を牽制する中、デュランダルたちが戦闘態勢を整えクロスイージス達は仲間の守りを固めていく。
 ミミは陣兵衛にも癒しの力を付与し、要は全身のエネルギーを防御に特化させることで仲間を庇うための完全な防御態勢を整える。
 ユーフォリアはひたすら、敵の動きに観察し機を窺い続ける。自身の攻撃力を考えれば、充分に狙いを定めない限り効果は望めない。
 優希と要の内で稼働する無限機関が、消耗したエネルギーを生産する。
 優希はふたたび距離を詰めるとドラゴンの腕へと組み付き、巨体を地面に叩き付けた。
 それに続くように、デュランダル達が動いた。
「かわいいタイラント、だけどそっちに押し込んであげる!」
 壱也が距離を詰めエネルギーを籠めたバスタードソードを一閃する。
「蜂須賀示現流、蜂須賀 冴。参ります!」
 続くように冴が踏み出し、鞘から鬼丸を抜き放つ。
 オーラを纏った刀身が金属のような鱗とぶつかり合う。弾かれるような衝撃を気にせず、冴はそのまま連続で斬撃を繰り出した。
 陣兵衛も羅生丸にオーラを奔らせながら前へ出る。
 炎の模様が描かれた無骨な斬馬刀が空気を裂くような音と共に振るわれ、鱗に覆われたドラゴンの体を傷つける。
 対して炎の暴君は体から炎を噴出させた。
 オレンジ色の炎がアザーバイトの体表を包むように生みだされた後、爆発するように拡散しリベリスタたちに襲いかかる。
 要の作りだした加護によって威力は減退したものの、それは決して油断できないだけの攻撃力を持っていた。
 もっとも、戦いは始まったばかりであり直ちに危険という状況ではない。
「さあ、狩るわよ」
 気にせずこじりは前進すると、鱗に触れんばかりの距離で流鏑馬を構えた。
 発射されたオーラを纏った砲弾は、その力を失う前に次々に目標を直撃し、鱗に覆われた体表を抉る。
 そして優希が、炎による負傷を物ともせず再び巨体へと組みついた。
 フレイムタイラントは鉤爪での薙ぎ払いと火炎の噴射によってリベリスタたちを攻撃し続ける。
「片腕だけでもこれ程の力とは……面白い。ならばその腕、我が刃で叩き斬ってくれようぞ」
 陣兵衛は鱗の隙間を縫うような斬撃からさらに羅生丸を振るい連続で攻撃をしかけていく。
 ミミは癒しの力をデュランダルの4人を優先して付与していき、要も4人の様子を見て負傷した者を庇うように位置取りを行いダメージを軽減させていく。
 ダメージは少しずつ蓄積していくものの、決して大きなものではなかった。
 もっとも、敵はまだ最大の攻撃を行っていなかった。
 それを知っているからこそ、一行は攻撃しつつも敵の様々な兆候に注意を払っていたのである。
 そして……その時がついに訪れた。

●炎鱗の嵐(スケイル・ストーム)
 ドラゴンの体表に現れた炎が噴出されることなく鱗に吸い込まれる。
 鱗たちが一斉に、一気に、逆立つように動き始めた。
 気づいたのは皆、ほぼ同時だった。
 声をかけ合い、4人が動く。
 ユーフォリアが、優希が、ミミが、要が。こじりを、陣兵衛を、冴を、壱也を。
 守るように立ち塞がった直後、炎を纏った鱗たちがドラゴンの身体から放たれた。
 放たれると同時に力を失ったかのように燃え始めた無数の鱗は、それでも鋭さを失うことなく、灼熱の炎を纏ったままリベリスタたちに襲いかかる。
 鋭い無数の斬撃が4人の身体を切り裂き、炎は鱗からリベリスタたちへと燃え移って彼ら彼女らの身を焼き、傷つける。
 鱗の嵐と呼ばれるに相応しいその攻撃は、炎を纏った鱗たちが流れ星のように燃え尽きていくことでようやく終わりを告げた。
 攻撃が終わった時、デュランダルたちを庇った4人は大きな傷を負っていた。
 斬撃による血は止まらず、身を焼く炎は消える気配がない。
 それでも、要は万全の防御態勢で負傷を最小限に収めていた。ユーフォリアも酷い傷は負ったもののまだ危険な状態ではなかった。
 だが、優希は危険な程に傷ついていた。
 ミミは出血と火炎から回復していたが、耐え切ったわけでない。
(皆さんに……私の事を重要だって言ってくれた方に……)
「ここで倒れて、ご迷惑を掛けるわけにはいきません……から……」
 倒れかねないほどの傷を無理矢理に堪えて打ち消しただけの状態である。
 ドラゴンの攻撃は優希の援護などもあって比較的に軽微な負傷だった彼女を、一撃で戦闘不能に追い込むだけの破壊力を持っていた。
 だが、4人の行動の甲斐あってデュランダルたちの負傷は軽微なものだった。
 それもこれまでの戦闘の蓄積であって、炎鱗の嵐で傷ついた者はひとりもいない。
「生まれたチャンスはしっかり生かしてくださいね~」
 血を流し火傷を負いながらも相変わらずの様子で口にしたユーフォリアに、こじりも変わらず態度で応えた。
「褒めてあげるわ。後は、任せなさい」
 応えるように、4人のデュランダルたちが動く。
「わたしの全てを叩き込んであげる!!」
 限界を超えて軋む体を物ともせず壱也は力を武器に集中させると、竜の巨体を揺るがすような斬撃を放つ。
 冴も鬼丸に纏わせたオーラを雷気へと変換させると、一気に間合いを詰め捨て身の一撃を放った。
「チェストォォォォ!」
 鱗という鎧を失った竜の身を刃は容赦なく切り裂き、雷が激しく打ち据える。
 陣兵衛がエネルギーを斬馬刀に集中させ薙ぐように振るい、こじりも砲弾に籠めたオーラを雷へと変換させ反動を気にせず発射する。
 そして、傷ついた者たちも4人に続くように動いた。
「容赦なく行かせてもらう!」
 優希は酷傷を負った身もそのままに竜へと組み付くと、ふたたび渾身の力で巨体を地面に叩き付ける。
 同じようにユーフォリアも、高速で距離を詰め跳躍した。
「勝負を決めさせて頂きますよ~」
 巨大な腕そのものを足場として連続で跳躍し、多角的な強襲攻撃でアザーバイトの認識を混乱させる。
 途切れることなくデュランダルたちの攻撃が襲いかかる。
 ドラゴンは体表から炎を噴出することで対抗しようとしたが、認識の混乱によって狙いが定まらなかった。
 結果、炎は幾人かを捕えることなく周囲を焦がす。
 要は仲間たちの様子を見て邪気を退ける光を周囲に放ち、傷や炎を打ち消していく。
 ミミは森羅行で自身を回復した後、一回だけ鱗が完全に再生する前にとドラゴンの体に牙を立てた。
(……そ、その……柔らかくなったから、味見……というのも……えと……ほ、ほんの少しはありますが……)
 鱗で覆われていないが、それでも柔らかいという感じではない。
 枯れ木か皮の厚い樹木にでも噛みついてでもいるかのような気分……それでも、確かに力が流れているのは感じる。圧倒的な、力が。
 けれど、それに勝つために。倒すために。
 ミミは力を吸い取ると、傷を少しでも癒すためにと特殊な森羅行を再開した。

●竜鱗を穿つ者
 鱗を放って以降のフレイムタイラントは火炎噴射で全員を薙ぎ払おうとする。
 その間にも炎に包まれた竜の腕の表面では、鱗が再生され始めていた。
 その前に。
 リベリスタたちは総力戦に移る。
 ユーフォリアは機敏な動きで多角的な攻撃を繰り出し続け、優希も竜の態勢を崩すように投げ技を放ち続けた。
 ミミは森羅行で自身を回復しながら機をうかがう。
 少しでも余裕ができれば、他の仲間にも癒しの力を付与することができる。
「ここで退いてしまうと、もっと大変な事になってしまいます……から……」
 最後まで皆と一緒に戦場に立っていたいから。
 一方で、こじり、陣兵衛、冴、壱也、4人のデュランダルたちは破壊をまき散らし、庇う必要はなさそうと判断した要も武器を振るって攻撃に加わった。
 既に全員に余裕はない。
 その中でも特に、優希とユーフォリアの負傷は重かった。
 軽度の負傷より攻撃を優先していた優希は炎鱗の嵐発動後は攻撃に専念していたし、ユーフォリアは機敏な動きで直撃を避けていた為に受けるダメージそのものは大きくはなかったが、元々彼女は彼ほど頑丈ではない。
 それでも攻撃し続けたふたりに向かって5度目になる炎が襲いかかった。
 力を失いかけた体を、近づきかけた地面を拒むように……ふたりは強引に……運命を捻じ曲げるようにして倒れることを拒み、チャクラムを構え、或いはアザーバイトの体へと組み付いていく。
 そして、鱗が完全に再生を終える前に……その時は訪れた。
 火炎噴射を行おうとしたフレイムタイラントは、攻撃を薙ぎ払うような鉤爪による一撃へと変えた。
 リベリスタたちを退けようと炎を体から噴出し続けたように、頭部班たちとの戦いでも竜は蒼炎のブレスを幾度となく噴き出していたのである。
 短時間での度々の力の使用によって、炎の暴君の力は一時的に枯渇したのだ。
 鉤爪による薙ぎ払いは炎の噴射に比べれば破壊力に優れていたが、精度で劣っていた。
 しかも優希によって体勢を崩されている。
 本来の破壊力を発揮できないその攻撃を、ユーフォリアや優希は回避し、他の者たちも直撃を避けることで耐え切った。
 そして、危険な者の前には要が盾となって立ち塞がった。
「お主との戯れもこれで終いじゃ……再び闇の彼方へ還るが良い!」
 陣兵衛が雷気を纏わせた羅生丸を渾身の力を篭めて叩き込む。
「貴方のいた世界じゃないかもしれないけどっ、とんでけえええええ!!!!」
 壱也が渾身の力を篭めて、竜の腕を弾き飛ばす。
 そして、冴とこじりが其々の武器から激しく放電するほどの雷を籠めた武器を構えて。
 総攻撃を受けたフレイムタイラントの腕は……ついに限界を超えた。
 何かを掴もうとするかのように暴れ、もがき……やがて、闇の中へと呑みこまれるようにして消えていく。
 そして竜を内へと押し込めた不思議な闇も……掻き消されるように消滅した。

 痛みで強張る腕を何とか動かしてアクセスファンタズムで頭部班に連絡を取った優希は、そちらでも撃破が完了し敵が消えたことを確認した。
「彼奴もこれで当分は封印から出て来れまい」
 陣兵衛が呟きながら武器を下ろす。
 まるで、何事もなかったかのように辺りは静まり返っていた。
 けれど、確かにここで戦いがあったのだ。
 復活しようとする、この世界に侵入しようとするアザーバイトと、それを阻止しようとしたリベリスタたちの戦いが。
 満身創痍のミミは、首だけをゆっくりと動かして辺りを見回した。
 地面に限らず、周囲には激しい戦闘の痕跡が残っている。
 それも気づかれないように、一般人が不自然に思わないようにとすぐに処理される事だろう。
 戦いの痕跡は消され、人々は気づかない。
 命をかけ、自身を削り、戦い抜いた者たちの存在を。
 けれど、それこそが。
 何も残らぬ平穏こそが。
 リベリスタたちが戦い抜いた……そして、世界を守り抜いた……
 確かな証の、ひとつだった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れさまでした。
激しい戦いの末、アザーバイト撃退。依頼成功という結果になりました。
様々な要因があると思いますが、庇う事で半数を敵の最大の攻撃から守るという作戦が成功に大きく影響したと思います。
庇われた4人の攻撃も勿論ですが、庇った4人の攻撃やオートキュアーによる支援、庇い続けることによる味方のダメージ軽減。
攻撃と援護が自然な感じで噛み合った戦いを全力で描写させて頂きました。

また、頭部班の方も攻撃重視の作戦だったというのも不思議な連携だったと思います。
皆さんの攻撃に対するために火炎噴射を多用したことで、そして頭部班との戦いで蒼炎のブレスを幾度も使用した為に、EPが不足し、決定力を失ったというのも勝因のひとつなのではと感じました。
不思議という表現は曖昧ですが、こちらでも戦場を越えて連携が生まれているような気がして。
すごいな、と感じました。

それでは、失礼します。
御参加ありがとうございました。