●それいけ! 腹パンマン! 都市は交通で回っている。 様々な主要交通機関が巡っており、それを利用して人は町を動かしているのだ。 ここにも一つの交通機関がある。電車である。 線路の上を走り、人を運ぶ。時間通りに動くこの機関によって毎日移動する人は少なくはない。 だからこそである。当然ながら、マナーというものも存在するのだ。 ここに一人の少女がいる。彼女は現在、マナーを絶賛蔑ろ中であった。 「――だからさー」 彼女の手には携帯電話。じゃらじゃらと大量のストラップがつけられたそれは、彼女なりの自己主張。だが、数の多さにどれが個性なのかすらはっきりしない。 「えー、マジでー? ウケルー」 通話場所は電車の中、優先座席付近。様々な事情を持った社会的、身体的弱者に提供されるそのスペース付近では、携帯電話の使用は禁じられている。命を守る電子機器の働きを阻害する可能性があるからだ。 だが彼女はお構いなし。友人か恋人か、定かではないが通話を続ける。自らの快楽の為に。 これには周りの乗客も迷惑顔。自分に関わりがなくとも、モラルが乱されるのを嫌う人は決して少なくはない。 いや、関わりがないわけではない。大声での通話は車内全体の迷惑へと繋がるからだ。 通話は続く。彼女のテンションも上がり、車内の不快感もあがる。 やがて乗客のストレスが限界に達しようとしたその時……それは現れた。 「おい」 「あん? 誰よ――!?」 突如女子高生に野太い声が掛けられた。 迷惑そうにそちらを見た女子高生だったが……一瞬にしてその顔が唖然とした表情に変わる。 そこにいたのは一人の大男だった。 その肉体は筋骨隆々。鍛え上げられた肉体を茶色の全身タイツに包み、その顔には同じく茶の覆面。 電車内の空気が凍りついた。――」 咄嗟に憎まれ口を叩いた女子高生だったが、その言葉は即座に止まる事となった。 「ぐえっ」 突如男が無造作に振るった拳。それが女子高生の腹へとめり込んだのだ。 鍛え上げられた肉体から放たれたその暴力は一撃で女子高生を悶絶させ、地面に倒れ伏させた。 ――そして電車が駅へ止まる。 男は倒れた女子高生を一瞥もすることなく、そのまま悠々と電車を降りて去っていったのだった。 ――こうして社会のモラルは今日も守られた。ありがとう、腹パンマン! ●ブリーフィングルーム 「というわけにはいきませんよねえ」 アークのブリーフィングルーム。テーブルに珍事件の資料を展開し、『黒服』馳辺 四郎(nBNE000206)は苦笑いしていた。 そう、いかに珍事件とはいえこれはただの通り魔ではない。エリューション事件だったのだ。 「これは人の姿をしていますが本質的にはエリューション・フォース。モラルを守らせたいという思い、反社会的行動に対する怒りの具現化した存在なのです」 マジかよ。 しかし出来てしまったものは仕方ない。それが人型であることも仕方ないのだ。 「彼はモラルが乱れ、人々のストレスが高まった時に現れます。そしてモラルを乱す者に正義の鉄拳を食らわせるのですよ。腹に」 何故腹パンなのか。それは神のみぞ知る。 幸いにして現在に到るまで、死者は出ていない。だがその一撃は重く、病院送りになる者もいるのだ。 「というわけで皆さんの仕事は彼をおびき寄せ、退治することです。公共の場でないと彼は現れず、モラルを乱さないと現れない。その点で注意が必要ですね」 そして腹パンされる危険もあるのだ。凄まじい威力のソレはリベリスタであってもまともに食らえば無事では済むまい。 「さあさあ被害者が増えたらまずいです。皆さん腹を括って頑張ってくださいね」 そして四郎は何故そんなに楽しそうなのか。 それは彼のみぞ知ることである。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:都 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年12月08日(木)23:44 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●抜けるような青い空 その日は朝から素晴らしい天気だった。 抜けるような雲ひとつない青い空。小鳥は囀り、風はそよぐ。 アスファルトに固められた町であっても、その心地よさは変わらない。毎日を始めるに相応しい良い気分を与えてくれる、絶好の朝だった。 その気持ちをより与えてくれる場所もある。 例えば都会における公園。そこは子供達の社交場。というわけではない。 大型の公園はもはや町の人々全員にとっての憩いの場だ。 ジョギングをする人達、談笑をする母親達、その間に連れ立って遊ぶ子供達。あらゆる人に癒しを保障してくれる、それが公園だ。 最高の朝、緑溢れる公園。素晴らしい、ビューティフォー。これこそ癒しに相応しい空間。 「きゃっのじょー、きゃっわいいねー!」 ――その空間をぶち壊す、デリカシーに欠ける言葉が響く。 朝も早くからナンパを行う男子がいた。その名も『高校生イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)。思春期真っ只中、十六歳の健全な男子である。 「や、やだー。困りますぅー」 どこか微妙に棒読み気味に答えるのは『フロントオペレイター』マリス・S・キュアローブ(BNE003129)。違和感があるのは確実に照れがある為であろう。 照れは演技を乱すのである。月影先生に怒られますよ。誰かは知りませんが。 そしてそんな二人を影から見守る人一人。 「御厨君、御厨君、御厨君……」 ぶつぶつと呟きながら物陰から様子を伺う『脆弱者』深町・円(BNE000547)。って怖。 そう、彼女は花も恥らうストーカー。愛しの夏栖斗君は今日もナンパの真っ最中。正直許せないわ、あのナンパされてる女。という演技。 ……演技ですよね? 何故そのような茶番が展開されているかを説明せねばなるまい。 彼らは当然伊達や酔狂でこのようなことをしているわけではない。むしろ伊達や酔狂でやるならば、そっちのほうが見てみたい。 彼らはリベリスタとしてれっきとした任務の最中なのである。 迷惑行為を行うと現れるというエリューションがいる。人々の迷惑に対するストレスから生まれた存在のそれは、迷惑行為ある所に現れるというのだ。 そこで彼らが取るのは囮作戦。自ら迷惑行為を繰り広げることにより、おびき寄せようというのだ。その為の演技である。 「僕とデートしない? そのアンニュイな表情がいいね!」 「あの、その……や、やめてくださいよー」 「つれないねー! もうそれって誘ってって言ってるも同然だよね! 嫌よ嫌よも好きのうち、ってね」 「ち、違いますー」 「あの女、御厨君を誘惑して……許さない、許さない、許さない許さない許さない……」 ……演技ですよね? 『僕普段は善人だから。こういうマナーのなって無い行動とか難しい (KM君・16)』 これがこの任務が始まる前のとある少年の証言である。 閑話休題。 彼らだけではない。他の者達もそれぞれの行為を行ってその時を待っていた。 「ヒャッハー、芝生だァー!」 「この芝生はあたしの物だー!」 立ち入り禁止の芝生のエリア。そこで一切の躊躇いなく飛び込みごろごろと転がり始めたのは『悪貨』九段下 八郎(BNE003012)と『白虎ガール』片倉 彩(BNE001528)の二人である。 公園の芝生には抗いがたい魅力がある。 それはどうしようもなくごろごろしたくなる、謎の吸引力だ。 だが、そこに踏み込むことは芝生を荒らすことになる為、基本的に立ち入り出来ない公園が多いのだ。 だからこそ彼らは今、その選択をしたのだ。 「ここはあたしがとったんですー! 出て行けー!」 「なっ!? て、てめぇふざけんじゃねえぞ!?」 なんか仲間割れしてますが。げに恐ろしきは芝生の魅力。 「いやー、すんません。ちょっと撮影で騒がしいかもしれないんで、本当すんません」 一方ビデオカメラを片手に近隣の人々に謝るのは『アルブ・フロアレ』草臥 木蓮(BNE002229) だった。 迷惑行為を行うことで相手をおびき出すまではいい。だが、その後神秘の秘匿の為に撮影という偽装を行うことにしたのだ。その為のカメラである。 今リベリスタ達はアマチュアの映画サークルということになっている。これによって万が一のトラブルを回避しようという試みなのだ。 「というわけでどう? これこれ、限定品。御買い得だぜ!」 だが何故彼女は撮影をしながら路上販売をしているのだろうか。撮影なら撮影で構わないのではないだろうか。作戦ですよね? ……ですよね? 「しかしあれだな、お天道様に顔向けられねぇ外道にだけは堕ちたかねぇと思ってるが……」 桐生 武臣(BNE002824)は一人煙草を咥えて独白している。 「絶対に人様に迷惑かけねぇかっつったら……耳がイテェよな」 そんなことを呟く彼が今、煙草をふかしている空間は立派な禁煙エリアである。 煙草は決められた場所で吸いましょう。それもまた社会のモラルである。 だがやむをえない事情とてある。若干の良心の呵責を感じながらその煙草を路上へと投げた。 その時である。 「なんじゃあワレェ! 誰にメンチ切っとるんじゃ、ゴルァ!?」 いきなりチンピラに絡まれた。 というわけではない。武臣に絡んできたのもまた仲間。『レッツゴー!インヤンマスター』九曜 計都(BNE003026)なのだが……アロハにサングラス。じろじろと人を睨み付ける目線。変化させたドスの聞いた声もあわさって完璧にドチンピラである。 はっきりいってあっちのほうでごろごろ芝生に転がっている八郎よりよっぽどチンピラに見えると言っても過言ではない。 「おう、そこのねえちゃん! 誰に断ってここで商売しとんじゃい!」 「いやー、細かいことはいいだろ? あんたもどうだい、そこらじゃ手に入らない品だぜ?」 だが、正直どいつもこいつも全力すぎである。 日頃の鬱憤でも晴らすつもりなのかと思う勢いであり、皆が皆、それぞれ堂に入ったものであった。素晴らしい朝は台無しである。 が。 「――こねえぞ!?」 八郎がキレた。 それも仕方ないことだろう。何故なら作戦を開始してからすでに三時間が経過している。 だが、目標は未だに現れていないのだ。その理由は…… 「まだやってますわよ、あの人達」 「嫌ねえ」 「でも映画の撮影らしいですわよ?」 ……というわけである。 神秘の秘匿の為の偽装である撮影が、周りの不満を少し抑えることとなっていたのだ。 しかしこれだけ時間をかければ十分過ぎるだろう。いい加減回りの人々のフラストレーションも溜まっているはずだ。 だが、もう一つフラストレーションが溜まらない理由があった。 「いやいや、大丈夫大丈夫だって! 僕と一緒にくれば楽しいって、絶対!」 「えー、でも」 「御厨君御厨君御厨君御厨君御厨君――」 ここである。 夏栖斗はかれこれ三時間、延々とマリスを口説きつつけていたのだ。ストーカーをくっつけたまま。 「おい、あいつまだやってるぞ」 「いい加減脈ないって気づけって」 「ここまでくると哀れを通り越して立派だぜ……頑張れ少年」 その不断の努力は哀れみを超えて今、リスペクトされていた。 遠巻きに見守る男達は夏栖斗のことを応援しだしていたのだ。その為にフラストレーションの溜まりは非常に遅かったのだ。 なにはともあれ、長い時間をかけてその時が訪れる。 モラルが乱れた時に彼はやってくるのだ。 ●助けてー! 腹パンマーン! はーい。 それは酷い流れのナンパの現場に現れた。 口説き続ける夏栖斗と口説かれ続けるマリス。その横に突然現れた者こそが、今回のターゲットだった。 そう、その名は腹パンマン。 モラルの乱れを察知して現れ、正義のパンチを叩き込む。腹に。 そんなぼくらの小粋なヒーローさ! 茶色のタイツは正義の証。二メートルを超える巨体と鍛え上げられた筋肉は全て腹パンのために。 それがエリューション、腹パンマンだった。 「やっときたのかよ! 遅ぇよ!」 怒れる夏栖斗がそこにいた。 三時間にも及ぶ羞恥プレイを食らったのである。怒る気持ちも仕方ないかもしれない。 「今から成敗してやるからな、覚悟し――」 どすっ。 鈍い音が響いた。 無造作に繰り出された腹パンマンの拳。それが夏栖斗の腹にめり込んでいる。 彼は健全な男子高校生である。男子において儀式と言える行為がある。パンチだ。 それは腹パンであったり肩パンであったりするが、彼らの鍛え上げた肉体を誇示するにはそれは最高のパフォーマンスである。 それに慣れ親しんだ少年は、歯を食いしばって耐えようとした。 だが、彼にとって誤算がひとつあった。何故ならば彼の腹は―― 夏栖斗が崩れ落ちた。 彼の腹は先日とある出来事で無事とは言えなかったのだ。古傷を抉るその一撃は、彼にとって想像以上に重かった。 夏栖斗の脳裏に笑顔が浮かぶ。アークの愛され天使様、桃子さんの笑顔が。腹パンかましてくれた時の顔が。夏栖斗、哀れ。 「よくもやりましたね、美人局失敗じゃないですか!」 愛用の連結刃『ハートプラッカー』を即座に取り出し、マリスは渾身の力で腹パンマンへと突き立てた。というかなんですか、その言葉。作戦だったんじゃないんですか? 刃は見事に突き刺さり、捻りを加えた一撃が傷をさらに抉る。 だが、素晴らしい肉体を誇る腹パンマンは動じない。次なる目標を狙っているのだ。 そう、その目標とは。 「この泥棒猫!」 物陰から飛び出してきた円であった。 ストーカーが負の感情を撒き散らして立っていた。それは子供達が泣くには十分すぎる条件だったのだ。 円の毒針もまた、腹パンマンへと見事に刺さり、抉る。 だがそれは、相手の間合いに飛び込んだということであり。 「ひっ……」 目が合った。腹パンマンの目は、ただモラルの敵にパンチを繰り出すと言う意志だけが込められた目であった。その目は当然、笑っていない。 どすっ。 再び鈍い音が響いた。 拳が腹に減り込んだ時、円の脳裏に浮かんだのは鮮烈なイメージだった。 回想などというものではない。それはフラッシュバックといってもいいものであった。 笑ってる。あの女達が笑ってる。 寄宿舎時代に味わった虐めの記憶。 そうだ、あの時もそうだった。あの女達は私に腹パンして笑ってたんだ。 円の中をぐるぐると記憶が駆け巡る。 それは全てにおいて屈辱の記憶。 「うげ、げえぇぇ……」 円は嘔吐した。腹パンの衝撃と、自らを苛む記憶によって。 そして彼女もまた、膝から地面に崩れ落ちた。 「でやがったな、って……うわ、やっぱデケエ……」 「おうおう、待ってたぜ! って、何これ。え? なんでこうなったの? 怖い」 木蓮が、八郎が、騒ぎを聞きつけ駆けつける。 そこにあったのはドロドロの愛憎劇と巨体の全身タイツ。さすがに引く。筆者も引く。 「そしてキメェ!」 木蓮思わず叫ぶ。気持ちはよくわかる。 「はいはいすんませーん! 撮影中なんでご協力お願いするッスー」 「アクションシーンだ! お騒がせするが、巻き込まれないように離れてくれよ!」 計都が、武臣が周りの人々に向けてアピールを始める。その言葉にギャラリーも彼らが言っていた御題目を思い出した。 「ああ、そういや撮影だったなあ」 「しかしここまで長すぎだよな」 「バカ、映画ってのは沢山とってあとでカットして繋ぐんだぜ?」 好き勝手なことを言い出すギャラリー。だがなんとか納得はしてくれたらしい。 「それじゃいくよ!」 彩が拳を握り、腹パンマンへと繰り出す。 「因果応報、腹パンチ返しです!」 炎に包まれたその一撃は腹パンマンの腹を打ち抜く。分厚い鉄板を叩いたような手応えが、腹パンマンの強固さを感じさせた。 「ほらよ、特撮ってやつ。ワイヤーアクションってやつだよ!」 ギャラリーに説明するように叫び、気合で宙を舞う八郎。そのまま手に備わった武装から銃弾が飛び出し、腹パンマンを撃ち据える。 「じゃあ俺も撮影開始といくかね!」 武臣の無造作にして力強い一撃もまた、腹パンマンを捉える。 その姿勢は無骨ながらも見事で、まるでヤクザ映画の一幕のよう。 だがそこは驚くほどの耐久力を誇る腹パンマン。総攻撃を受けようとも簡単に倒れはしない。 それでもリベリスタにとって彼は決して戦いにくい相手ではなかった。 「ワンパターンですよ、お腹にだけ警戒してください!」 マリスの言うとおり、彼の反撃は常に腹を狙ってくる。それがわかっていれば対処はさほど難しくはないのだ。 「モルスァ!」 その中の一幕。うっかり腹パンマンの注意を強く引いてしまい、腹に決まった一撃にどこかの鎧の戦士のような華麗な吹っ飛びを見せる計都がいたりもした。 時たまこのような不幸な事故は起きることはあっても、致命打には至らない。じわじわと囲み、包囲を縮め、追い詰めていった。 やがて腹パンマンの動きに変化は訪れる。 踵を返し、リベリスタ達を完全に無視して立ち去ろうとしはじめたのだ。 腹パンマンの行動理由はモラルの乱れによるフラストレーション。だが、アクション活劇という題目によって戦いは娯楽となり、ギャラリーのフラストレーションが霧散したのだ。 その為、腹パンマンはこれ以上この場にいる理由がなくなってしまったのだ。 「おっと、逃がさねえよ! モラルは投げ捨てるものだッ! うおーっ……ゲボぁッ!」 進路妨害は立派な迷惑行為である。 咄嗟に腹パンマンの退路を絶った八郎は腹パンマンのモラルチェックに引っかかり、見事な腹パンを頂くことになった。 だが、時間を稼ぐには十分。 「迷惑かけてんのをなんとかしたいってのは大いに賛成だけどな――」 「このまま終わるのは悔しい……嫌だ……」 ゆらりと立ち上がった二人。夏栖斗に円。 運命はまさに彼らを祝福した。運命の無駄遣い、それを二人は肯定されたのだ。 全員揃った。最早腹パンマンに逃げ場なし。 「こんなやり方は認められないよな!」 夏栖斗の渾身の一撃が腹パンマンの腹へと減り込む。 「これは私の分! これも私の分! これも、これも、これも!」 自らの拳で通用しないかもしれない腹パンマンへとひたすら打撃を加える円。 それは腹パンマンに対してではなく、もっと違う何か。自分の心の闇を打ち据えるように。 「そろそろ終わらせるよ! ――もう一発!」 彩の拳がもう一撃。 「いい加減黙らせてやるぜ!」 木蓮の弓が腹パンマンを貫き、ぐらりと傾いた。 「腹パンマンさんよ、モラルのねぇヤツは確かに良くねぇ」 ゆらりと立つ武臣が拳を握る。 「だがそのやり方じゃあ皆が笑って暮らしていける世界は生まれねぇ!」 豪腕一閃。 その拳は腹パンマンの顔面を打ち抜き……地面へと叩きつけた。 ぴくりとも動かなくなった腹パンマン。こうして騒ぎは終わりを告げる。 「――アンタ、ヒーロー失格だぜ」 拳についた血を払う。ここに決着、勝負あり。 ●エンドロール 「いやー、ご迷惑おかけしました! 撮影終了ッス、御疲れ様ーッス!」 「大丈夫か?……強くやりすぎたか」 計都が周りのギャラリーに謝って回り、武臣が腹パンマンをアクターであるかのように介抱するふりをして回収する。 こうして一連の騒ぎは撮影としてはじめて終わりになるのだ。 あとは片付けて全て終わり。来た時より美しく。公共の場所を使用する時のマナーである。 今回の腹パンマンはモラルの乱れる現代社会への警告だったのかもしれない。 その脅威はたった今潰えたのだ。 だが、これが最後の腹パンマンとは思えない。 モラル乱れた時、いつかまた第二第三の―― 「もういいです」 すいませんでした。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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