●どろっ。 ひどく くさい くさって いる どろどろ なまあたたかい にくと うみ にくの うみ どろどろ どろどろ どろどろ どろどろ どろどろ どろり。どろり。 「た すけ て」 「とける」 「からだ が」 どろっ。 ●無菌室ではないけれど 「サテ、グーテンモルゲンですぞ皆々様。アークが誇るロボっこ敏腕マスコットのメルクリィでございます」 そう言って事務椅子をくるんと回しリベリスタ達へ向いたのは『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)。相変わらずの凶器顔面を薄笑ませるや、 「という冗談はさて置き」 間髪入れずに。 そして、その背後モニターには郊外にある廃ビルが。 「E・アンデッドの所在地を捕捉致しましたぞ。皆々様にはその討伐に当たって頂きます。 数は一、フェーズは二。その名も『ニクカイ』――」 映し出された。言葉と共に。 ……なんとも。 なんとも不気味な、腐った肉塊。 滑った膿をどろどろと垂れ流し、寄り集まった赤黒い塊達は弱った心臓の様に蠢いている。 そして、そして、ああ。 その肉塊の中には『まだ腐りきっていない形を保った比較的新しい肉塊』が。 助けを求める様に、突き出ていて――ズブリと、肉の中に沈んで。 見えなくなって。 「死肉が寄り集まったエリューション、それがこのニクカイですぞ。 配下エリューションはいませんが……中々に厄介でしてな。 この腐った膿。それとガスを常に垂れ流しておりまして。おそらく戦闘中はずっと皆々様の体力を蝕む事となるでしょうな……」 メルクリィの視線の先にはニクカイと、その居場所のズームアウト画像が。 異様で不気味な光景だ……。先ほどの廃ビルの地下室だろう、小広い部屋の壁中央、寄生するかの如く陣取ったニクカイから垂れ流された膿は膝下ほどにまで床に溜まっている。澱んでいる。 壁や天井中にも滑った腐肉がへばり付いていて、不快感しか得られない。 「床に溜まった膿はヌルヌルしておりまして、何の対策もしていないと高確率でズッコケます。 膿によるダメージも飛ぶとか水上歩行とか壁や天井に面接着などなどで無効化できるますが、ガスまでは防げませんな……。 ガスは呼吸不要で無効化、ガスマスクなどで軽減できるかと。普通の風邪予防なマスクとか口元を布で覆っただけとかは全く効果がないでしょうな、多分。 そうそう、膿やガス以前に……見て大体想像がつくかもしれませんが、凄まじく臭いです。吐きそうなほど臭いですぞ。気が散って行動がウッカリ失敗してしまわぬよう、お気を確かに。 更にここは光源類が無く真っ暗ですぞ。暗視や暗視スコープ、懐中電灯などが頼もしいでしょうな。 どうしようもない場合はどうしようもありませんが、何かしら考えておいた方が戦闘がグッと楽になるかと」 こんな膿のプールに倒れるなんて真っ平御免だ。全ての対策を完璧に取る事は難しいかもしれないが、せめて一つぐらいは何とかしておきたい。 リベリスタ達が頷けば、フォーチュナが説明を続ける。 「まぁ、場所などについては後ほど間取り図をお渡し致しますぞ。 ではニクカイについて説明しておきましょう。 これは壁にへばりついているので移動や回避等は一切行いませんが……その分タフネスですな。 主に腐肉の触手で力任せに攻撃してくるでしょう。絡め捕られた場合、盾にされたり床や天井に何度もガンガンぶつけられたりと悲惨なシチュエーションになるかもしれませんのでお気を付け下さい! それと、迂闊に近寄ったら酸をブシャッとかけられるかも。溶けて痛い上にブレイク効果があるのでこちらも注意ですぞ。 ――説明は以上です。宜しいですか?」 不快なモニター映像に照らされたメルクリィが機械の目玉で一同を見遣った。 それから、ニッコリと笑う。 「皆々様ならきっと大丈夫! しかし油断してはいけませんぞ、絶対に。 頑張って下さいね。お気を付けて!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2011年12月09日(金)23:41 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
■サポート参加者 2人■ | |||||
|
|
●『恐怖の象徴』 ヘノシディオ・R.I.P・キリングイーター(BNE003239)は謳う。 「見よ、悍ましくも美しい潦を。ワイン樽も溢れかえる程に、濃厚な赤色の様な茶色い泉を! これこそを死、死の先にある死、かの黒き太陽が描いた黒死の宴、その世界! 狂乱の宴と在れ! 狂乱の宴と在れ! チーズと蛆色を混ぜ合わせたクリーム色の川、饐えた芳香! 蕩けそうな闇よ、肉よ屍よ、殺意が闇に混じって、武装した悪意と共に宴で舞え! ここは宴、今宵は宴! メインディッシュは蕩ける腐肉! 存分に狂乱の宴と在れ! 」 ●ブーーーンンン。 暗闇から肥えた蝿の羽音が聞こえる。 廃墟の中。生温かい空気、澱んだ酸素、漂ってくる腐敗臭。 服が皮膚に張り付く――ガスマスクの中に響く吐息、不愉快な湿度。 いっそのこと宇宙服でも持っていきたい気分だ、と細・遥香奈(BNE003184)はマスクの中で呟いた。 (汚れ仕事も仕事のうちだけど、流石に今回は気が引けるわ) 思いながら見取り図頼りに懐中電灯で照らす先には配電室――電気が使えれば戦闘がグッと楽になる筈だ。望みは薄いかもしれないが試して損は無い、上手くいけば儲けモノである。 「皆で他人の家の地下室にガスマスクして潜るっていうのは凄い絵面よね……」 配電室へ踏み入りながら発光で辺りを照らす『ソリッドガール』アンナ・クロストン(BNE001816)が用心深く四方を見渡しながら言う。彼女の言う通り10人の仲間は皆ガスマスク、『墓守』アンデッタ・ヴェールダンス(BNE000309)が分けてくれた香水のお陰で臭いは全く気にしなくって良いし――まあ、そもそもこれは仕事、仕方ないか。 「あんまり長居したくない場所だし、さっさと終わらせましょ」 視線の先ではアンデッタと『エア肉食系』レイライン・エレアニック(BNE002137)が配電盤の前に居る。 「駄目か……」 「そうみたいじゃのぅ」 やはり廃墟、電気はとうの昔に止まっているか。発電が出来る者が居れば話が変わってきかたも知れないが、 「無いモノ強請りじゃしな」 「仕方ないね」 レイラインの言葉に、もし電気が使えたら業務用扇風機を使用しようと思っていたアンデッタは肩を竦める。 一方でエリューションの出したガスを外に逃がすって相当マズイんじゃ?と思っていたアンナはある意味ホッとした。事前にアークに確認したところ『人通りもないし大丈夫』と返って来たのだが、取り敢えず不安は一つ無くなった。 「う~ん、臭いのも気持ち悪いのも滑ったりするのも嫌だな。 でも放っておくことなんてできないし、何とかするしかないんだよね」 窓を開けて換気と思っていた『誰かの為に』鈴村・優樹(BNE003245)だったが、目的地は地下室。それでも一応と上階の窓を開けて来たのだが効果は不明だ。 「……今回はまたえげつなそうな奴が相手だな。死肉が集まった相手、か。 慈悲も無く、容赦もなく──速やかに、だったか」 現場ってのはやっぱり面倒だな、と『眠る獅子』イリアス・レオンハルト(BNE003199)は愚痴を零す。『我道邁進』古賀・源一郎(BNE002735)と共に間取り図頼りに換気の行える設備を探していたのだが電気が無ければどうしようもない。 電気が、とイリアスは車のバッテリーを代用できないかと試したが無理そうだ。長い間点検の行われていないそれらが動いてくれる事は無かった。 「然れば、此れ以上の長居は無用」 行わぬ道理無しと試してみたがこれ以上はどうしようもなさそうだ。源一郎の言葉に頷いたリベリスタ達は目的地へと歩き出す。 一歩の毎に違和感、不快感。 床に壁に天井に張り付いている腐肉の様なモノを踏み締める度にクチャリと嫌な音が鼓膜を舐める。 やがて見えるは汚れた扉。 ――さて、覚悟を決めねば。 ●濃密 懐中電灯とアンナの発光で照らされた異様な空間。満ちた膿、滑る肉壁、蠢く異形、ニクカイ、不快な一室。 全力でサポート頑張るよ、と優樹は翼を、『鋼鉄の戦巫女』村上 真琴(BNE002654)は十字の加護を、アンデッタは防壁を皆に与える。 しっかりした準備によって視界・足元・悪臭の不安は無い。が、神秘性のガスまではガスマスクで完全に防げない。その分は回復で何とかするしかない、後衛にて体内魔力を活性化させたアンナは思う。ズクン、ズキン、肺が、咽が、頭が、緩やかに痛い。気持ちが悪い。 「なんでこんなものが生まれたのかわからないが、腐ってしまったものは戻りようがない。悪いが廃棄処分させてもらう」 気味の悪い敵だ。それでも敵ならばどんなものだろうと撃つ。気を引き締め『まめつぶヴァンプ』レン・カークランド(BNE002194)は影の従者を呼び出した。 「我もリベリスタの端くれにして、無頼の一人。挑むと決めたからには背を向ける事能わず」 酷いものと相対する事と成った、と源一郎は思う。 前衛。前に、この様な醜悪な存在に肉薄する者は少ない方が良い――が、中々目にかかれないほどの醜悪ぶりに少々嫌気を感じるのも事実。 それでも奮起し、誇りを胸に見得を切る。 「無頼が一人。"我道邁進"古賀源一郎。――此度も我道を往く」 名乗り上げ、運命を引き寄せ、戦闘準備完了。 それに並ぶレイラインも身体のギアを大きく高め、蠢くニクカイを睨み付ける。優樹の加護のお陰で足場に注意しなくても良くって楽でいい。 しかしその心中は意気揚々といったモノではない。寧ろ不快。うぅー、と眉根を寄せる。 「腐った肉塊が相手かえ……攻撃したらずぶって沈んだりするんじゃろうか」 想像しただけで気持ち悪いわい。それにアンデッタの香水でかなりマシになっているが臭いが酷い……ガスマスクをしてるのに吐いたりしたら大惨事だ。 (常に意識は強く保たねば!) エキゾチックな香水の香りを吸い込み、鋭く輝く猫の爪みたいなものを構えた。 「さあ喰ってやろう、喰うぞ、肉よ。ふしあわせの肉よ」 気は進まないがより長くより長く蕩ける腐肉の宴を味わう為に。もう一人の前衛陣であるヘノシディオも剣を構える。 (グロテスクにも程があるわね) 運をその身に引き寄せた遥香奈はガスマスクの下の無表情に不快を浮かべる。相手は動かないようなのでこちらも近付かない。近付きたくない。一秒でも早く仕留めてこんな腐りきった所から立ち去りたい。 帰ったら汚れを洗い流そう。悪臭を洗い落とそう。変なモノが染み付いてしまったらそれこそ目も当てられない。 誰もが不快なそんな中、しかしアンデッタは無邪気な笑顔でニッコリと。大丈夫だと陽気に笑う。 死者の安らかな眠りを妨げぬ為、墓守もまた死人であるべき。そんな一族の伝えを信じ、ミイラが如く全身に包帯を巻いた墓守少女は手を広げる。我らが愛しい死人の為に。 正しい埋葬を受けなかった者の末路かな。なんて思う。その手には猿の手、その指には符術の黒い鳥。徐々に殺気を膨らませるニクカイ。超越した聴覚に届くのは足場、膿の中を這いずる音、膿を割り高く、振り下ろされる触手―― 「大丈夫、僕がちゃんと葬ってあげるから」 ――往け。飛び立つ鴉が触手を弾く。腐肉は守護結界を掠めて墓守の真横に叩き付けられる。膿の飛沫。それでも彼女は臆さない。 戦闘開始。 「触手なんぞに捕まってたまるかえ!」 振り払われた肉の蔦を宙を舞って躱し、それに降り立ち、ハイバランサーを活かして瞬猫は触手上を一気に駆ける。ニクカイとの距離を零にする。その姿がブレたのは――幻影、翻弄、幻惑の早技は異形の弱点を容赦なく突いた。 レンは道化のカードを投げ付け、体内魔力を活性化させたイリアスは気を研ぎ澄ませ詠唱してゆく。 浮かび上がる魔曲の陣。構築される四つの歌。 「──遠慮なく、受け取るが良い! 魔力よ、我が前に立ちふさがるあらゆる敵を撃ち滅ぼせ!」 放つ魔光、うねる肉蔦は痛みにのた打ち回るかの様に前衛陣を薙ぎ払う。直撃した手痛い一撃にヘノシディオは運命を焼いて堪え、ニクカイのエネルギーを啜る――不味い。終いはクソだ。 もし銃器の火が充満したガスに燃え移ったら、と遥香奈は懸念していたが杞憂だったようだ。体内を蝕むガスに汗を浮かべつつ、膿と腐汁を撒き散らして襲い掛かってくる肉蔦に照準を合わせる。ひたすら攻撃あるのみ。 身体が痛い。内臓が痛い。気持ちが悪い。ガスの所為で咽から血が出ているのか、思わず咳き込めば口唇に血が伝った。鉄の味。 呼吸は荒く、掠れ、また咳き込む。汗に粘つく身体に掛かる膿、腐汁、己の血。 気を強く持たねば。薙ぎ払われた触手――回避は直撃さえしなければ良いと割り切り、大仰に動かず致命傷のみを弾く様にと源一郎は構えた剛腕で一撃を凌いだ。が、全身に響く衝撃に呻き声が漏れる。見据えるのはレイラインが突いたニクカイの傷口、膿と血を垂らすそこへ、弱点へ、超スピードで距離を詰めるや抉る様に掻ッ切った。 悲鳴。耳障りな、一体何処から出した音か。 悲鳴。それを表すかの様に噴き出す酸、腐った酸、強烈な凶撃に身を焦がした前衛陣が飛び退く。あるいは力尽きる。 「アンナさん、歌を!」 「任せて――そっちも宜しく!」 声を掛け合い真琴はブレイクフィアーを、アンナは天使の歌を。優樹は翼の加護を再び授ける。 奇跡の歌が鳴り響くその間にもイリアスは魔曲で、遥香奈はバウンティショットで、レンはライアークラウンでニクカイを牽制し、立て直しの時間を稼ぐ。 「ニク塗れなんぞになってたまるもんかえ!」 酸で焼けたゴシックドレスを翻し、レイラインは一閃に飛んで行く。源一郎も続く。 それを目で追い、アンナは再び癒しの詠唱を紡ぎつつニクカイを注視する。敵が動かない分、今回はある程度動きに余裕がある。何か攻撃の予兆を掴めれば――注視、観察、じっと見据え……うぐ。 (なんか集中して見てたら気持ち悪くなってきた……。が、我慢だ我慢。マスクの中に吐くとかシャレにならない) せり上がる胃液を、ぐっと唾を飲み込み耐える。 「死者の魂を運ぶ鳥よ、あの者の怒りを引き出せ」 墓守が召還した符式の鴉が一直線に飛んで往く。それは触手の合間を縫い、ニクカイに突き刺さった。蠢く異形、蠢く肉蔦が他のリベリスタを無視してアンデッタを締め上げる。 が。 「墓守である僕に、死者の技は通じないよ」 圧迫の所為でゴボリと血を吐きながら彼女は笑う、縛めからスルリと抜け出す。優樹の天使の息に包まれながら、お返しに鴉をもう一度。 「もうちょっとだよ。頑張って」 優樹は皆を応援する。下がっているお陰で攻撃は未だ喰らっていない……が、漂うガスが彼女の体を傷付ける。咳き込む。傷付いた粘膜。鼻血が伝う。目が痛い。それでも仲間の為に詠唱を、清らかな微風を。 戦闘音楽が鳴り響く。或いは神秘の光、魔法陣、銃声、斬撃、殴打。 奇跡の歌、破魔の光、癒しの風、お陰で戦線は健在だが――それでも倒れる者がまた一人。 忌々しい程にタフな敵だ。 遥香奈が倒れる代わりにと銃弾を撃ち込んだ触手を見据え、イリアスは集中を挟み四色の魔光を放った。気味の悪い汁をブチ撒けながら肉蔦が千切れる。バシャーン。膿。それに構わず優樹に与えられた翼をはためかせたのは消耗した精神力を補う為。腕を腐肉に突き刺す。命を啜る。 「はっは……! 確かに、頂いたぞ……! 貴様の力を!」 哄笑。その身体を肉蔦が絡め取った。包み込んだ。あっと言う間に。 グシリ。 明らかに嫌な音。 レンのカード、レイラインの幻技がそれを急いで攻撃し、落とした。 グジュグジュに蕩けた肉と膿の中、 「フン、この程度で倒れてなど……いられんよ……!」 彼は運命を焼いて立ち上がる。頬を拭う。詠唱を再開する。 相手を追い詰めている事は確か。 そして自分達が消耗している事も確か。 壁に叩き付けられ、霞む意識。 ――嗚呼、何と感触の悪いものか。 人ですらない、屍でもない、死した肉の感触。 なればこそ。 「此度は本気で滅しに参る」 フェイトを燃やす。閉じかけた瞼を開く。意識を取り戻した源一郎は拳を握り締めた。 此処で膝をつく訳にはいかない。この着流しはお気に入り、そうそう汚したくはないものだ――等、思いながら猛攻を突っ切り、あるいは掠め、それでも止まらず、自分の道を突っ切り、大きく振り被り、膂力を漲らせ、ニクカイを思い切り殴り付ける。轟拳。 蠢く異形。無頼を叩き潰さんと振り上げた腐肉――をれを一閃に切り裂いたのはレイライン、敗北の運命を己が運命で否定して、焼き変えて、暴れる触手を足場に跳んで、 ニクカイの真上。 「取り込まれてしまった人達、さぞ無念だったじゃろう……」 重力の任せて落下の中、目を閉じる。 助けて。助けて。 もう声は聞こえないけれど。 せめて。 「今、解放してあげるからのう!!」 目を開く。落下、重力、速度、全てを武器に乗せて、全力勝負。 とっとと圧し潰れてしまうがよい――繰り出す超速連撃、音速の刃。 猫の爪がそれを圧倒する。追い詰める。 瀬戸際に立たされ暴れる肉蔦はやたらめったら滅茶苦茶に、破壊。破壊。癒し手達の歌と光を掻ッ切る様に。 非常に危険な状況――それを貫いたのはアンデッタの鴉だった。 「ほら、肉が欲しいんでしょ? なら、僕をあげるよ」 微笑み。怒り。毒。攻撃の矛先が墓守を叩き潰す。 それでも彼女は倒れない。墓守が死人より先に倒れてどうする。ドラマを支配して、踏み留まる。 かくしてそれは十二分な時間となった――仲間達の体勢が立ち直る。 刹那に閃く猛攻の閃光が、爛れた肉を切り裂いた。 ●地上へ 鼓膜を擦る不愉快な悲鳴の後、ニクカイは遂に活動を停止した。 グシュグシュと膿や液体を噴き出しながら萎んで蕩けて逝く。 残ったのは、僅かな肉片と骨の欠片。生存者は残念ながら居ないらしい。 それを見届け、アンデッタは躊躇なく膿の中に降り立った。仲間が驚く中、異形の膿に焼ける足を気にせず、その肉と骨を大事に大事に回収してゆく。 「大丈夫。ちゃんと埋葬してあげるね」 優しく撫でた。 そして、重傷を負った仲間を担いで外に出る。 地上。外灯、街明かりに目を細める――空気とはこんなに美味いものだったろうか。 深呼吸。連絡を付ければ直にアークが迎えに来てくれる事だろう。 さて、とガスマスクを脱ぎ夜風を吸い込んだ源一郎が皆へと向く。 「帰りに一風呂浴びて帰りたい心持だが……皆は如何だ。心身共に洗い流せるが」 誰もが賛成と頷いたのは言うまでもない。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|