● 「なぁなぁ、良い話持ってきたんだけど、乗るか?」 寂れたゲームセンター。その片隅で、少年は愉快げに話を切り出した。 「なんだよ、勿体つけてつまんねー話だったら殴るぞ」 その場には提案者を含め四人の少年が、集っていた。 皆如何にも悪ぶっていると言った様相。その内の一人の気怠げな反応にも、話し手の表情は崩れない。 「シンヤさんの話はしたよな? その人からのお仕事、って奴だ。……俺らを見込んで、らしいぜ?」 少年の笑みが深くなる。その言葉に、周囲の少年達が一気に色めき立った。 「まじで? 乗る乗る!俺は乗るぞ!」 「シンヤさんが……俺も乗るわ」 「俺も。で、内容は?」 口々に賛成を述べる彼らに、不安の色はない。異様なまでの自信を漲らせながら、少年達は話の続きを促す。 「なんか、リベリスタ?だっけかな……まぁ、取り敢えずある物を奪い合うらしいぜ。要するに喧嘩みたいなもん」 細かいことはこれな。そう付け加える言葉と共に、明らかに機種の古い対戦ゲームの上に紙が投げられる。 ──賢者の石争奪 そんな題目。それに大雑把に目を通しても、彼らの自信は揺らがない。 何故なら。 「……今回もこれの出番だな、楽勝楽勝」 その手に握られた、小さな香炉。 彼らの勝利の女神と言っても過言でないそれが、自信の源だった。 自分達の力を疑わない彼らの談笑は、続く。 ──若さ故の過信を、利用されているとも知らず。 ● 「賢者の石については、もう報告を聞いていると思う」 今回はそれに関する依頼。そう告げて、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は常の如く資料を差し出した。 「既に知ってるかもしれないけど、その石が、大量発生してる」 存在すら奇跡であるそれが何故、大量に現れたのかは分からない。近頃の酷く不安定な世界や突如の崩界進行とも関係があるかもしれないがそれは調査中である。 そう付け加えてから、フォーチュナは資料をめくる。 「アークとしてはこれを放って置く訳にはいかない。……千堂とカルナの話によれば、あの塔の魔女と、後宮シンヤが、石を求めてるから」 彼女──『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)が告げた、アシュレイの言葉。 そして、恐山派の千堂から入った、後宮派が動き出したとの報告。 そこから推測するに、アシュレイ達の目的は恐らく大規模儀式によって穴を開ける事であり、賢者の石はその儀式とやらに有用なのであろう。 それを、みすみす見逃す訳にはいかない。 「今回みんなに頼むのは、賢者の石の獲得。……場所も、補足出来てる」 フォーチュナの指が、モニターを操作する。 とある、廃倉庫。映し出された地図と写真を一瞥してから、フォーチュナは再び口を開いた。 「……アークは、この間獲得した石を調査したの。それのお陰で、特定の波長と反応パターンを解析出来た」 それを万華鏡にフィードする事によって、今回の探査は成立している。そう告げ、フォーチュナは話を進める。 「相手は少年4人。全員ジーニアス。構成は、ソードミラージュ2人にマグメイガスとクロスイージスが1人ずつ。個々の能力は大した事ない。……ただ、アーティファクト持ち」 言葉と共に、モニターが切り替わる。4人の少年のデータと並んで、花の意匠が美しい小さな香炉が表示された。 識別名『阿芙蓉』。 かの麻薬の名を冠したそれは、まさに依存性の強い効果を持つ代物の様だった。 「効果を受ける人間は、腕力とか……魔力とか、そういうものが増強され、尚且つ一切の呪いを受け付けなくなる。――代わりに、使用中は酷い興奮状態に陥って……常時、致命の呪いを受けるみたい」 興奮故に痛み等にも鈍くなり、まず回復行為を行わなくなるようだ、ともフォーチュナは告げた。 「……本人達は、副作用に気付いてない。それどころか、強くなった気になって自分を過信してる」 シンヤからの直々の依頼である、と言うことも、少年達の自信に拍車をかけているようだった。 使い続ける事で、心を、身体を蝕んでいく麻薬の様に。 少年達の心は既に、蝕まれている。 驕れるものは久しからず。彼らはこのままではそう遠く無い未来に、身を滅ぼすだろう。 現に今、彼らは何も知らずに、死と隣り合わせの状況に足を踏み入れようとしている。 「先回りは不可能。みんなと少年達がついた後すぐ、石は現れる。……石さえ獲得できれば、後は何だって良い」 少年達の安否は問わない。そう、暗に告げる。 とんとん、華奢な指が資料を揃える、軽い音。 「――賢者の石を多く獲得出来れば、シンヤ達の予定を崩せるだけじゃなく、アークの発展に繋がるかもしれない」 ある意味、これはチャンスだ。どうか気をつけて。そんな一言と共に、フォーチュナの指がモニターの電源を落とした |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:麻子 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年11月27日(日)22:32 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 倉庫の裏手の方で、少年達がやって来る足音が聞こえる。 それを耳にしながら、『影たる力』斜堂・影継(BNE000955)は素早く、入口へと寄った。 「痛い目みないと分からないだろうな」 呟きが漏れる。フィクサードとして片付けるにはあまりに杜撰な彼ら。 恐らくシンヤの駒に過ぎず、未だ更正の機はあるだろう。 そんな考えを巡らせながら、彼は瞑目する。集中を高めると共に、目の前の鉄の扉へと手を伸ばす。 するり、と。そこに壁など、無いかのように。彼の身体が、倉庫内へと滑り込む。 入ったと同時に、振り向いた彼の指先が素早く倉庫の入口を開け放った。 時を同じくして、少年の一人が窓から身体を出す。 視線が、ぶつかった。気付いた少年達が倉庫内に降り立つのとほぼ同時に、影継は駆け出していた。 目指すは、倉庫中央。遅れて駆け出した少年を確認する間も無く、倉庫の屋上辺りが紅く、煌めいたのが目に入った。 直後、落下してくる紅の輝石。何とか倉庫中央に辿り着き、影継と少年が石を奪い合う。 「っ、お前がリベリスタ、って奴か! 邪魔すんじゃねぇよ!」 鋭い怒声が飛ぶ。それを相手にもせず、伸ばした影継の手が何とか、石を掴み取った。 不味い、と少年達の顔が引き攣る。即座に駆け寄って来ていた仲間が、何とか石を奪い返そうと手持ちの武器を影継へ振るう。 ――いや、振るおうとした、と言うのが正しいだろう。 不意に飛び込んで来た紅の髪が、それを阻もうとする様に、動いていた。 軽やかに、踊る様に。足を踏み鳴らし、可憐な花を護る竜の意匠が施されたハルバードを振るう。 鮮血の軌跡を描きながら、『花護竜』ジース・ホワイト(BNE002417)は声を張り上げた。 「努力しないで強くなろうとか、甘えんじゃねーよ!!」 表向きは、挑発。しかし、今までずっと双子の姉を護る為に強さを目指した彼にとって、少年達の所業は思う所があったのだろう。 何処か怒りを孕んだ声を耳にしながらも、少年達は不意に攻撃を仕掛けてきた彼への怒り以外の感情は抱かないようだった。 苛立ちを顕に、クロスイージスの少年が握っていた斧を振るう。 全身の力を全て集中した一撃は、後を追って駆け込んで来た『半人前』飛鳥 零児(BNE003014)が受け止める。 彼らに、説教しようなんて気持ちは無かった。自分はまだまだ未熟で、命のやり取りなんて今でも恐怖を覚えるし、死にたくないと思っている。 けれど。それを全て、必死に乗り越えて、零児は今、此処に立っている。だから。 「借り物の強さの奴らには負ける気がしないな」 ――少なくとも、気持ちと覚悟だけは。そんな想いを胸に秘めながら、全身の力を集中した剣を振るう。 それを受けても、麻薬の様なアーティファクトの効果を受けた少年達は、怯む事は無かった。 ソードミラージュの少年が影継から離れた直後、マグメイガスの少年が呼び寄せた魔炎を炸裂させ、3人を焼き尽くさんとする。 やはり、かの香炉の効果は凄まじいものの様だった。直撃を免れなかった3人が、小さく呻きを漏らす。 未だ、耐えられる範囲。しかし、これを立て続けに喰らうのは、流石に不味いと本能が告げる。 「力に溺れた君達に少々現実を与えにきたよ。釣り合いの取れない力は君達の道行きを惑わすからね」 遅れて駆け込んで来た『闇夜灯火』夜逝 無明(BNE002781)が、少年達の気を引く様に声を張る。 力を求めるのは人の常。そして、力に溺れるのもまた、人の常だ。 少々灸を据えてやろう。本来の目的は確りと頭に置きながら、堂々と背筋を伸ばして彼らを見据える。 彼女の瞳には、立て続く挑発の台詞に、少年達の苛立ちは頂点に達している様に見えた。 「これが御自慢のアーティファクトの威力ってワケか、悪かねぇだろ」 影継が、更に煽る様に言葉を投げ掛ける。 力を得るのに手段を選べるのは強者のみだと言うのは事実だし、寧ろ生贄等を使わないこれは穏当な方だ。 「だが、そういうのを叩き潰すのが俺達の流儀だぜ!」 「は、調子に乗るなよ、リベリスタ! 大口叩くのは勝ってからにしろ!」 挑発に乗り、勢い任せに暴言を吐いて素早く体制を整える。力に溺れてはいるものの、それなりに判断する力はある様に見えた。 もう少し。もう少し頭に血が昇ればきっと、頭が回らなくなる。 そう判断して、ジースは再度挑発の台詞を投げかけた。 「そんなに強さを誇示したいなら、かかってこいよ!!」 ● ――中で、激戦が繰り広げられている頃。 外では残った4人が、少年達の入った窓側に回っていた。 入口と、敵の背後。二方向からの挟撃が、リベリスタ達の目的だった。 「……敵さん、全部置いてっちゃったみたいだね」 『おじさま好きな少女』アリステア・ショーゼット(BNE000313)が、宙に浮かび上がり窓枠を確認する。 そこには、少年達が使ったであろう梯子が確りと固定した侭残されていた。 仲間達と視線を交わし合い、頷く。中からは戦闘の気配が聞こえ始めていた。 闇が満ちる中、朧げに見える風景と熱源を探る力によって、リベリスタ達は梯子を昇り始める。 厄介なアーティファクトだ。梯子を素早く昇りながら、浅倉 貴志(BNE002656)は思う。 幸か不幸か、持主の彼らはその効果に気付いていない。知らぬが仏とは良く言うが、こんなものは決して存在するべきではないだろう。 鋭い瞳が、更に険しさを増す。危なげなく窓から侵入し終えた彼の背を見ながら、『敬虔なる学徒』イーゼリット・イシュター(BNE001996)もまた、思考を巡らせる。 彼らは、自分の強さが何処から来ているかを理解していない。けれど、こんなアーティファクトに蝕まれている以上、無碍に命を奪いたくないとも、彼女は思う。 しかし、相手は決して、手加減が通るような相手では無い。そう決意を新たにし、彼女もまた、倉庫内へと身体を滑り込ませる。 その後に『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)が、そして、アリステアが侵入し、彼らは気付かれる事無く、戦場へと足を踏み入れる事を成功させた。 少年達の猛攻は、休まる気配を見せない。 淀み無く、終わりを感じさせない動きで少年2人がナイフを振るい、もう1人、前に立つ少年は振り上げた斧に聖なる力を込めリベリスタを嬲る。 石を護る影継は戦えず、回復手の居ない今、唯一の回復手段はジースの符のみ。 零児が己が身を気にせず雷撃を纏った一撃を振るい、無明も少年に劣らぬ力で大上段より己の武器を振り下ろしても、優位には立てなかった。 確かに、リベリスタの攻撃は少年達へダメージを与えていた。 しかし、足りない。与えた倍以上の威力の攻撃が返ってくるこの状況は、決して芳しいものではなかった。 「ほらほら、口程にもねぇな! このままじゃお前ら死んじゃうんだぜ?」 興奮し切って、此方にしか意識が向いていない少年達の嘲笑が耳に届く。そして始まる、彼らの猛攻。 それでも、彼らは耐え凌ぐ。何故なら。 窓から入ってくる、仲間の姿が確かに確認出来ていたからだ。 極力音を立てない様に、彼らが少年達の背後へと陣取る。少年達は、気付かない。 「ほらかかって来い! 4対4の勝負といこうじゃねぇか!」 影継が、掠れた声を精一杯張り上げる。それに続く様に飛ぶ、仲間達の攻撃と、少年達の怒声。 明らかにがら空きになっていた、うちの一つ。マグメイガスの背へと。 一気に間合いを詰めた貴志の、雪崩の如き一撃が容赦無く、振り下ろされた。 ● 残りの4人が合流した今、流れは完全に、リベリスタに傾いていた。 貴志の攻撃により、マグメイガスが崩れ落ち。素早く状況を認識したアリステアが、清廉な微風を呼び寄せ皆を癒す。 ミュゼーヌが己の相棒、遠き昔の銃士を彷彿させる中折れ式リボルバーを構え、蜂の巣の如き鉛の雨を少年達に見舞った。 外道の片棒を担ぎ、こんな紛い物の力に溺れた彼ら。哀れとしか言い様がない。 「過ぎた力がもたらす結果がどんな物か、その身を以て思い知るが良いわ!」 誇り高き彼女にとって、彼らは解せない者だ。凛とした声音が冷ややかに、彼らに向けられる。 その後ろでは、悪魔の与えた果実の名を冠す禁書を抱えたイーゼリットが、敵だけを巻き込む地点へ魔の業火を炸裂させていた。 先に入っていた4人に、安堵の表情が浮かぶ。 これを待っていた。少年達に気付かれる事無く、挟み撃ちにする。リベリスタ達の立てた作戦は、見事に成功を収めていた。 少々痛い思いをしたが、それに見合うだけの効果はあったようだった。 突然の猛攻に怯んだ少年達の隙を突いて、影継は石を護る事が出来る位置に下がり、零児と無明、そしてジースが少年を囲む様に前に出た。 「調子に乗った奴の目が覚めるような、でかい一撃をお見舞いしてやるとするか」 襲い掛かる多角的な強襲を軽やかにかわし、零児が呟く。 纏うオーラが雷撃へと変わり、その言葉に相応しい一撃が目の前のソードミラージュへと叩き込まれた。 反動が、辛い。けれど、少し無理をしてでも、今は押すべきだと彼は理解していた。 間違いなく、チャンスだ。不意打ちに動揺し、後衛で高い火力を誇るマグメイガスは落ちた。このまま、押し切れるかもしれない。 「殴り合い、最後まで立っている側が強い。十分すぎるほどシンプルだろう?」 挑発混じりの笑みを口元に浮かべ、無明が全力の一撃を振り下ろす。彼女と同じ力を持つ少年は、それをまともに喰らい明らかに動きが鈍り始めていた。 それでも、彼らは気付かない。己の身体が上げる悲鳴に。その強さの、限界に。 「くそっ……最後まで立ってんのは俺達だっつーの……あ、れ……」 不意に、攻撃を仕掛けようとした少年の一人の膝が折れる。 力無く地面に倒れ込み、それでもまだ、気付かない。 彼の身体は既に、致命的とも言える程のダメージを蓄積していた。リベリスタ達の積み重ねは、決して無駄ではなかったのだ。 生温い、鉄の匂いが広がる。上手く動かない身体の下、じわじわと広がる液体を怪訝そうに指先で掬った彼は、それが何か気付いた途端、一気に青ざめた。 「血、血? ……これ、俺の……っうわああああああああ!」 もがき、何とか血を止めようと足掻く。けれど、溢れ出すそれが止まる気配など欠片も見えなかった。 痛くない、辛くない。けれど、不死ではない。それに漸く気付いたのか、未だ膝をつかぬ少年達にも怯えの色が見え始めた。 先に倒れ伏したマグメイガスも、良く見れば酷く血に塗れている。暗闇で気付かなかったが、あの下に広がっているのも、恐らくは。 少年達が、顔を見合わせる。俺達は大丈夫なのか。何とも無いのか。痛くは無いけれど。 そんな声が聞こえてきそうな彼らを見据えながら、アリステアは結い上げた艶やかな銀の髪を揺らし、痛む胸を、そっと押さえる。 敵を倒すのは当然。でも、攻撃されたら痛いだろう。死にたくなんて無いだろう。 「……ごめんね。でも」 私は今いる仲間を護る役目がある。だから、迷ってはいけないのだ。そう、強く心に念じる。 未だ幼く、心優しい彼女のそんな想いを知ってか知らずか、少年達は突如、踵を返し逃げ出そうと試み始めた。 ● 逃げようと決めた人間は、形振りなど構わない。 恐らくこのまま攻め切れば彼らは倒れ、アーティファクトの確保も果たす事が出来る。 それを感じ取っているリベリスタ達は、攻撃の手を緩めなかった。 彼らはこのままでも、いずれ自滅するだろう。貴志はそんな考えを巡らせる。 しかし、この厄介なアーティファクトで犯罪が生まれるのだとすれば、芽は事前に摘み取るべきだろう。 冷静に思考を巡らせながらも、その体捌きは容赦がない。疾風の如き速度で振り抜かれた脚が生み出す鎌鼬が、逃げ出す少年の背を切り裂いた。 アリステアの魔力の矢が。ミュゼーヌの魔力を帯びた貫通弾がその背を追う。 しかしそれでも、少年2人は足を止めなかった。 今出来る全力を搾り出す様に、淀み無い連撃を齎し、跳躍と同時に多角的な攻撃を見舞う。 まさに形振り構わぬその様子に、リベリスタ達は倒されはしないものの、僅かな道を開いてしまった。 零児が、無明が追いすがる。イーゼリットが、再度魔の業火を呼び出し炸裂させる。 「逃げる気?私達に勝つ自信がないってこと?」 冷ややかに放たれた彼女の挑発にも、彼らは乗らなかった。 「ふざけんな! 嫌だ、死にたくない、こんなの聞いてねぇよ……!」 ただ怯え切った表情で、開いた隙間を駆け抜ける。 最後にジースの放った、雷撃纏う一撃すらも、すり抜けて。仮初の強さに驕っていた少年達は、命辛々戦場から逃げ帰った。 「……逃げたか。まぁ、石は獲得したし問題は無いが」 少年達の去っていった後を見詰め、影継が小さく呟く。 その手には確かに、彼の瞳と同じ色をした、目的のものが収められていた。 リベリスタもそれぞれ、複雑な面持ちで顔を見合わせる。置いていかれた、地面に伏す2人は未だ、辛うじて息があるようだった。 「嫌だよう……死にたくないよう……」 怯え切り、虚ろに呟くその身体にはアーティファクトの効果も、見られない。 後処理の連絡をしながら、リベリスタ達は倉庫の外を見遣る。 ぽっかりと外へ口を開いた、廃墟の入口。 逃げていった彼らは一体、これからどうなるのだろうか。その疑問に答えるものは、誰も居なかった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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