●『賢者の石』争奪戦の始まり シンヤの私兵、如月ユミを補足したリベリスタ達はその行く手に『賢者の石』と呼ばれる存在を発見した。数多の錬金術師が求めた究極物質、あるいは卑金属を金にすら換える霊薬の名を冠するそれは、アザーバイドにしてアーティファクトであり、この世界との親和性が高く、魔道技術の進歩や躍進に多くの貢献してきた。 『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)に『塔の魔女』アシュレイがもらした、『大規模儀式』の存在、『穴を開ける』という目的。そこから考えて彼等が単に研究の為に賢者の石の獲得を目指しているとは考え難い。 時同じく千堂より、後宮派が動き出したとの報が入る。恐山会はアークと利益配分の協定を結んでいるが、他派のフィクサードは協力を申し出るも、狙いは賢者の石である。 恐らくは何らかの能力で賢者の石の出現を察知しているアシュレイに対抗するべく、アーク研究開発室が獲得した賢者の石を調査し、その波長と反応のパターンを割り出して万華鏡にフィードする。 かくて、賢者の石はアークと後宮派、フィクサード達の三つ巴の展開での争奪となるのだった。 ●現れる敵の名は『フォルツァ』 ブリーフィングルームに、いつになく緊張した空気が流れる。そんな中で、集まったリベリスタ達の顔を見渡すと、『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は説明を始めた。 「既にお聞き及びと思いますが、『塔の魔女』アシュレイの目的が大規模儀式によって穴を開けることであり、そのために『賢者の石』を必要としていることが判明しました」 資料を片手に説明を行う和泉。プロジェクターには赤く輝く神秘の魔石、『賢者の石』が映し出されている。 「また、恐山派からの情報提供で後宮派が『賢者の石』獲得のために動き出したことも判明しました。詳細はまだ不明ですが、放っておけるような事態ではありません」 誰かが息を呑む。状況の深刻さが伝わってきた。 「それでは、本題に入ります。皆さんへお願いしたいのは、『賢者の石』の獲得です」 次に映し出されたのは地図、中国地方のとある山中のようだ。 「如月ユミと戦闘を行ったメンバーが獲得した『賢者の石』をアーク研究開発室が調査し、その波長と反応のパターンを割り出して万華鏡にフィードした結果、多数の『賢者の石』が発見されました。あなた方に向かっていただきたいのは、その内の1つです」 当然、現地に向かって『賢者の石』を手に入れることが出来るような簡単な話では無いだろう。集まったメンバーの考えを読み取ったように、和泉は説明を続ける。 「現地には『賢者の石』獲得を目指して、後宮シンヤの集めた兵隊がやって来ます。皆さんは彼らと交戦することになるでしょう」 プロジェクターに6人の若い男の姿が映し出される。これが今回の相手となるフィクサードのようだ。 「彼らはフィクサードの傭兵集団で『フォルツァ』と名乗っています。『フォルツァ』とはイタリア語で『腕力』を意味するそうです。そして、大きな特徴なのですが、構成員は全てデュランダルのみになります」 それを聞いて、さすがに集まったもの達の表情に驚きが浮かぶ。なんとも偏った連中だ。 「『フォルツァ』のメンバー全員に言えることなのですが……善悪には無頓着です。彼らは自分達の手に入れた力の振るい場所を求めて戦っているフィクサードです。エリューションとの交戦経験が多く、そこそこの錬度はありますね」 使用する武器はそれぞれ違うが、重量武器を好んで使う。また、ハードブレイクでの攻撃を得意とするようだ。 「注意するとしたら、『フォルツァ』のリーダーである、武槍疾風(たけやり・はやて)という男ですね。他のメンバーよりも若干腕が立つようで、ある程度冷静な判断を行えるようです」 和泉が示したのは野性味溢れる顔の若い男だ。こいつが武槍なのだろう。ハルバードを使って戦うらしく、基本戦術は他のメンバーと大差無いが、ギガクラッシュを切り札にしている。 「『フォルツァ』が戦う理由は後宮シンヤへの忠誠ではなく、『戦える場所を提供されたから』ということですね。そのため、武槍は命を捨ててまで『賢者の石』を手に入れようとはしないでしょう」 今回の目的は『賢者の石』の取得だ。無理してまで彼らを倒す必要は無い。だが、後々の脅威を取り除く意味で全員倒すのも1つの選択肢だ。リスクと戦術の兼ね合いなど、その辺の判断はリベリスタ達に一任するようだ。 「奇跡である筈の『賢者の石』が大量発生した理由は分かりません。最近、突然世界が酷く不安定になり崩界が進んでいる事象と何か関係があるのかも知れませんが、現在調査中です」 事件の全貌も、『賢者の石』についても、まだまだ分からないことばかりだ。ですが、と和泉は言葉を続ける。 「後宮派を阻止し、『賢者の石』を多く獲得する事に成功すれば敵の予定を挫くだけでは無く、アークの設備や装備のパワーアップが望めるかも知れません。皆さんならこれをチャンスに変えられると信じています。どうか気をつけて行って来てください」 説明を終えた和泉は笑顔でリベリスタ達を送り出した。 ●戦いを望む者たち 集合場所に集まった男は、自分よりも先に来ている大柄な男――武槍――に気が付く。既にテントを張っており、晩御飯としてカップ麺を食っている。箸を持つ手が銀色に輝くのは、彼がメタルフレームである証拠だ。 「おーっす、タケ。早いじゃねぇか」 「お、来たか。他の連中はまだだ。お前も食えよ。今晩は長くなりそうだ」 武槍は部下にカップ麺を投げて渡すと、また自分の分を食い始める。受け取った男はカップ麺の準備をしながら、リーダーに話しかけた。 「そう言や、リベリスタとかいうのが来るかも知れないんだってな。この間の熊よりも楽しませてくれると良いんだけどよ」 「俺達と同じように力の制御が出来ている奴らだ。面白くないはずねぇだろ」 武槍はカップ麺を一気にかっ込むと、足元に置いていたハルバードを軽々と持ち上げ、軽く伸びをする。 「『賢者の石』なんざ、どうでも良い。楽しめる奴が来てくれりゃあな!」 その顔には、野獣の獰猛さと子供の無邪気さを同居させたような、そんな笑顔が浮かんでいた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年11月27日(日)22:34 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●サムライ達の出会い 「我らアークがリベリスタ、汝らは傭兵集団『フォルツァ』と見受けた」 「各自、一対一の立ち合いを所望する!」 夜の闇の中、『我道邁進』古賀・源一郎(BNE002735)と『原初の混沌』結城・竜一(BNE000210)の声が響き渡る。 山中に流れる川のたもとで向かい合うのは、7人と7人。 片方はアークに所属するリベリスタ達。もう片方は後宮派に属するフィクサード達だ。 そして、フィクサードを率いる、ハルバードを持った大柄な男――武槍――は、2人の言葉を聞いて、呆気に取られるような表情した後、大声で笑い出す。 「はっはっは、お前らマジで言っているのか?」 「まこも深いこと考えるの超苦手だからね。単純にガンガン行こうよ」 『ビタースイート ビースト』五十嵐・真独楽(BNE000967)は尻尾をぴょこっと立てると、誘うように手のクローを見せ付ける。 「真っ向勝負が一番早いだろ。正面から受けて立ってやるぜ!」 『鉄腕ガキ大将』鯨塚・モヨタ(BNE000872)が愛用の剣、機煌剣・プロミネンサーブレードを武槍達、『フォルツァ』の面々に向け高らかに宣言する。すると、ようやく武槍は笑いを止める。顔からは既に笑いは消えている。 「笑っちまってすまなかったな。まさか、相手から先に言われるとは思わなかったからよ。もちろん、断る理由はねぇ。なぁ、お前ら?」 武槍の言葉に、口元を歪めて答える『フォルツァ』のメンバー達。元より『賢者の石』を手に入れることよりも、戦うことを楽しみにして来た連中だ。異論などあるはずは無い。 相手が挑戦を受け取ったのを見て、『鋼鉄の戦巫女』村上・真琴(BNE002654)は、剣と盾を構える。 「貴方方の流儀が全力で戦い合うことなら、それに答えるのも悪くありません」 「うむ、真っ向勝負とあらば、此方も正々堂々受けて立とう。ただ戦いを求めるのみの純粋な力比べ、心行くまで楽しもうぞ」 『煉獄夜叉』神狩・陣兵衛(BNE002153)が刀を抜くと、一瞬炎を放ったように見えた。闘気が見せた幻だろうか。 戦いを了承してすぐ、それぞれが互いに目で自分の戦うべき相手を探り始める。基準は誰なら倒せるか、ではない。誰を倒したいか、だ。そんな中、源一郎が再び大きく声を上げる。 「無頼が一人。『我道邁進』古賀源一郎。『フォルツァ』リーダー、武槍疾風に一騎打ちを申し込む。未だ習熟中の身なれど、武を誇るならば引き受けぬ理由はあるまいな」 「古風なこと言うなぁ、オッサン。だけど、そういうのは嫌いじゃないぜ!」 一騎打ちを申し込まれた武槍は、鋼の右腕で強くハルバードを掴み、構えを取る。それが合図となり、その場に集まったリベリスタとフィクサード、否、戦士達は散開して自分の相手と向かい合う。 「はは、こいつは良い。こういうのは大好きだよ。目一杯やりあおうか」 大剣を構える『咆え猛る紅き牙』結城・宗一(BNE002873)は、目の前にいる同じく大剣を持つ男に笑いかける。相手も笑っている。いや、宗一の言葉は、この場にいる誰もが思っていることなのだろう。 川原から離れた物陰から、双眼鏡で様子を伺っていた『いつも元気な』ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)が顔を出す。彼女の仕事は『賢者の石』を確保すること。戦いは戦い、作戦は作戦だ。 (絶対誰も負けないって、信じているよ) 心の中で呟くと、『賢者の石』があるとされる場所へ、翼を広げて飛び立った。奇しくも、風に流された彼女の羽根が、戦いの開始を告げる合図になる。 ●この一時に全てを賭けて 大太刀を構えて陣兵衛と大太刀使いが向かい合う。空気は張り詰め、互いに間合いを計っている。着崩した着物を纏った彼女の姿は、戦国の世にタイムスリップしてしまったかのような錯覚を与える。 「お主と儂の剣、どちらが上か勝負と参ろうではないか。今までの相手みたいに甘くはないぞ」 「みたいだな……。早速、試させてもらおうか!」 陣兵衛の挑発に大太刀使いが切り込んでくる。強烈な踏み込みからの一撃は、重さ以上に、速さを備えて陣兵衛を襲う。だが、陣兵衛は攻撃をあえて身に受けて、逆に誘い込んでカウンターを放つ。 「油断ならねぇ、姉ちゃんだな」 「お主の速さも、中々じゃな」 斬らせたのは皮一枚。避けることを考えて勝てる相手では無い。2人は覚悟を決めた。 金属と金属がぶつかり合う音が響き渡る。この戦場の戦いは単純明快だ。宗一も相手も扱うのは両手剣。当てれば相手の肉を裂き、骨を断つ武器だ。それを小細工無しにぶつけ合い、どちらかが先に当てるかの勝負だ。 その最中、宗一の顔に思わず、笑みが浮かぶ。 「あん? 何がおかしいんだ、てめぇ?」 「いや、シンヤの奴も何考えて、お前らみたいなの使ったのかなってな。人選間違えたんじゃないのか?」 「そりゃ、こっちの台詞だ。アークこそ、人選間違えてるだろ」 「違いない!」 2人は話しながらも、笑いながらも、剣をぶつけ合わせる。何故ここにいるのか等、さしたる問題では無い。 重要なのは、目の前の男を倒すこと! 源一郎も武槍も、足元を確かめるように大地を踏みしめながら距離を縮める。 「我が道は拳にて切り開いてきた、汝も身を以て重みを知るが良い」 「道なんて上等なものは知らねぇが、期待には答えさせてもらうぜ!」 2人の動くタイミングは、奇しくも全く同じだった。あえて言うなら、差を分けたのはリーチの差であろうか。 武槍のハルバードが振り下ろされ、源一郎の胸板を切り裂く。その瞬間、源一郎の姿が掻き消えたかと思うと、武槍の懐に入り込み拳を叩き込む。 2人が距離を離すと、一瞬遅れて血飛沫が舞う。 「未だ倒れるには早かろう、我も満足しておらぬ」 「この程度の血で怯む、とか見くびってもらっちゃ困るぜ」 自分の傷も省みず、2人は再び相手への距離を詰めた。 「俺は、結城竜一だ。名乗れ。名乗りを上げられぬほど、惰弱ではないだろ?」 周りが戦いの喧騒を響かせる中、竜一はおもむろに名乗りを上げる。対する斧使いは獲物を構えると、竜一の誘いに乗る。 「こういうのも悪くねぇやな。俺は大野劉生、ただの殴り屋だ」 大野と名乗った男の言葉に頷きながら、竜一は二刀で構えを取る。 「こっちも見た目と裏腹に血の気が多い連中が集まったもんさ」 「でも、感謝してるぜ。あんなに嬉しそうな奴らを見たのは久しぶりだ」 一瞬、ここだけ空気が緩和される。だが、すぐさま、元の戦場に戻る。 「俺らも始めよう。これ以上、語りたくば、武で語れ。」 「言われずとも!」 「どうする、坊主? もう十分だろ。俺らだって、一応『なんとかの石』を探しに行かないといけねぇんだ」 巨大なハンマーを肩にかけ、男はあやすようにモヨタに声をかける。その足元でモヨタは膝をついていた。2人の激突は、ハンマー使いが制しようとしている。モヨタの怪我はひどく、傍目には勝ち目があるようには見えない。 だが、モヨタの瞳はまだ諦めていなかった。 「子供だからってなめんなよ! オイラだっていろんなやつと戦ってきたんだ、力には自信あるんだぜ!」 身の丈ほどの剣を杖代わりに、モヨタは立ち上がる。まだ立てる、まだ戦える。それならば、まだ負けていない。 「オラオラオラオラ!」 モヨタ同様に、真琴も鉄球使いを相手に押されていた。事前の情報通りに『フォルツァ』が行っているのは、相手の優位を消し去る戦術。それは防御を固める彼女にとって、相性の悪いものだった。じりじりと削られて攻撃の余裕も奪われている。 だが、と心の中で呟く。 (互いの矜持を賭け、正々堂々たる戦いを好む。ただのフィクサードとは違う) 本来、フィクサードへの強い憎悪を持つ真琴も、目の前の男達に憎めないものを感じていた。 (この場は少しでも彼らを引きつけるのがボクの仕事) 自分の目的を再確認すると、再び真琴は剣を振るった。 「女のコだからってナメてたら、こっちが泣かせちゃうよっ!」 「よく言うぜ、このガキ!」 真独楽と槍使いの戦いは、相性の差が如実に現れていた。一ところに留まらず、超高速で爪を振るう真独楽の動きを前に、槍使いは追いつくことも出来ずにいた。 だが、槍使いもここで諦めるような性格ではなかった。確かに速度で劣っていても、力では自分のほうが上。動きを捉えれば勝ち目はある。攻撃のパターンを測り、距離を詰められる前に、槍を放つ。 「とったぁッ!」 「きゃっ、何するのさ!」 槍使いが全てを賭けた一撃も真独楽はかわす。だが、タイミングは一瞬遅れ、槍は真独楽の服を切ってしまう。乙女の悲鳴が上がったのは、それが理由だ。 「え、いや、これは……」 思わずたじろいでしまう槍使い。そこに顔を赤らめたまま、真独楽が放つ気糸が襲い掛かる。槍使いは弁明の余地も無く、倒れるしかなかった。 ●決着の刻は訪れて 万華鏡が示した場所に向かったウェスティアの目の前には、アメジストを紅に染めたような結晶塊があった。これこそが、数多の錬金術師が求めたとされる神秘の物質、『賢者の石』だ。 「よし、これで任務達成だね」 さすがに緊張を隠せず、震える手でウェスティアは『賢者の石』を手にする。 と、その時だった。彼女の靴の紐が切れてしまう。割と新しいものであるにも関わらず、だ。ふと不安が心に陰る。 「いや、みんななら大丈夫だよね」 ウェスティアは不安を打ち消すように呟いた。 一進一退に見えた竜一と大野の戦い。しかし、次第に明暗が見えてきた。 「力か……なるほど」 斧の一撃を回避し、竜一が呟く。確かに『フォルツァ』の戦い方は不合理に見えて、理に叶っている。力で押し切る。単純だが、それ故に何に対しても対応出来る。 だが、竜一はあえて技で対抗した。強さとは力のみで得られるものでないと知っているから。 「その身に刻みこめ。強さ、ってのは、力だけじゃなく、技と、心も必要なのさっ!」 言葉と共に竜一の剣が閃いた。 陣兵衛の戦い方は、自分の力を叩き付けるというもの。相手の力が強いなら、それ以上の力で切り伏せれば良い。そんな単純な理。一度は倒れそうになった身体を支えてくれたのは、胸の中にある信念だ。 膠着状態を切り伏せるように、羅生丸に力を込めて切りかかる。その一撃で大太刀使いはバランスを崩す。これも相手の隙を誘ったのでは無い。力でもぎ取ったのだ。 「戦いを好むという点では儂等もお主等も大して変わらぬ。じゃが、一振りに賭ける信念においてはお主等如きに負けはせぬ!」 自分の身を削りながら、陣兵衛は雷を纏い、羅生丸を振り下ろす。 そんな陣兵衛の姿は、互いの血に塗れながらも美しかった。 鉄球使いは息を切らせながら、真琴に鉄球を叩き付ける。それを受けながら、真琴は目の前の男に語りかける。 「約束を破らずに、正々堂々戦う。あなた達の眼目も果たされたようですね。見事……」 「あん? いきなり何言って……ま、まさか!?」 真琴の言葉に、さすがの鉄球使いも気付いたようだ。真琴は誇らしげに言葉を続ける。 「これは武術家の野試合に近いもの。勝てればなお良しだったのですが……」 そう言うと、真琴は倒れる。だが、役割を果たした、満足げな表情を浮かべていた。 「まだ立てるのかよ……」 呆れたように大剣使いが呟く。必殺の一撃を放ったはずだった。だが、宗一は傷だらけの体を押して立ち上がってくる。 「あぁ、負ける訳には行かないんでな。足掻けるのは俺達の特権なんだ」 大剣使いは上段に構え直す。 「てめぇらと戦えて良かったぜ」 「まだ早いぜ。お前もまだ戦えるだろ?」 宗一は剣を構え直すと、いつものように真っ向から飛び込んでいった。 「なんか楽しくなって来ちゃったよ。オイラも案外バトルマニアなのかもな」 「坊主、お前将来大物になるぜ……」 先の流れなら、ハンマー使いが勝っていた筈だ。しかし、モヨタはそこから立ち上がり、いまやハンマー使いを圧倒していた。モヨタの信念が運命を呼び寄せた。そうとしか表現のしようが無い。 「当たり前だぜ! 大事なものを守るために、たくさんの人を助けるために、強くなくちゃいけないんだ!」 モヨタの言葉を聞いて、ハンマー使いは眩しそうに目を細める。 目の前の少年を倒せなかった理由は、これだ。 源一郎も武槍も、満身創痍という言葉がふさわしかった。2人の足元には、夥しい血が流れている。それでも、どこか楽しそうだ。 「やるなぁ、オッサン。付き合ってくれて嬉しいぜ」 「我とて一人の男にして無頼が一人、拳を以て相対せし事に悪い気はせぬ」 だが。 「勝つのは我だ!」 「勝つのは俺だ!」 声と共に再びぶつかり合う力と力。 この空間で何度交わされたことか。 「汝が武も真天晴れ。然し最後に残るは己が肉体、即ち之拳也」 そして、今。源一郎の振り下ろした拳が、力が、この戦いを終焉させた。 ●戦場の絆 「みんな、大丈夫!?」 戻ってきたウェスティアは、開口一番それを聞く。 「ま、余裕とは言い難いけど、なんとかな」 宗一の言葉に包帯を巻かれた源一郎が頷く。 あの後、『賢者の石』奪取に鉄球使いが動いたものの、真琴のお陰で時既に遅し。彼も奮戦したが、取り押さえられることになった。 だが、何よりもウェスティアを驚かせているのは、そんな死闘を繰り広げながらも、妙に仲間と『フォルツァ』が和気藹々としていることだった。 「お兄さん達、力を振るえる場所が欲しいんでしょ?」 「強いエリューションといっぱい戦えるぜ!」 年少組の真独楽とモヨタが熱心に説得をしている。モヨタなど怪我もひどいのに大したものだ。 「儂とお主等との違いは、背負っているものの重み……その矜持の差じゃ」 「力だけでなく、今より成長したければ、アークに来いよ。」 陣兵衛と竜一の言葉は、敵に対するものでは無い。共に戦った戦友に対する、ねぎらいの言葉だ。 真琴はやや複雑な表情をしているが、それでも目の前で見て、自分で感じたことに従う。 「ボクにもそう犯罪を犯すことを好む方には思えません」 「こんな強いんだもん。一緒に戦えたら、すっごく心強い……って思うんだけど」 最後にちょっと躊躇いがちな言葉を真独楽が告げる。その言葉を聞いて、大野が武槍を小突く。 「おい、タケ。悪いんだけどよ……」 「あぁ、分かってる。でも、俺はアークにつかせてもらうぜ」 「いや、俺もそれ言おうとしてたんだけど……」 真独楽の言葉は『フォルツァ』の男達に届いた。他の面々も、続いて我も我もと声を上げる。真独楽の顔が笑顔にほころぶ。 続けて、誰かが笑い声を上げる。それは次第に仲間達――この場にいる全員――に広がっていく。 これからもアークと後宮派の戦いは続くのだろう。だが、今ここに敵はいなかった。 いるのは、共に戦った友だけだ。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|