●悲鳴は扉に閉ざされて ホラー映画ばかり流すとある映画館に、幽霊が住みついている――そんな噂話を男性が耳にしたのは、つい最近の事であった。 古びた外観に、ひとつだけの劇場。男性は、所謂ミニシアターであるその小さな映画館のオーナーであった。上映はホラー映画のみと言うマニアックさ故か、映画館を訪れる客の数は多くない。しかし、ホラー映画マニアである彼が選ぶ映画のセンスが一部のマニアの好評を得ているらしく、足繁く通う常連客は少なからずいる様だ。 経営状況は決して楽ではないが、好きな映画とそれを楽しんでくれる客に囲まれ楽しい日々を送る彼。そこに突如飛び込んできたのが、例の噂話である。 彼にそれを知らせた常連客によると――映画の上映中、ホラーシーンで観客が悲鳴を上げる際に明らかに映画の音声では無い雑音がしたり火の玉の様な光が見えたりする事があるのだそうだ。 確かに、ホラー映画の鑑賞中にそんなものを見れば怨霊の仕業かと考えても仕方無いだろう。そう思いながらも、彼は特に気に留めてはいなかった。むしろホラー映画専門館として箔が付くんじゃないか、と笑い話にする程度であった。 噂なんて、どうせすぐ消える。彼も、彼の話を聞いた常連客達も、誰もがそう考えていた。 その日も、映画館では映画が上映されていた。 デスクに向かい帳簿とにらめっこをしていた男性の下にスタッフが駆けてきたのは、この日一本目の映画の上映が終わってすぐの事だった。 「劇場の扉が開かない?」 スタッフの訴えに、男性は首を捻った。 彼はすぐに扉へと向かい、開けようと試みた。扉は、文字通りびくともしなかった。 「どう言う事だ……?」 扉に手を当て、男性は呆然と呟いた。 しかし、手をこまねいている訳にはいかない。平日の午前中であり両手で足りる程しか居ないとはいえ、客を閉じ込める事になってしまうのだ。 「どうするんですか?」 るスタッフが彼に問う。しかし、それに彼は答えない。 出来る事があるとすれば、扉を物理的に破る事。それは分かっているのだが、実行すれば後の営業にも差し支える。それが脳裏とちらついたのだ。 他に手は無いか。そう考えた瞬間、扉が勢い良く開かれた。弾かれる様にして、2人が尻餅をつく。何なんだと呟こうとした彼は、目の前に広がった光景にその言葉を呑み込んだ。 一面に広がる血。床に伏せて動かない客達。そして、劇場の中心に浮かぶ火の玉の様な光の塊。 「な、な……」 男性の口元が戦慄いた。彼に気付いたのか、火の玉が彼等の方へと向かってくる。そこから放たれた一筋の光が男性の身体を貫き――それが、男性が見た最期の光景であった。 ●ストップ・ザ・スクリーム! 「という訳で、今回はその映画館に潜入して事態を解決して貰いたいんだけど……」 『リンク・カレイド』真白イヴ(ID:nBNE000001)は、一旦そこで言葉を切った。そして、少しの間視線を宙に投げる。 「……上映されるのは本格的なホラー映画だから、怖いのが苦手な人はちょっと大変かも、知れないわ」 「ですよねー」 続いた言葉に、ひとりのリベリスタが溜息と共に呟いた。 とは言え、イヴが告げたのはこれより確実に起こる未来である。映画の内容は置いておく事にして、リベリスタ達はイヴに情報を求めた。 「劇場に現れるのは、フェーズ2のエリューション・フォース1体と、フェーズ1のエリューション・ゴーレム2体の、計3体」 イヴ曰く、エリューション・フォースは火の玉の様な不定形の光で、エリューション・ゴーレムは劇場に備え付けられたスピーカーと出入り口の扉だそうだ。 「エリューション・フォースは観客の悲鳴が力を得たもの、そしてエリューション・ゴーレムはそれに影響されて目覚めたもの、ね。この内、扉だけは能動的な攻撃手段を持たないわ。但し、これを倒さない限り劇場から脱出する事は不可能」 リベリスタの脳内を、先ほど告げた未来の光景がよぎる。劇場の扉が開かなくなったのは、エリューション・ゴーレムと化した扉の力によるものだったのだ。 「つまり、閉じ込められた観客を逃がすには、そいつを片づけなきゃならないって事か」 「そう」 リベリスタの言葉に、イヴは小さく頷いた。 「けれど、扉にだけ集中するのは危険よ。残りの2体は遠距離まで届く攻撃を持っていて、それを無差別に放ってくるみたいなの」 観客達を庇いながら戦う必要が出る可能性もある。その事に、リベリスタ達は唸った。 「映画の上映時間は90分とちょっと。エリューション・フォース達が現れるのは、その後半に訪れるクライマックスの辺り。……最悪、それまでに劇場内に入っておけば大丈夫だから」 未だ不安げな表情のリベリスタから目を離すと、イヴは彼らを見回した。 「少し面倒な状況かも知れないけど、その分遣り甲斐のある敵だと思うわ。――この仕事、お願い出来るかしら?」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:高峰ユズハ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年05月05日(木)21:58 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●恐怖への招待状 見る映画を指定し、料金を支払って、チケットを受け取る。受付スタッフの愛想笑いを背に受けながら、『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)はフロントを後にした。 「映画館の料金は、今回に関しては六文で十分でしょうね」 これが冥府への片道切符であるならば、支払うべきは三途の川の渡し賃ですから。続いた言葉に、彼女の横を歩む『影使い』クリス・ハーシェル(BNE001882)は頭を振った。 「だが、のうのうと冥府へと向かわせる訳にはいかない。私達が居る限りは、な」 彼女達に続きながら、『伯爵家の桜姫』恋乃本 桜姫 鬼子(BNE001972)はほうと息を吐いた。 「出来れば、川を渡る者自体を絶っておきたかったのじゃが」 クリスの表情が微かに苦いものとなった。 映画館へと赴いた彼女達は、まずチケットの買い占めを試みた。他の客が入らなければ、随分とやりやすくなる。そう考えての事であった。 映画同好会の集いとして、身内のみで楽しめる様に。買い占めの理由をそう告げた彼女達への返答は、『そういった用途で使用する場合は事前の予約が必要である』というものだった。当然彼女達は食い下がってみたが、呼び付けられたオーナーもまた同じ趣旨の台詞を言い、頭を下げるのみであった。 鬼子は軽く肩を竦めた。 「折角金子を調えてきたと言うに……ああも頑なでは、引き下がる他無いわ」 「まあ、過ぎた事を嘆いても仕方が無い。後はやれるだけの事をしておくだけだ」 自らに言い聞かせる様に呟くクリスを尻目に、モニカは目を伏せた。 (見ず知らずの者達の命など、正直知った事ではありませんが――) そう思いながらも、劇場へと向かう足は止まらない。 (仕事に忠実たるメイドの端くれとして、見事完遂してご覧にいれましょう) チケットを懐に捻じ込むと、彼女は静かに前を見据えた。 ●開幕までのカウントダウン (うむ、うむ。やはり映画館ではこれが無ければ話にならぬわ) Lサイズのポップコーンとコーラを両手に抱えながら、『泣く子も黙るか弱い乙女』宵咲 瑠琵(BNE000129)は劇場内へと足を踏み入れた。 上機嫌なまま、右壁面に並ぶスピーカーに近い席を選ぶ。荷物を脇のホルダーに置きながら、彼女は劇場内を見渡した。 視界内に居るのは、仲間達と四人の一般の客。それを確認して、彼女はシートに身を沈めた。 (まあ、無いよりマシではあったかのぅ) 現在、映画館全体を包み込む様に『強結界』が幾重にも張り巡らされている。チケットの買い占め同様他の客を排除する為の策であったが、映画を見る為に来た者に対しては完全とは言えなかった様だ。 しかしそれでも、当初両手で足ると言われていた数が片手でも余る程になったのは僥倖だ。そう結論付けると、瑠琵はポップコーンを摘まんだ。 彼女とは対照的に、『自称・雷音の夫』鬼蔭 虎鐵(BNE000034)は左壁面に並ぶスピーカー傍の席に腰掛けていた。 (映画なんて久々にみるでござるなー、どんな映画か楽しみでござる) 強面の下で、彼は心を躍らせていた。 (ああ、面白ければ今度一緒に見に行くとするでござる。此度は途中で見られなくなる様でござるからな) 『未来の嫁』と呼ぶ少女を脳裏に描きながら、彼は密かに算段を付けた。 彼の付近に席を確保した『月光の銀弾』ネル・ムーンライト(BNE002202)は、瑠琵同様両手にコーラとポップコーンを抱えていた。 (好みの映画じゃないのが、ちょっぴり残念だな) 今回の内容は、B級ならぬZ級という彼女の好みには合致しなかったらしい。しかし彼女は、完全に映画を楽しむ態勢であった。 (非常口はあそこか) 奥の席に着いた『鷹の眼光』ウルザ・イース(BNE002218)が、スクリーン横にある非常口へと目を向ける。彼は先に劇場に入っていた『鋼鉄の砦』ゲルト・フォン・ハルトマン(BNE001883)よりそれを聞き、この場所に席を決めたのだった。 (さてさて、どうなる事やら――) 上映開始まで猶予がある事を確認すると、彼は静かに眼を閉じた。 上映された映画は、スケールこそ小さいがよく出来た作りになっていた。 詳細に関しては後に瑠琵が饒舌に語ったものがあるが、ここでは文字数の都合により省略する。 「解せぬ」 ……それはさておき。 映画には恐怖心を煽る演出が随所に挟まれており、その度に悲鳴が聞こえた。 (やれやれ、年寄りには刺激が強すぎる映画じゃ) 鬼子は、時折袖口で視界を覆いながら鑑賞を続けた。 彼女からそう遠くない場所に居るクリスは、良い感じに涙目であった。 (怖くない、怖くなんてないぞ。こ、これはただの映画だからな!) 体を縮こまらせながら悲鳴を上げる。彼女の限界は近かった。 (エリューション、早く来い!) その直前にクライマックスがある事など、彼女の頭からはすっぽり抜け落ちていた。 かくして、彼女はクライマックス時に場内で一番の悲鳴を迸らせる事となる。 同時に上映は中断され、スピーカーは沈黙し、スクリーンは暗転した。 ●アイ・スクリーム 通路の床を照らす照明、闇に沈む客席、そしてその中に佇む光の塊。幻想的と言えなくもないその光景に、しかし見惚れる者は無かった。客の四人は未だ事態を呑み込むに至らず、リベリスタたる八人は作戦に則り行動を開始していたからだ。 通路へと踏み出しながら、ネルは懐の銃へと手を滑らせた。 (光源が足らないか) 劇場内を照らすのは、足元の照明とエリューション・フォースが放つ光、そしてモニカが持参した懐中電灯のみである。彼女は事前に叩き込んでおいた劇場内の配置図を脳内に広げ、狙いを定めた。 「Put Down Your Arm……と言っても、聞いてはくれないだろうけどね」 発砲音と共に放たれた魔弾は、見事スピーカーを貫く事に成功した。 客の悲鳴が響いたのは、それとほぼ同時だった。 「――本物の悲鳴を上げる時が来たようじゃのぅ」 瑠琵が印を結ぶ。『ハウリング』の射程が被らない様にと壁際に立つ彼女を中心に拡大した防御結界は、客をも包みながら展開を終えた。 「この程度の敵、ホラー映画に比べれば!」 半ば涙声で言いながら、クリスは意志を持った影を呼んだ。そして、足元から現れたそれの援護を受けながら気の糸を紡ぎだす。一瞬たわむ様に揺らいだそれは、鋭い速さを持ってスピーカーへと殺到した。 そんな彼等をよそに、客はそれぞれに席を離れ始めた。恐慌状態の中、出入り口の扉を目指したのだ。 モニカは持参した拡声器を構えた。 『出入り口の扉は閉ざされております。こちらの非常口より退避願います』 「全員指示通りに避難しろ! 死にたくないならな!」 客の下へと駆けつつ、ゲルトが強い口調で告げる。『威風』が醸し出す威圧感に震えた声で応じると、客達はモニカが持つ懐中電灯の明かりを頼りに移動を始めた。 そんな彼等へとスピーカーが意識を蠢かす。その瞬間、強い衝撃が身を襲った。 「フルスイングでござるよ!!」 虎鐵が大太刀を豪快に振るったのだ。集中状態から迸るエネルギーを乗せて叩き付ける。 しかしスピーカーには僅かな傷しか刻まれなかった。 「……流石に硬うござるな!」 その声には、手応えへの昂りが混じっていた。 一方、鬼子は客席の間を歩みエリューション・フォースに接近した。 「暇そうじゃのう。どれ、わらわ達が遊んでやろう」 ごく狭いスペースの中では、大きな動きは取れない。攻撃や回避には少々不利な状況だが、彼女は鹿の因子がもたらす超速の反射神経と『完全防御』の体勢でそれを打ち消していた。 その背後で浮遊しながら、ウルザは黒い手袋を嵌めた右手で印を切った。指先から放たれた気の糸は、事前に活発化させておいた思考回路と『暗視』の能力により算出されたポイントを正確に貫いた。 光が大きく揺らぐ。その意識が自らに向いたのを察し、ウルザは不敵に笑った。 「そう、キミの相手は彼等じゃなくオレ達。――さあ、余所見しないで来なよ」 何よりも、客を無事に救う為に。決意を胸に臨む彼に、怯みの色は無かった。 「大御堂!」 ゲルトに呼ばれたモニカは、彼が連れてきた客の数が一人足りない事に気付いた。 「腰でも抜かして、客席の方に残っているのでは」 「……有り得るな」 ゲルトが客席へと引き返す間に、モニカは残りの客を非常口へと誘導した。 (無事で済みましたか) 誘導中にスピーカーの一撃を喰らったら、彼等に被害が及ぶのは必至であった。モニカもいざとなれば彼等を庇う心積もりではあったが、一度に庇えるのはひとりだけだ。彼女はひとまず幸運に感謝を捧げた。 客席へと戻ったゲルトは地を這う客の姿を発見した。モニカの予測通り腰を抜かしたらしい。震える体を抱えると、ゲルトは通路へと出た。 その時、ネルの声が飛んだ。 「危ない!」 それに反応して、ゲルトが客を庇う様に身構える。スピーカーからの雑音が届いたのは直後だった。 「ぐっ……!」 意識の底をも揺さぶる様な、強烈な音。一瞬力が弛緩しかけたが、彼は寸前でそれを耐えた。抱えた客は、彼を不安気な瞳で見つめた。 「心配するな。お前達は俺達が守り抜いて見せる」 そして駆ける。その姿が非常口の向こうに消えるまで、そう時間は掛からなかった。 「む、観客の方々の避難が完了した様でござるな。それは大変喜ばしい事でござる、が……思いの外硬うござる」 大太刀を手に、虎鐵が眉を寄せる。 「嘆く暇があったら、とっととスピーカーを片付けるのじゃ!」 後方から瑠琵が檄を飛ばした。 防御結界を張った後、彼女は式神の鴉をスピーカーに向けて放ち続けていた。スピーカーの注意を惹き、あわよくば『怒り』に陥らせる。その目論見は当たり、繰り出される攻撃は度々彼女に集中する事となった。 瑠琵の立ち位置もあり、他の者達は被弾を抑える事が出来た。だが当然ながら、瑠琵自身の傷は増える。幼い顔立ちに滲んだ疲労の色は、次第にその濃さを増していった。 (今暫くの辛抱じゃ) 鬼子の顔にも、若干の焦りが浮かんだ。 唯一他者回復術を持つ彼女は、『完全防御』の合間に瑠琵やウルザ、そして彼女自身へと癒しの符を施していた。しかしそれはそう乱発出来るものではない。故に、次々に増える傷をカバーするには至らなかった。 ウルザはゲルトより自動回復の加護を受けており、また瑠琵は『吸血』により生命を吸う事が出来たが、それらとて不足を補える程ではない。これ以上長引けば拙い――そんな空気が流れる中、モニカは右腕のアームキャノンを蠢かせた。 「これより援護射撃を開始致します。――これにて戦況はこちらに傾きました。どうぞご安心を」 表情ひとつ動かさず言い、精神を集中させる。感覚が鋭敏になった事を確認すると、彼女は続けてアームキャノンを構えた。放たれた射撃は、正確な鋭さを持ってスピーカーを打ち据えた。 轟音と共に、スピーカーから欠片が舞う。通常より強烈な一撃が、その躯体を大きく抉ったのだ。それに続く様に、クリスが全身より気の糸を生んだ。 「これでっ……どうだ!」 飛翔した気の糸がスピーカーの中心を貫く。呻き声の様な雑音が一瞬流れた後、スピーカーは動きを止めた。 「さあ、お待たせ。次は君の番だ」 集結する仲間達の姿に、ウルザがふうと息を吐く。その肉体は限界に近付いていたが、ようやく見えた展開に心に過った不安は霧散した。 「うむ、観念するがよいわ」 その言葉と共に瑠琵が幾重にも張り巡らせた呪印は、しかしエリューション・フォースを捕らえるには至らなかった。 自らに攻撃を加えんと取り囲むリベリスタ達の間で、それは力を開放した。 「…………!」 回避に失敗した者の意識が『映像』へと引きずり込まれる。心を強制的に抉るおぞましさに、ある者は悲鳴を迸らせ、ある者は必死に身を捩った。 ようやく現実へと引き戻された彼等の中には、昏倒した者、そして恐怖に動けなくなった者が出た。 「ちっ……!」 それらを逃れたゲルトが、邪気を払う神々しいまでの光を放った。それにより正気を取り戻した仲間達に安堵しながら、ネルは銃を構えた。 「生憎と、この映画に続編予定はない。ここで潔く倒れてくれないか、キミ達」 あるはずの無い返答を待つ事無く、最後の魔弾を放つ。動きの揺れすら計算に入れた軌道は、敵に回避の猶予をも与えなかった。 「そうでござるな、そろそろ終幕とするが良いでござろう」 全身に輝くオーラを這わせながら、虎鐵が大太刀を振るった。幾度となく斬撃を叩き込まれながら、エリューション・フォースは光線を放った。 「くっ……! なに、これしきの傷!」 身体に走る痛みに顔を顰めながらも、虎鐵は再び斬撃を放った。その勢いに、エリューション・フォースの身体が大きく揺らいだ。 彼に続いて、リベリスタ達は一斉に攻撃を仕掛けた。最早彼等には拘束の術も回復の術もない。純粋に殴りあい、削りあう。そしてその先にあったのは―― 「当然の帰結ですね」 その台詞と同時に、緻密に計算された軌道で弾丸が放たれる。それに穿たれ全てを削り取られたエリューション・フォースは、その形を崩壊させた。 光の残滓が闇に解けるのを、モニカは変わらぬ表情で見届けた。 最後に、リベリスタ達は閉じたままの出入り口へと向かった。残された力は皆僅かであったが、動かない扉をこじ開けるにはそれで充分であった。 頑ななまでの防御に若干の時間を要したものの、やがてその封印は解かれる事となった。 こうして、恐怖の舞台は幕を下ろしたのだった。 ●終幕 出入り口の扉が開いた先には、映画館のオーナーとスタッフが居た。目の前の光景にぽかんとした顔で立ち竦む二人に、客達は一斉にリベリスタ達の活躍を告げた。――尤も、『強結界』の効果かその内容は非常にあやふやなものとなっていたが。 彼等を尻目に、リベリスタ達はこっそりと映画館を退出した。 「映画のラストが気になるが、致し方ないのぅ」 帰路を歩みながら、瑠琵が口先を尖らせる。その後方で虎鐵が頷いた。 「拙者も気になるので、後日見に行く事にするでござる!」 にこやかに言う彼に、瑠琵もわらわもそうするかのぅと呟いた。 (うーむ、消化不良だ。帰りにレンタルDVDを漁っていくか) どんなものにしようかと唸るネルの傍では、クリスが憔悴しきった顔をしていた。 仲間達のやり取りから目を離すと、虎鐵は空を見上げた。 (怪我人も出、拙者も少々疲れ申したが――観客の方々も無事に救出できた旨、何よりでござる) そう思えば、体にのしかかる疲れも心地よいものに感じられた。 さて、この物語を『嫁』にどう語ろうか。そんな事をゆるゆると考えながら、彼は仲間達を追ってその場を後にした。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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