●帰還 「配島さぁぁぁぁぁあああんん!」 諸手をあげ涙を流さんばかりの感極まった様子で駆け寄ろうとしたナオトだが、一転慌てて横っ飛びに吹っ飛んだ。一瞬前までナオトがいたあたりを一発の弾丸が空気を切り裂き、背後の建材にめり込んで止まる。 「な、な、何すんですか!」 「ナオト君、きもい。涙も鼻水も汗もキモイって僕、ずっと前から言ってるよね。飛沫1つでも飛ばしたら殺すって」 そうだった。ナオトはごくりと喉を鳴らして唾を飲み込む。 しばらく会ってなかったし、その間のちょっと過酷でじり貧な生活が続いたせいであの配島に『慕わしい』思いなんて抱いてしまった自分がアホだったと思い直す。やっぱり配島はちょっと、否かなりやばくて物騒な奴だ。ナオトはかつてそうだった様に、適度な遮蔽物を間に距離を保ちつつ、ゆっくりと立ち上がる。 「何かあったんですか?」 随分と姿を見せなかった配島が自分の前に現れたのだ。さすがに何か理由があるのだろう。 「三尋木さんに呼ばれちゃってさ。プレゼントして欲しいお宝があるんだって。浅場さん達が場所は特定したんだけど、まぁ浅場さんが出張るって事でだいたい判るよね」 配島は血色の悪い頬に僅かに血の色を浮かべ機嫌良くうっとりと笑う。三尋木の情報網を総動員しても場所の特定のみで奪取不可能と言う事は、限りなく不可能に近い事を求められるのだろう。 「ナオトは僕と三尋木さんの為なら死ねる子だよね。下手すると本当に死んじゃうけど、一緒に来て」 痩せこけた細い腕が伸ばされ握手を求めるように配島が手を差し伸べる。 「辞退します」 そう言えたらどんなにスカッとするだろう。でも1秒後に本当に死んでいるかも知れない。 「頑張ります!」 ナオトはその場を動かず用心しつつ頭を下げる。 「良く出来ました」 配島の伸ばした手にはいつの間にか小型の拳銃が収まっている。それを器用に袖の中へと戻し子供みたいに屈託無く笑った。 ●紅の洞窟 ブリーフィングルームの中央に立つ『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は集まったリベリスタ達を見回して言った。 「今回の任務は賢者の石を持ち帰る事です」 和泉は淡々とした口調で続ける。『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)が聞いた『塔の魔女』アシュレイの言葉……全てが真実かどうかはわからないが、少なくても大規模な儀式を執り行い、世界に塞ぐ事の出来ない風穴を穿つ、その言葉は見過ごせない。そこに賢者の石が使われるとするのならばどれ程の規模になるのかは想像することも難しい。 「幸い恐山会からの情報提供と、EXNのチームが持ち帰った賢者の石の解析結果が万華鏡システムの精度を高めてくれました。ほぼ正確に現存する賢者の石の場所を割り出す事に成功してます」 和泉が示したのは太平洋に面したとある岬とそこから干潮時には歩いて渡れる無人島であった。島は既に後宮シンヤの息がかかったフィクサード達が大勢上陸している。現場の責任者は氷見縹(ひみ・はなだ)という30才前後の男だ。統率力のある慎重な性格だが、荒事の現場はさほど経験していない。この勢力との全面戦争を避けるのであれば、海底から海中トンネルを抜けるルートしかない。トンネルの先は無人島の地下深くと繋がっていて、更に洞窟が広がっている。その最奥に賢者の石は存在しているのだ。 「注意点があります。今回は恐山派以外のフィクサード三尋木が協力を申し出ています。ですが、彼らとの協力関係は希薄でありこちらの作戦を考慮した行動は期待出来ません。また、三尋木側が一度賢者の石を渡してしまえばアークに引き渡す可能性はほぼ零と予測されます」 それでも協力をうたっている以上、向こうからリベリスタ側を攻撃することはない。同様にこちらから攻撃をすることも出来ないが、戦力を上手く使うことが出来れば……そこで言葉を句切り和泉は僅かに笑みを浮かべる。 「今回の事態が崩界の進行とどの様な因果関係があるのかはハッキリとしていません。けれど後宮派を阻止し、『賢者の石』をより多く獲得する事が出来れば敵の計画を頓挫させるだけではなく、アークの設備や装備の増強が見込めるかも知れません。好機到来とも言えるわけですから、是非とも成果をあげて帰還なさることをお祈りします」 和泉は表情を引き締めると姿勢をただし敬礼した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:深紅蒼 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年11月27日(日)22:33 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●秘宝の眠る島 ブリーフィングルームを出てから丸一日さえ経っていない。満潮に近い時間を見計らって船で接近したリベリスタ達は、全員が準備していた道具を身に着け潜水していく。穏やかで透明度の高い海中でトンネルの入り口を見つけるのは容易い事だった。『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)の言葉通り、敵の姿はなく今のところ罠も発見出来ない。8人のリベリスタ達はハンドサインを駆使して隊列を整え、薄暗いトンネルに飛び込んでいく。10分ほど泳いでいくと不意に頭上が明るくなり、ゆらゆらと水の中に幾筋も光の帯が差し込んでくる。そこが海中トンネルの終点であった。身体が変調しないようゆっくりと浮上し、やけに重く感じる身体をゴツゴツした岩の上に持ち上げる。 「はぁ……自由に息が出来るというのは有り難い事だと再認識したよ」 廬原 碧衣(BNE002820)はゴーグルを取りドライスエットを脱ぎ始める。そしてすぐにもう一度使うのだと言わんばかりにレギュレーションをつけたままのボンベを岩壁に立てかけておく。 「この程度の運動で助かったわ。日頃からジムで身体を動かしているとやっぱり違うのかしらね」 小柄で童顔な『本業はAV女優♪』桃瀬 瑞穂(BNE002772)だが、濡れた髪を無造作に掻き上げて結ぶ仕草はどこか妖艶で隠せないコケティッシュな魅力が溢れている。 「やれやれやっかいな事になったもんだぜ。いきなり海にダイブさせられるとは思わなかった」 むしり取るように装備していたダイビングの機材を取り払いならが、『悪夢の残滓』ランディ・益母(BNE001403)は周囲を見渡す。トンネルの出口はなんの変哲もない白っぽい岩場であった。大きな岩が散在していて、身を隠すには丁度良い。 「とりあえず配島は罠が得意だという話だから、迂闊な行動は出来ないな」 濡れた長い髪をギュッと絞り、無造作に結び直したアルジェント・スパーダ(BNE003142)が自分に言い聞かせるように言う。情けない話だが、今は自分よりも仲間達の判断力の方が優れている。だから作戦や行動は皆の指示を全面的に受け入れ従うつもりだった。 「配島も往路で俺達を潰したりはしないだろう。そんな事になれば自分達だけで後宮派と戦うハメになる」 リベリスタ達の中で最も多く配島に遭遇した事がある『燻る灰』御津代 鉅(BNE001657)は奴の思考を読もうとする。だから危険な帰途への牽制にここに残ると決めたのだ。 「僕もそう思うよ。配島さんは少ない労力で多くの成果を得ようとするタイプだと思う。だけど、そう簡単に渡すわけにはいかないから……ねっ」 同じく他勢力を警戒するためにこの場に残った『寝る寝る寝るね』内薙・智夫(BNE001581)は小首を傾げてニコッと笑い、澄んだ夜空のような漆黒の瞳を煌めかせる。 「早速ですが行きましょうか。他のどの勢力よりも先行しているいうアドバンテージは捨てられません」 靴も履き替えた浅倉 貴志(BNE002656)は立ち上がり、共に別働隊となる『さくらのゆめ』桜田 京子(BNE003066)に声を掛ける。頭は飾り程度の存在価値しかないナオトだけならば問題ないが、配島の情報を直接知り得ていない事は不安材料の1つでもある。 「そっか、うん、そうだよね。わかった! じゃあ行くね」 京子はいきなり走り出し、起伏の激しい岩場を駆け抜け洞窟の入り口へと向かっていく。あまりの俊敏さに貴志が追いつかない。 「まっ……いえ、僕が急げばいいのですね」 京子を追い貴志も走り出す。洞窟の奥へと走る2人も、そして彼らを待ちつつフィクサード達を警戒する者達にも既に戦いは始まっていた。 ●洞窟 京子は立ち止まらない。貴志との距離が開いてしまっていることはわかっていた。2人が分断される危険はあるが、速く手にして引き返し合流すればいいことだ。罠が仕掛けられていたとしても、きっととっさに何か行動出来る筈だ。 「どっちにしたって危険なら、早く手にした方がいいよね」 自分を信じて京子は走る。後続である貴志も声を張る事は出来ず、無言でひたすら京子の背を追っていた。潜む者がいれば判る筈だが、貴志の感覚は人の思いも体温も感じない。ただ――全く何もないわけではない。人ほどの大きさのない小さくて低い温度が幾つか点在している。懐中電灯で確認すべきかとも思ったが敵に察知される危険もあるため考えた末に使用を控えた。 「とにかく前に進むしかありません」 大まかな熱源の場所を覚えておくだけで貴志は先を急いぐ。すると前から人が走ってくる。それが先行していた京子なのはすぐに判った。 「どうかしましたか?」 近寄ってくる京子に低い声で尋ねると、息を弾ませながら満面の笑みを浮かべて手の中のハンカチを開いてみせる。そこにあったのは鮮血の様に赤い石であった。ただの石ではないことは見る者が見ればすぐにわかる。それ自体、生きているもののように圧倒的な存在感と力を放っている。 「これ、だよね。賢者の石……」 「間違いありません。では戻りましょう」 「うん!」 2人は今来た道を引き返すように戻っていく。 その頃、合流地点で待機をしていた6人は氷見の指揮する大勢のフィクサード達に囲まれ、否応なく激しい攻防を繰り広げていた。氷見側とすれば『賢者の石』が眠る洞窟から敵を排除しないわけにはいかず、リベリスタ達も奥へと向かっていった仲間2人を見捨てて撤退することも出来ない。 「情報通り、敵は少数。タイマンじゃねぇんだ。1人に3人、4人がかりで取り囲んでやっちまいな!」 後方にいる行動隊長、氷見縹の檄が飛ぶ。 「任せてください、氷見さん」 「この島は俺等のシマだ!」 「シマから出ていけ!」 その言葉通り、さして頭が良さそうではないが腕っ節だけが自慢という男達はチームを組んでリベリスタ達に襲いかかってきた。 「氷見が来たか。どうやら配島は姿を見せていないようだが……」 油断なく周囲を伺う鉅の足下から影が伸びる。配島どころかナオトや他の三尋木派のフィクサード達も現れない。どうせ何事か企んでいるのだろうと思うと鉅は眉間を寄せる。 「氷見ぃいいい!」 ランディが後方の氷見目がけて走る。視界には当然部下であるフィクサード達が迫ってくるのが見えている。けれど無視して突進した。ランディの狙いは敵の司令塔であり将でもある氷見だけであった。氷見さえ崩せば敵の陣形や連携は崩壊し、烏合の衆となる。なにより事前の情報によれば氷見はこういう攻撃には脆いはずだ。 「ランディさん、出過ぎないで! ってもう聞こえてないかな?」 猪突猛進するランディの姿はすぐにフィクサード達によって見えなくなる。唇を噛んだ智夫……だが、迷っている時間はない。判断の遅れは自分と仲間達の命を危うくし、危険を増大させる。幸い、迫ってきていたフィクサード達はランディを追うか氷見の指令通り突撃するかで混乱を生じている。 「覚悟してよね」 無意識に愛らしい仕草で小首を傾げた智夫の意志はまばゆく強い裁きの光となる。幾人かのフィクサード達が顔面を両手で覆いながら悲鳴をあげて倒れ伏す。 氷見達が現れる数分前から迫る敵を察知していたリベリスタ達だが、隠れていたわけではないので奇襲の先制は与えられなかったが、強化の力を使う事は出来ていた。 「ここ……それからあそこ。あれはこう動くから狙いは……」 碧衣の頭脳は視覚をメインに五感からの情報を組み上げ最適の命中率を期待出来る攻撃行動を構築していく。 「上等だ! 命の惜しくない奴から掛かって来やがれ。返り討ちだぜ!」 アルジェンとは上着を脱ぎ捨て大声で威勢の良い啖呵を切る。 「やるしかないみたいだね」 抜群のプロポーションでモデルの様なポーズを取ると瑞穂は体内の魔力を活性化させる。 「随分と予定が狂ったが……やれやれ」 鉅は真っ先にナイフを振りかざして突進してきたフィクサードを気糸で縛る。その間に敵陣深く切り込んだランディは片刃の重い両手武器にエネルギーを溜めて振り回す。 「邪魔だ! どきなァァ!!」 「ぐええぇええ!」 腹を打たれたフィクサードが大きく後方に吹き飛ばされ、岩に激突して盛大に血をしぶかせる。 「そっちが僕達を攻撃しようとするから悪いんだよ」 再び智夫の身体から聖なる光が放たれ、神の怒りに触れた悪魔どものようにバタバタとフィクサード達がうめきだす。 「ここは実に私向きの戦場だ。逃げ場の無い上に正確な狙撃ってヤツを見せてやるよ」 余裕の笑みを浮かべる碧衣の言葉通り、正確無比の狙い撃ちが突進するフィクサード達の通信機器を破壊していく。あまりの正確さに唖然とするフィクサード達の動きが止まる。その一番前にいる男の脚がアルジェントの早撃ちによって穿たれる。 「ぐあああ」 悲鳴をあげて転がっていくフィクサード。それでも半数以上が無傷だったり軽傷でまだまだ戦える。彼らは肉厚でリコーダーほどもある大型ナイフを手にランディを、そして智夫や鉅を斬り付けていく。2、3人を相手の接近戦だが、3人とも手酷い深手は回避しているが全くの無傷ではいられない。 「何をしてやがる!! くそぉ……おい、お前らも来い。今すぐだ! そうだ、急げ!」 数で優るにもかかわらず優勢とはいえない戦況に苛立ったのか、早くも氷見は携帯電話で増援を呼ぶ。 「え? 何これ? どういうこと?」 洞窟の奥から戻ってきた京子を迎えたのは、まさに激戦の中にいる仲間達とフィクサード達、そしてひっきりなしに部下を叱咤する氷見の姿だった。 「三尋木のがいませんね。もしやこれが彼らの罠?」 京子を追って走ってきた貴志が息を整えながら言う。真昼のように煌々とライトアップされた戦場には氷見の指揮するフィクサード達とリベリスタ達しかいないが、三尋木派の気配もない。 「賢者の石だ! その女を狙え! 奪い取るんだ!」 氷見の声にフィクサード達の動きが変わる。 「やれやれ、次は追いかけっこか?」 ここで鉅は賭けに出る。おもむろにアクセス・ファンタズムを取り出すと、通信を始めたのだ。 「こちらは仕掛けた、そちらも動け。こいつらの退路を断つ」 低い声と早口でそれだけ言うと京子へと向かったフィクサード達を追って走る。目の端に映った氷見の顔が複雑な表情を浮かべているが、もうそちらには構わない。 「どこを見てやがる! 貴様ぁあ!」 「ひやあああ!」 次の瞬間、氷見の視界一杯に広がったのは血まみれになったランディの壮絶に凄みのある笑顔だった。氷見を守る3人の新手のフィクサードを相手にしていたランディは切られても撃たれても決して後退しない。フィクサード達もそれぞれ深手を負っているが、最も酷い状態のランディが最もアグレッシブに動き止まらない。とうとうその剣の切っ先が氷見を捉えたのだ。唸りをあげて迫るランディの攻撃を悲鳴をあげて転がり避ける氷見。 「ここで三尋木まで出て来られたら……ううぅ、だめだめ。考えただけで胃が痛くなっちゃうよ」 嫌な考えを振り払うように首を振ると智夫は聖なる存在へと呼びかけ、治癒の福音をあたりに響かせる。正常なる音は血なまぐさい戦場のこもった空気を振るわせリベリスタ達の傷を癒していく。常に最前線で戦うランディや鉅、更には比較的後方から射撃を行う碧衣やアルジェント、瑞穂の痛みが消えていく。 「……今は考えるな。そのうち嫌でも考えなくてはならないときが来る」 智夫の意識に同調していた碧衣は不安定になりがちな思いに警鐘を鳴らす。碧衣は戦況に応じて行動し、攻撃にも味方の補助にも大活躍をしていたし、智夫の的確な判断と指示は味方の危機を救ってきた。それでも戦況は劇的な好転を見せず、正直三尋木の動向に配慮する余裕がない。気を抜けば囲まれて自由を奪われジリジリと命を削られていく。戻ってきた京子と貴志と合流し、力を合わせて戦う事も『賢者の石』を確保する事も出来ない。 「このまま戦っても負けそうだよ。それだったら大人しく後宮派に賢者の石渡して見逃してもらおう!」 走り回る京子がどこかに潜んでいるだろう三尋木派のフィクサード達にも聞こえるよう大きな声で叫ぶ。 「……えっ」 それは小さな声だった。だが、ナオトを探していた貴志は聞き覚えのあるその声を聞き逃さなかった。 「ナオトがいました。ということはどこかに……」 「いいの? 同盟相手なのに黙って負けるの見てるの? 声、撮ってるよ?」 京子が『賢者の石』とボイスレコーダーを高く掲げる。 「ごちゃごちゃうるせぇ!」 「その石渡せやぁ!」 傷だらけの氷見配下のフィクサード達が京子に追いつき襲いかかる。 「京子さん!」 駆けつけようとした貴志の進路を別のフィクサードが遮った。15人いたフィクサード達は3人が戦闘不能となり2人が絶命しているが、氷見をのぞく9人が満身創痍となりながらも執拗に襲いかかってくる。 「ったく氷見の奴も使えないな」 鉅は血飛沫をまき散らしながらの壮絶にして華麗なダンスを披露しフィクサードを倒していく。 「へへ、あんた強いな。でも……」 だが、倒れながらも繰り出されたナイフの先が深く鉅の脇腹に突き立てられた。意識が混濁する一瞬前、ふと感じた嫌な予感を思い出したがそれきり倒れて動けなくなる。 倒れても起きあがるランディはとうとう得物に氷見の血を吸わせていた。 「……ば、ばかな」 「世の中予定通りには行かないもんさ、だからあらゆる状況で俺は勝つ! テメーと違ってな!」 血だるまになっても勝ち誇り倒れた氷見を見下ろすが、すぐに自分も倒れてしまう。 「京子さん! せめて京子さんだけでもここを脱出してよ!」 フィクサードのナイフをかわしながら智夫は襲われ傷つく京子へと、そして仲間達へ福音を授けたまへと祈り続ける。 「行け!」 敵に斬り付けられながらも碧衣の攻撃が京子の前を塞ぐ敵を目を撃つ。だが、アルジェントと瑞穂はフィクサードに沈められ戦える状態ではなく京子の退路を確保出来ない。 「でも、でも……みんな一緒じゃないと帰れないよ!」 「行きましょう」 貴志は発煙筒に火を点け放り投げると、京子の手を取り氷見達が使っていた道で島の地表へと向かっていく。すぐに煙が広がっていくが貴志と京子の行く手の視界は保たれている。だが、次の瞬間貴志は身体に激しい痛みを感じうずくまるように膝を突いた。京子も同様に倒れている。 「お待ちどうナオト君。氷見君達は好きにしちゃっていいよ」 「あざーす、配島さん」 薄れ行く意識の中で僅かにそんな声がした……様な気がした。 気が付くとリベリスタ達は島の岸壁に停泊していた船の甲板に寝かされていた。深手を負った者にも応急処置が施されていたが、京子が手にしていた筈の『賢者の石』は失われていた。 「金髪の男が持って行ったよ」 智夫は悔しそうに唇を噛んだ。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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