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<賢者の石・争奪>DADADA弾丸GUNGUNGUN

●ケンジャの××
「『賢者の石』――lapidis philosophorum。哲学者の石、万能薬(エリクサー)、錬金薬液(エリクシル)、染色液(テインクトゥス)。
 卑金属を金へ、人間を不老不死へ。ご存知の方も多いかと思いますが、遥か古より語り継がれる伝説にして奇跡の魔石の事ですぞ」
 そう言って事務椅子をくるんと回し振り返ったのは『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)。
 いつもの様子。だが、瞳の奥には真剣さを孕ませて集まったリベリスタ達を見渡した。
「『賢者の石』はアザーバイドにしてアーティファクト、それ自体は周囲の物質や現象に増殖性革醒現象を齎しますが、本体そのものは直接的な崩界要因には成り得ません。
 魔道技術の進歩や躍進に貢献してきた代物でこの世界との親和性が高いようでして――通常の調整で万華鏡の察知にかけるのは中々難しい、とは真白室長の仰っていた事なのですが。
 取り敢えず、まぁ、ザックリ説明してゆきましょう。耳かっぽじってお聴き下さい」
 と、メルクリィは視線で卓上の資料を示す。先日の依頼報告書のコピーだ。参考がてら目を通しておけとの事なのだろう。
「先日、アークのリベリスタ皆々様が『賢者の石』を入手しましたぞ、ってのはご存知ですね。
 で、その『賢者の石』をアーク研究開発室の皆々様が調査なさいました。その結果――なーんと、『賢者の石』その波長と反応のパターンを割り出して万華鏡にフィードする事が出来たのですよ!
 つまり今まで視難かった『賢者の石』を楽~に視れるようになったワケですぞ。
 ……しかも、何故か奇跡である筈の『賢者の石』が現在大量発生中。崩界が進んでいる所為だからでしょうか。目下調査中ですけどね」
 サテ。機械男がゆっくりとした動作で組んだ膝の上に掌を重ねる。その背後モニターには――いつの間にやらアシュレイと『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)の画像が映っていた。
「『大規模儀式』の存在、『穴を開ける』という目的。アシュレイ様がカルナ様にお伝えした情報でございます。
 詳細は不明ですが――おそらく。使うつもりなのでしょうな、『賢者の石』を。
 千堂様情報によればシンヤ様一派も動き出しているとか。
 ……フフ、そろそろお分かりですよね?」
 フォーチュナの不敵な笑み。頷くリベリスタ。

 『賢者の石が捜索できる様になった』
 『賢者の石が大量発生している』
 『アシュレイやシンヤ達が賢者の石を良からぬ事に用いようとしている』

 考えられる事は、たった一つ。

「皆々様! ――日本中に散らばった『賢者の石』という『賢者の石』を片っ端からゲットして下さい!!
 それこそが今回の皆々様の任務ですぞ。
 『賢者の石』をゲットすればするほどシンヤ様達の予定を挫けます。ダイレクト嫌がらせです。やるっきゃないですな。
 しかもそれだけじゃあなくって、アーク設備や装備のパワーアップが望めるかもしれんのですよ。一石二鳥三鳥ですな。
 …… と こ ろ が !!」
 メルクリィが人差し指を立てて言葉を区切る。
「『恐山』とアークが協定を結んでる事はもう御存知でしょう。で、千堂様は新たに『逆凪』『剣林』『三尋木』とも話を通したとか。
 この三派は我々の友軍です、一緒に『賢者の石』を探してゲットしてくれます が どっこい『戦力拠出についての協定と利益配分の協定』はこの三派とはナシ、つまり彼らは『自組織に賢者の石を齎す事』しか考えません!
 指揮系統も別、信頼は危険、でもアークとはお互いに不可侵の立場――はい、ぶっちゃけ『対抗相手』ですぞ!
 ……とは言え……今回の依頼にこの三派は関係ないんですけどね。フフ。
 取り敢えずまぁ、私が『視た』モノをご覧いただきましょうか。百聞分は一見に如かずですし。
 ブイティーアール、キュー! ですぞ。」

●進撃、進軍!
「う~ん……」
 ズシーン、ズシーン。
「シンヤさんはここに『賢者の石』があるって言うてはったけどぉ……」
 ドシーン、ドシーン。
 ドシーン、ドシーン。
「あぁもぉ、ウチ探しモン苦手やのにぃ。もぉぉシンヤさん、最近イラチでかなわんわぁ~……」
 地響き、重量、ヤレヤレと溜息。
「いらん奴なんか、ウチらがナンボでも潰したんのにな。なっ、ダンマークちゃん達?」
 瓶底眼鏡の童顔を笑ませて、少女は巨大ゴーレムの頭の上。武骨な金属頭を撫でれば、ぐぉーんと返事をする巨大異形が二体。
 くすくす、咽の奥で笑った。
「ほなちゃっちゃと探しましょっか! 早ぉ石見つけて家帰って飯食て寝よ。あとシンヤさんにお給料たかったろ」
 手には巨大で巨大な拳銃、巨大ゴーレムの上、ゴーレムの腕にも銃砲、銃砲。
 地響きを鳴らして暴君達は闊歩する。

 その目は寧ろ――賢者の石を探していると言うより、それを探して現れる者を狙う禍睨であった。

●ウチヌク。
「ハイ、と言うワケでして」
 モニターからリベリスタ達へ視線を戻したメルクリィが言う。
 その背後モニターには四腕の巨大ゴーレム二体と、その片方の頭部にチョコンと乗ったフライエンジェの少女。
 少女の手には巨大な拳銃、ゴーレムの腕と腹には武骨なガトリング砲が。
 その火力、威力、制圧力、破壊力……見るからに明らかであろう。物々しさ。暴力。黒く黒く、銃口は辺りを睥睨する。
「『暴君戦車』ガンヒルト・グンマ……フライエンジェ×スターサジタリーの女性で、後宮シンヤ様の精鋭であるフィクサードですぞ。
 マイペースさんな気性ですが、超絶好戦的で執拗、残虐、執念深いバトルマニアさんです。
 決して侮ってはいけませんぞ、彼女の腕は本物です。独自技に加え、その所有武器――アーティファクト『パンツァーテュラン』、このバカデカい拳銃なんですが、爆発する強力な銃弾を発射しますぞ。通常攻撃にショック、ノックBを伴う場合がございます。
 ……正に火力は『戦車』、ですな。お気を付け下さいね」
 次に、と機械の指が示したのはガンヒルトが乗っている超大型のゴーレム。更に同型がもう一体。ぐぉーんと唸っている。一歩の度に地響きが鳴る事から身形に似合った相当な重量があるのだろう。ウッカリ踏まれでもしたら……。
「フフ、今から説明しますとも」
 思考を読んだかの様なフォーチュナの一言、視線を彼に戻せば早速と説明を始めた。
「E・ゴーレムフェーズ2『ダンマーク』。数は二、アシュレイ様謹製のエリューションですぞ。
 武器はご覧の通り四つの腕と腹のガトリング砲、兎に角弾丸を撒き散らしまくる恐るべき移動砲台ですな。
 勿論、殴られたり蹴られたり踏まれたりしても痛~いですぞ。
 攻撃も耐久力もブッチギリ……ただの力押しでは……勝算は、低いですな。
 ですが! ――お忘れなく。皆々様の目的は『ガンヒルトとダンマーク達の討伐』ではないのです。マトモに戦ってやる必要なんかこれっぽっちもないのです」
 メルクリィの目に真剣な色が宿る。組んだ手指の奥にいつもの調子は無い。低い声がブリーフィングルームに響く。
「……ハッキリ言っときます。『彼らとマトモにぶつかったらタダじゃ済みません』。全員無傷、五体満足、ストレート勝ちとか完封とか、相当難しいです。
 皆々様の任務は『シンヤ様派である彼らより先に賢者の石を手に入れる事』です。
 いいですか? しっかり話し合っておいて下さいね」
 メルクリィが言い終えた瞬間、モニターが切り替わった。廃墟となった遊園地――ここが今回の戦場なのだろう。
 枯れた雑草がアスファルトを突き破って茫々と広がっている……朽ちた遊具、錆びた其処彼処、転がるゴミに落書きの跡。寂寞としていた。
「『賢者の石』はこの郊外にある廃遊園地の何処かにありますぞ。
 ……何処かって何処だ、って? 申し訳ございません。そこまでは……視えませんでした。
 ですが『在る』のは事実で現実で真実です、ご安心あれ。
 時間帯は昼下がり、一般人は来ないでしょーな。
 ――説明は以上です。よろしいですか?」
 フォーチュナがリベリスタ達を見渡した。頷く彼らに対し彼は小さく「心配なんですからね」と呟く。
「……心配なんですからね」
 もう一回だけ、溜息と共に呟いて。

「ではでは! お気を付けて行ってらっしゃいませ。
 どうかご無事で。どうかどうかご無事で。……応援しとりますぞ!」



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ガンマ  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年11月27日(日)22:43
●目標
賢者の石をアークが取得する

●登場
フィクサード『暴君戦車』ガンヒルト・グンマ
 フライエンジェ×スターサジタリー。後宮シンヤの精鋭であるフィクサード
 瓶底眼鏡におさげの少女。ただし実年齢は不明。マイペースさん。超絶好戦的で執拗、残虐、執念深い。
 因みに、『シ_ン_ヤ ̄さ ̄ん_』
 武器はアーティファクト『パンツァーテュラン』
主な戦法:
 スターサジタリー初~中級スキル
 Ex:ミッドナイトマッドカノン(神秘、状態異常付き)
 非戦スキル:ハイバランサー、面接着、イーグルアイ、超直観 の内二つを活性化

アーティファクト『パンツァーテュラン』
 巨大な禍々しい拳銃。爆発する強力な銃弾を放つ。
 通常攻撃にショック、ノックBを伴う

E・ゴーレムフェーズ2『ダンマーク』×2
 アシュレイ謹製のエリューション。鋼鉄と銃器が寄り集まった様な四つ腕の巨大ゴーレム
 全腕がガトリング砲に異形化しており、腹部からもガトリング砲が突き出ている
主な戦法:
 弾丸を撒き散らす。全体。
 腕を振り回す。近接範囲。ノックBを伴う場合あり
 蹴っ飛ばす。近接複数。ノックB、ショックを伴う場合あり
 踏み潰す。近接単体。必殺を伴う場合あり

●場所
 郊外の廃遊園地。広い。朽ちた遊具や雑草、落書き、ゴミが茫々とある
 時間帯は昼下がり。一般人は来ない

●その他
 ガンヒルトとダンマーク達は既に廃遊園地内にて賢者の石を捜索中です
 賢者の石は廃遊園地の何処かにあります

●STより
 こんにちはガンマです
 当作では二回目のハードモード。皆様の本気をお待ちしております。

参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
大御堂 彩花(BNE000609)
デュランダル
源兵島 こじり(BNE000630)
デュランダル
イーシェ・ルー(BNE002142)
スターサジタリー
★MVP
坂東・仁太(BNE002354)
プロアデプト
酒呑 ”L” 雷慈慟(BNE002371)
ホーリーメイガス
エリス・トワイニング(BNE002382)
クリミナルスタア
桐生 武臣(BNE002824)
プロアデプト
ジョン・ドー(BNE002836)

●過去形テーマパーク
 昼下がり。雑草。がらんどう。
 X年前の残滓に過ぎないのである。

「賢者の石ですか」
 遊園地売店のドアノブを大御堂式複合兵装機甲「戦手」が掴むや否や、熱した飴を扱うかの如く容易く捩じ切った。
 あの石には正直興味が無い。なので気の利いたコメントが出せそうにない。されど任務は任務。請けた以上必ずや完遂を。
 埃だらけの荒れ果てた室内に黒髪を靡かせて足を踏み入れたのは『高嶺の鋼鉄令嬢』大御堂 彩花(BNE000609)、すぐ足下に散らばっていた色褪せた園内案内の地図を拾い上げてその埃を軽く払う。広げて地形を脳内に叩き込む。
 アークと大御堂重機械工業株式会社は一蓮托生。アークも我が社も潰れさせてなるもなか。
(こっちは石ころ以前に人生掛かってるんです……!)
 地形を記憶したところで彩花はきっと顔を上げた。そのまま辺りを見渡して賢者の石を探すが――無いようだ。色褪せ埃を被ったグッズしか散らばっていない。
 と、なればこの地図を頼りに虱潰しに探して行くしかない。地図の現在地にマーキングしながらAFを取り出した。
 仲間達へ告げるのは己が現在地と石が見つからなかった事、仲間達から告げられるのは彼等の現在地とやはり未だ石を入手していない事。
「――over」
 通信終了。『無何有』ジョン・ドー(BNE002836)は事前にアーク経由で入手した簡素な配置図を手に冷えた風の吹き抜ける一帯を見渡した。
 自分達の障害となるのは厄介かつ強力なフィクサードとE・ゴーレム。それらを食い止める囮役の仲間達の為にも速やかに賢者の石を入手せねばならない。
 モノクル越しのアルビノアイを細める。目的物を探すべく、超越した第六感を研ぎ澄ませた――

 お仕事とありゃきっちりこなしてしっかり報酬いただくぜよ。
「弾幕勝負もしてアーティファクトゲットー! も、してみたいけんど……」
 用心深く、油断せず。錆び褪せた園内案内板を前に坂東・仁太(BNE002354)は通信終了したAFを仕舞い込む。彼は彩花、ジョンと同じく『賢者の石捜索班』の一人であった。
(痛いん嫌やし逃げてさっさと賢者の石見つけて帰るぜよ)
 アームキャノンを構え直す。もしかしたら賢者の石の魔力に雑多なエリューションが集まっているかもしれない、と仁太は思っていたがどうやらその心配はなさそうだ。が、錆びた廃墟の物陰や藪の中や……胡乱な何かが居る気がしてならない。極限の緊張の所為か、落ち着かねば。空を仰ぐ。
 普通に探して易々と見付かる筈がない――賢者の石のエリューションを惹き寄せる魔力。自分だって革醒者だ。
 感じるままに、惹かれるままに、己が勘と運を信じて歩き出す。
 こんなチャランポランな自分を、仲間達は「ただの運任せの博打」と呆れるだろうか?……それでも仁太は決して歩みを止めない。迷わない。躊躇わない。

 単なる運を必然に変える。それこそが運命。

「わっしは自分の運命を信じることにするぜよ」

 そして、その直後であった。
 ズシーン、ズシーンと、遙かから地響きが轟いてきたのは。銃声が鳴ったのは。照明弾が輝いたのは。

●暴君タイラント破壊兵器
 園内のメインストリート。布陣するは五人。

「賢者の石っスか」
 先祖伝来の鎧の奥。『守護者の剣』イーシェ・ルー(BNE002142)の碧眼が彼方を見据えた。
 その手に構える剣が、盾が、昼下がりの薄い光に凛とした輝きを放つ。
「お伽話の世界の物ッスよね。確かに崩界の速度が早まっている感じがするッスね」
 まあ、自分は自分の仕事をキッチリこなすのみ。
「頑張るッスよ」
 絶対に退けない。遥かから真っ直ぐ向かってくる地響きを真っ正面から見澄まして――超直感によるものか、あるいはイーグルアイによるものか、と敵の技能を推測しながら。
「これ以上崩界を進めさせる訳にはいかん。まずはそのキッカケ――その為であれば捨石にだってなってみせよう」
 超越集中。活発なニューロン。それでも尚と集中に集中を重ねている『生還者』酒呑 雷慈慟(BNE002371)がゆっくりと閉ざしていた瞼を上げた。それと同時に機械化した手を虚空に翳してARM-バインダーを展開する。
 自分達は『囮』。仲間の為に、作戦の為に、自ら危険に立ちはだかる壁、城門、要塞。
 喰い止めてみせる。時間を稼いでみせる。
「フィクサードに……E・ゴーレム2体。強力すぎる敵だけど……何とかしのぎきらなくちゃ……」
 雷慈慟と同じく後衛に位置するエリス・トワイニング(BNE002382)は周囲のマナを呼吸の様に己が脈へと摂り込んでゆく。高められる魔力、近付いてくる振動、セファー・ラジエルを開いて静かに深呼吸を一つ。
 静けさは、平穏は、確実に失われつつあった。
 一陣の乾いた風に背負った赫華が靡く。紫煙が溶ける。
「喧嘩はキライじゃねぇ、が……」
 言葉は吐き出す煙と共に。今回の役目は相手を阻む事。桐生 武臣(BNE002824)は煙草を落として踏み潰し、それにしてもと剣を片手に薄く口角を擡げた。
「あっちはこっそり探すつもりなんざねぇな」
 見えてくる巨影。地響き。轟く。二つ。
 遠くからだと言うのに禍々しい視線は確かにリベリスタ達を舐め回していた。
 それに対し露骨な溜息を吐いたのは『毒絶彼女』源兵島 こじり(BNE000630)、呆れた半目で仲間達を見渡すなり――「正直、やる気しないのよね」、踵を返す。
「サラリーばかりって事よ。言われた事だけすれば良いって言う。それに元々キャラじゃないのよ、予定調和だとか、仲良しこよしだとか。
 と言う訳で、私、帰るわ――God bless you」
 なんて、驚く仲間を知らん顔して一歩、二歩。
「面倒臭いのよね、こういうの」
 幻視纏いから流鏑馬を装着して、三歩、四歩。

 爆砕戦気。
 瞬間に振り返る。
 発砲、貫通力を増した魔弾。
 フィクサードに撃ち落とされたけれど。

「……ま、そんな事は出来ないでしょう? 帰らないわよ、付き合ってあげる。
 あいつらぶっ飛ばせば悠々探せるでしょう?」

 こじりが言うその最中にも地響きは、地響きは。一歩は遅いが一歩がバカでかい。
 ケタケタケタ、暴君戦車の笑い声が聞こえる距離にまで。

 ――巨大な敵。なんて巨大な、圧倒的な、暴力的な。

「あっはァーー見付けた見付けた見ィ付けたァアア!」
 ゴーレムの上、パンツァーテュランを構えるガンヒルトが身構えるリベリスタ達を見渡した。知っとるよ、エリスとこじりを特に見て。
「トワイニングちゃん! 源兵島ちゃん! 知っとるよー、アークからわざわざウチに会いに来てくれたん?」
 どうやら二人の名声はガンヒルトの耳にまで届いていた様だ。エリスがカクリと首を傾げる。
「馬鹿と何とかは……高いところが好きと……言うけれど……ああ、何とかと……煙だったかな?
 そう言えば昔の映画に……馬鹿が戦車でやってきた、なんて有ったけれど……この場合、馬鹿がゴーレムで……やってきたとか?」
「アッハ! えらい容赦無いな~ハハっ。
 馬鹿でエェやん? 馬鹿の方が楽しいやん? 踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら~ってあるやん?」
 真正の気狂い、とでも言うべきか。話が通じるような相手ではないらしい……これで探索班に戦闘開始と戦闘場所が大体伝わるだろう、と空に照明弾を打ち上げつつ武臣は思う。だが言うのはタダだ、それに一秒でも時間が稼げるかもしれない。
 ガンヒルトは空の照明弾へ目を向けている。へぇ、と呟いてから視線を無頼へ。彼は悠然と前へ出るやハッキリと告げた。
「……そのうち仲間がわんさとやってくる……いまのうちだぜ、逃げんならよ」
 照明弾を打ち上げた真意と、時間稼ぎを狙った戦闘の真意を少しでも隠せれば良いのだが。
「あはは逃げるワケないやんあははははは」
 答えは即答、そう来ると思った。いよいよもってダンマーク達が威嚇の様にぐぉーんと吼える。イーシェは兜を被り直して真っ直ぐガンヒルトを見上げて問うた。
「ところで群馬県との関係性はなんスか?」
「Gunhild・Gunma。Gun・Gun、鉄砲バキューンって感じや」
「ヘェーそうなんスか。教えてくれてありがとうっス」
「どーいたしま死ね♪」
 それは瞬間、気配さえ悟らせなかった早撃ち。
 咄嗟に盾で防御するも――まるで象の突進の様だ。着弾した弾丸は爆発となり爆風となり鎧少女を圧し遣る。
「よぉガードしたなぁアハハ名前は?」
「イーシェ・ルーっス。……この殺人狂め」
 兜の奥で不敵に笑む。強く地を蹴り、剣に全身のエネルギーを込めて吶喊する。
 十一の暴銃がリベリスタに向いた。気の遠くなる程の銃弾が発射されたが、被害が少ないのは雷慈慟の気糸の罠がガンヒルトの乗るダンマークを完全に縛り上げたからだ。
「無能な者が相手で助かる。撃破される為、無様にも闊歩してくれるのだからな」
 そこへイーシェがメガクラッシュで圧し遣り、武臣の超速斬撃が動けぬダンマークを圧倒する。が、
(堅い……!)
 見た目通りの堅さ。雷慈慟の気糸を振り解き、そのまま力任せに振り回された四つの腕が二人を吹っ飛ばす。全力防御したこじりを圧し遣る。
 最中にもリベリスタ全員へ雨の様に降り注ぐ銃弾、弾幕、暴君のケタケタ笑い、『狙って撃つ』よりも『恐怖を与える』が如く滅茶苦茶に火を吐くパンツァーテュラン。
「はは 全く考え無しの無能と呼ぶに相応しい対応だな」
 敵の射程外にて集中を重ね、雷慈慟は再びトラップネストを。ちょっと相手の射程内に入っただけで襲い掛かって来る猛射撃に内心を顰めながら。

 ガンヒルト達はリベリスタ達を倒すまで動く気はなさそうだ――それが幸いか。
 ならば一秒でも彼等をこの場に留まらせるのみである。

「そうそう相手はしてられねぇッス!」
 身を屈めて突進し、イーシェは渾身のメガクラッシュを叩き込んだ。ぐぉぉーん、ダンマークが吹っ飛ぶ、上に乗っていたガンヒルトは翼を広げてもう一体のダンマークの上へ。
 瞬間、こじりのピアッシングシュートが暴君を狙う。しかしダンマークの腕が壁となり届かない。
「危ないやろー!」
「うっさいわね、同じ銃器使いに負けるわけにはいかないのよ。戦うの、好きなのでしょう?」
 狙う。撃つ。こじりの狙いはガンヒルトのみ。
「せやー、めっちゃ好っきゃ」
 狙う。撃つ。ならばと狙うはこじりのみ。
「奇遇ね、私も、好きなのよ。良い友達になれそうなのに残念だわ」
 血に染まる。血に染まる。
 喰らい付く。フェイトを幾ら消費しようとも。
 立ち上がる。自分達の運命を信じて、何度でも。
 蹴飛ばされようと、殴り飛ばされようと、踏み潰されようと、何百発と撃たれようと。

「やーるなぁ、はは! ほな回復係から潰させてもらいましょっか!!」
 前衛陣をダンマークが蹴っ飛ばした直後、暴君がエリスへ禍銃を向ける。撃つ。詠唱中だったエリスの細い身体をまともに吹っ飛ばした――硝煙、地面に打ち付けられる身体。
 しかしエリスはセファー・ラジエルを手放さなかった。うつ伏せたまま運命を焼いてでも詠唱を続け、血だらけの唇で奇跡の歌を紡ぐ。癒しの福音が戦線を再構築する前衛陣の傷を癒す。
 立ち上がった。その精神力を雷慈慟が補給する。
「問題無い、思い切りやってくれ」
 極力相手の射程外に居る彼とて無傷ではない。ARM-バインダーに自信を護らせながら再び集中を高めてゆく。

 耳が痛い、永遠の銃声、地響き耳鳴り。
 何秒経った? 何分経った? あとどれくらい?
 一秒が永遠に感じられる。

「てめぇの銃弾の味もたいしたモンだ……」
 ごぼり。胸を貫いた銃弾に武臣の口から鮮血が垂れる。赫い羽織がまた染まる。
「げほッ……痛ぇし死にそうだ」
 それでも剣を地に突き倒れない。耐えられる。まだ耐えられる。耐えてみせる。仁義の赫を握り締めた。力を貸してくれ。
 目を開く。霞む意識を無理矢理フェイトで取り戻す。超速でガンヒルトのダンマーク背後を取った。

「簡単にやられたら……鬼の無頼と鳳の武人に笑われちまうんでな!」

 振るう、一閃。
 ダンマークの足が斬れる、ゆっくり、傾き――倒れた。
「あぁっダンマークちゃんが!」
 なんて言いながらもガンヒルトはもう一体のダンマークへ。倒れたダンマークは倒れながらも銃弾を滅茶苦茶に吐き散らすが、他の仲間が始末してくれるだろう。他の、仲間が――
「……ッ、」
 血だらけの仲間。力尽きた仲間。
「こんな所で、やられるわけには行かねぇッス……!」
 エリスを庇っていたイーシェの鎧は真っ赤に染まり、その足取りはふらふらと覚束ない。限界に近い。

 八人総力で挑んだら、もっと追い詰めていただろうか。
 だが――石の捜索どころではなくなっていただろう。五人で漸くダンマーク一体、それが答え。
 これが正解なのだろう。

 弾丸が襲いかかる。
 弾丸が襲いかかる。

「まだ……! 伏す訳にもいかんのだ!」

 撃たれた目玉を手で押さえ、フェイトで再構築しながら雷慈慟は気糸の罠を。

 弾丸が襲いかかる。
 弾丸が襲いかかる。

 0,000001秒でも長く、少しでも、一歩でも、食い止めてみせる。
 背負う運命が燃え尽きようとも。

●疾走せよ、失踪せよ
「賢者の石! 見っけたぜよ!!」
 嬉々とした仁太の声がAFから響いた。それから彼は捜索班二人と連絡を取り合い迅速に合流する。
「やりましたね……!」
「目標達成ですわね。逃げるが勝ち……一刻も早く囮班と合流しましょう」
 彩花はAFで囮班へ連絡を。こちら捜索班、目標達成――しかし。

 ザーーー。

 AFからは、ノイズのみ。
「オイ、何で返事が……あらへんねや!?」
「皆様、皆様ッ!? 応答して下さい、応答して下さいッ!!」
「――! 静かにッ」
 ジョンが二人を手で制する。彼の第六感は告げていた――暴君の接近を。
「最悪、やな」
 仁太は引き攣り笑いを浮かべた。巨影が接近してくる。ガンヒルトは遠くからこっちをハッキリ見ている。
 しかしダンマークは一体だけ、しかも傷だらけ。囮班の相当な尽力が見て取れた。感謝せねばならない。
 その時だった。
『――捜索班か?』
 AFから雷慈慟の声。疲弊しきった掠れた声。
「雷慈慟さん! ご無事でしたのね」
『すまない、全滅だ……』
「謝る事なんて……! こちらは賢者の石を発見しましたわ。そして今、ガンヒルト達が我々に接近していますの」
『!? ――今行く』
「いや」
 遮ったのは仁太だった。
「皆、もう十分すぎるほどわっしらの為に身を挺して頑張ってもろたんや。これ以上頑張らせるんは外道ってモンやで。
 ――ほな、園外で合流しましょ、わっしらは戦う必要なんてない。全力で逃げるだけやさかい任せてぇな」
『……分かった』
「お互い生きて笑って会いましょ」
『必ず』
 通信を終了する。
 必ず生きて、合流を。

 雷慈慟は辺りを見渡した。幸い、イーシェと武臣が意識を取り戻し且つ何とか歩ける状態。
 お互いを支え合えば、意識の無い者も含めて撤退できるだろう。
 声を掛け合い迅速に行動を開始する。

 必ず生きて、合流を。

(自分の仕事くらいは自分でやれる様にせんと、な)
 見遣る敵影はもう間近。いや、もっと速い。
 絶対に逃がすか、翼を広げて笑いながら高速一直線に飛んでくる暴君。
 行きましょう、ジョンの声と共に走り出す。
 交渉なんてできないだろう、直感した彩花はダミーの賢者の石を投げつけた。が、予想通り無視されてまう。
 彼女の狙いは、自分達なのだ。
 ガンヒルトがパンツァーテュランを向けた。
 仁太が走りながらアームキャノンを向けた。

 撃った。

 仁太の弾丸は大きく外れた。
 暴君の弾丸は仁太の頭を吹っ飛ばした。
 彩花達の表情が凍り付く。
 それでも狐の照準は、尚も真っ直ぐと。

 皆の恩に報いて、運命さえ歪曲させちゃるわ。

 それは覚悟。決して揺るがぬ覚悟。黙示録には至らぬも、限りなく零の確率を100にする奇跡。

「――ひゃっぱつひゃくちゅうじゃけぇ!」

 運命で死を焼き変えて、撃った。
 その弾丸は――上空から狙い澄ませていたガンヒルトの腕を、穿ち飛ばす。
「え」
 血。
 痛い。
 銃が無い。
 手が無い。 

「あ」

 絶叫。
 あああああ
 手が手が手が

「今の内やッ……!」
 落ちて来たパンツァーテュランを手に、仁太は仲間達と駆ける。
 絶叫を背に、駆けた。駆けた。駆けた。
 息が上がるのも気付かぬ程に。

●現在形テーマパーク外
 そして、八人全員の無事を確かめ合ったリベリスタは心の底から歓喜する。
 その手には真っ赤な石が、彼らを讃えるかの如く輝いていた。



『了』

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
メルクリィ:
「お疲れ様です皆々様、ご無事を何より嬉しく思いますぞ!
 ……ゆっくり休んで、体の疲れを取って下さいね。」

 だそうです。お疲れ様でした。
 如何だったでしょうか。

 MVPは仁太さんへ。熱くも仲間たちを気遣い感謝する優しいプレイングに感動致しました……!

 これからの依頼も頑張って下さいね。
 お疲れ様でした、ご参加ありがとうございました!

===================
レアドロップ:『パンツァーテュラン』
カテゴリ:アームズ
取得者:坂東・仁太(BNE002354)