●ケンジャの×× 「『賢者の石』――lapidis philosophorum。哲学者の石、万能薬(エリクサー)、錬金薬液(エリクシル)、染色液(テインクトゥス)。 卑金属を金へ、人間を不老不死へ。ご存知の方も多いかと思いますが、遥か古より語り継がれる伝説にして奇跡の魔石の事ですぞ」 そう言って事務椅子をくるんと回し振り返ったのは『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)。 いつもの様子。だが、瞳の奥には真剣さを孕ませて集まったリベリスタ達を見渡した。 「『賢者の石』はアザーバイドにしてアーティファクト、それ自体は周囲の物質や現象に増殖性革醒現象を齎しますが、本体そのものは直接的な崩界要因には成り得ません。 魔道技術の進歩や躍進に貢献してきた代物でこの世界との親和性が高いようでして――通常の調整で万華鏡の察知にかけるのは中々難しい、とは真白室長の仰っていた事なのですが。 取り敢えず、まぁ、ザックリ説明してゆきましょう。耳かっぽじってお聴き下さい」 と、メルクリィは視線で卓上の資料を示す。先日の依頼報告書のコピーだ。参考がてら目を通しておけとの事なのだろう。 「先日、アークのリベリスタ皆々様が『賢者の石』を入手しましたぞ、ってのはご存知ですね。 で、その『賢者の石』をアーク研究開発室の皆々様が調査なさいました。その結果――なーんと、『賢者の石』その波長と反応のパターンを割り出して万華鏡にフィードする事が出来たのですよ! つまり今まで視難かった『賢者の石』を楽~に視れるようになったワケですぞ。 ……しかも、何故か奇跡である筈の『賢者の石』が現在大量発生中。崩界が進んでいる所為だからでしょうか。目下調査中ですけどね」 サテ。機械男がゆっくりとした動作で組んだ膝の上に掌を重ねる。その背後モニターには――いつの間にやらアシュレイと『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)の画像が映っていた。 「『大規模儀式』の存在、『穴を開ける』という目的。アシュレイ様がカルナ様にお伝えした情報でございます。 詳細は不明ですが――おそらく。使うつもりなのでしょうな、『賢者の石』を。 千堂様情報によればシンヤ様一派も動き出しているとか。 ……フフ、そろそろお分かりですよね?」 フォーチュナの不敵な笑み。頷くリベリスタ。 『賢者の石が捜索できる様になった』 『賢者の石が大量発生している』 『アシュレイやシンヤ達が賢者の石を良からぬ事に用いようとしている』 考えられる事は、たった一つ。 「皆々様! ――日本中に散らばった『賢者の石』という『賢者の石』を片っ端からゲットして下さい!! それこそが今回の皆々様の任務ですぞ。 『賢者の石』をゲットすればするほどシンヤ様達の予定を挫けます。ダイレクト嫌がらせです。やるっきゃないですな。 しかもそれだけじゃあなくって、アーク設備や装備のパワーアップが望めるかもしれんのですよ。一石二鳥三鳥ですな。 …… と こ ろ が !!」 メルクリィが人差し指を立てて言葉を区切る。 「『恐山』とアークが協定を結んでる事はもう御存知でしょう。で、千堂様は新たに『逆凪』『剣林』『三尋木』とも話を通したとか。 この三派は我々の友軍です、一緒に『賢者の石』を探してゲットしてくれます が どっこい『戦力拠出についての協定と利益配分の協定』はこの三派とはナシ、つまり彼らは『自組織に賢者の石を齎す事』しか考えません! 指揮系統も別、信頼は危険、でもアークとはお互いに不可侵の立場――はい、ぶっちゃけ『対抗相手』ですぞ! ……とは言え……今回の依頼にこの三派は関係ないんですけどね。フフ。 取り敢えずまぁ、私が『視た』モノをご覧いただきましょうか。百聞分は一見に如かずですし。 ブイティーアール、キュー! ですぞ。」 ●進撃、進軍! 「う~ん……」 ズシーン、ズシーン。 「シンヤさんはここに『賢者の石』があるって言うてはったけどぉ……」 ドシーン、ドシーン。 ドシーン、ドシーン。 「あぁもぉ、ウチ探しモン苦手やのにぃ。もぉぉシンヤさん、最近イラチでかなわんわぁ~……」 地響き、重量、ヤレヤレと溜息。 「いらん奴なんか、ウチらがナンボでも潰したんのにな。なっ、ダンマークちゃん達?」 瓶底眼鏡の童顔を笑ませて、少女は巨大ゴーレムの頭の上。武骨な金属頭を撫でれば、ぐぉーんと返事をする巨大異形が二体。 くすくす、咽の奥で笑った。 「ほなちゃっちゃと探しましょっか! 早ぉ石見つけて家帰って飯食て寝よ。あとシンヤさんにお給料たかったろ」 手には巨大で巨大な拳銃、巨大ゴーレムの上、ゴーレムの腕にも銃砲、銃砲。 地響きを鳴らして暴君達は闊歩する。 その目は寧ろ――賢者の石を探していると言うより、それを探して現れる者を狙う禍睨であった。 ●ウチヌク。 「ハイ、と言うワケでして」 モニターからリベリスタ達へ視線を戻したメルクリィが言う。 その背後モニターには四腕の巨大ゴーレム二体と、その片方の頭部にチョコンと乗ったフライエンジェの少女。 少女の手には巨大な拳銃、ゴーレムの腕と腹には武骨なガトリング砲が。 その火力、威力、制圧力、破壊力……見るからに明らかであろう。物々しさ。暴力。黒く黒く、銃口は辺りを睥睨する。 「『暴君戦車』ガンヒルト・グンマ……フライエンジェ×スターサジタリーの女性で、後宮シンヤ様の精鋭であるフィクサードですぞ。 マイペースさんな気性ですが、超絶好戦的で執拗、残虐、執念深いバトルマニアさんです。 決して侮ってはいけませんぞ、彼女の腕は本物です。独自技に加え、その所有武器――アーティファクト『パンツァーテュラン』、このバカデカい拳銃なんですが、爆発する強力な銃弾を発射しますぞ。通常攻撃にショック、ノックBを伴う場合がございます。 ……正に火力は『戦車』、ですな。お気を付け下さいね」 次に、と機械の指が示したのはガンヒルトが乗っている超大型のゴーレム。更に同型がもう一体。ぐぉーんと唸っている。一歩の度に地響きが鳴る事から身形に似合った相当な重量があるのだろう。ウッカリ踏まれでもしたら……。 「フフ、今から説明しますとも」 思考を読んだかの様なフォーチュナの一言、視線を彼に戻せば早速と説明を始めた。 「E・ゴーレムフェーズ2『ダンマーク』。数は二、アシュレイ様謹製のエリューションですぞ。 武器はご覧の通り四つの腕と腹のガトリング砲、兎に角弾丸を撒き散らしまくる恐るべき移動砲台ですな。 勿論、殴られたり蹴られたり踏まれたりしても痛~いですぞ。 攻撃も耐久力もブッチギリ……ただの力押しでは……勝算は、低いですな。 ですが! ――お忘れなく。皆々様の目的は『ガンヒルトとダンマーク達の討伐』ではないのです。マトモに戦ってやる必要なんかこれっぽっちもないのです」 メルクリィの目に真剣な色が宿る。組んだ手指の奥にいつもの調子は無い。低い声がブリーフィングルームに響く。 「……ハッキリ言っときます。『彼らとマトモにぶつかったらタダじゃ済みません』。全員無傷、五体満足、ストレート勝ちとか完封とか、相当難しいです。 皆々様の任務は『シンヤ様派である彼らより先に賢者の石を手に入れる事』です。 いいですか? しっかり話し合っておいて下さいね」 メルクリィが言い終えた瞬間、モニターが切り替わった。廃墟となった遊園地――ここが今回の戦場なのだろう。 枯れた雑草がアスファルトを突き破って茫々と広がっている……朽ちた遊具、錆びた其処彼処、転がるゴミに落書きの跡。寂寞としていた。 「『賢者の石』はこの郊外にある廃遊園地の何処かにありますぞ。 ……何処かって何処だ、って? 申し訳ございません。そこまでは……視えませんでした。 ですが『在る』のは事実で現実で真実です、ご安心あれ。 時間帯は昼下がり、一般人は来ないでしょーな。 ――説明は以上です。よろしいですか?」 フォーチュナがリベリスタ達を見渡した。頷く彼らに対し彼は小さく「心配なんですからね」と呟く。 「……心配なんですからね」 もう一回だけ、溜息と共に呟いて。 「ではでは! お気を付けて行ってらっしゃいませ。 どうかご無事で。どうかどうかご無事で。……応援しとりますぞ!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年11月27日(日)22:43 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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