●序 『Ripper's Edge』後宮シンヤ(nBNE000600)の私兵、如月ユミとの激戦を制し、リベリスタたちが持ち帰ったもの。 それは『賢者の石』――歴史の影で魔道技術の進歩や躍進に貢献してきた存在であり、この世界との親和性が高い代物だった。 アザーバイドであり、同時にアーティファクトでもあるこの石そのものが、直接的な崩界要因とは成り得ない。 だが石は周囲の物質や現象に増殖性革醒現象をもたらすことで、大きな変革をもたらすのだ。 『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)がシンヤに囚われてる間、彼自身と『塔の魔女』アシュレイ・ヘーゼル・ブラックモア(nBNE001000)との対話で得た情報は、事態を深刻なものだと認識させるに十分足りた。 アシュレイの話す『大規模儀式』の存在、『穴を開ける』という目的から、彼等が単に研究の為に賢者の石の獲得を目指しているとは到底考えられない。 幸い、恐山会の『バランス感覚の男』千堂遼一(nBNE000601)から情報提供を受け、リベリスタたちの持ち帰った石の解析を進めた結果。万華システムでの探知位が可能になった。 立ち塞がる障害を、敵を、罠を、手持ちのリベリスタで薙ぎ払うための一斉動員をかける。 ――彼らより先んじて『賢者の石』を回収すると、アーク本部は決断したのだった。 アークと後宮派の激突。それとアークに協力を申し出てきた他派のフィクサードたち。 彼らの狙いも、同じく石の確保だと容易に想像できる。 相互に不可侵な状況でも、決して油断できない存在となるだろう。 『賢者の石』を巡る戦いが今、各地で幕を開ける――。 ●依頼 「『賢者の石』のひとつが、位置を特定できたの。横浜の古い雑居ビルの最上階の金庫の中」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、集まったリベリスタたちへと話を切り出す。 「依頼内容は、石の確保。これが最優先だけど、回収に来る後宮シンヤの兵隊たちの撃退も必要」 石自体の大きさはそれ程大きいものではないことから、精鋭たちが回収しに来るほどではないと判断したのだろうか。 フィクサードの数は10数人といったところで、何れもここにいるリベリスタたちと同程度の能力を有している。 単純に考えれば数が少ない分、厄介な相手になるはずだが、この7階建ての雑居ビルが状況を有利にも不利にもできた。 最上階までの移動が可能なのは、エレベーターが1基とビル内部の狭く細い階段、それと裏手についた外部から丸見えの非常階段しかない。 加えて両方の階段の幅は非常に狭く、誰かが一人階段で立ち塞がれば、他の者が脇を通り抜けるのは難しい。 更に建物の下層階はテナントで人の出入りがあり、常時無人なのは五階と六階のみ。 隣接している建物は何れも一般住居で高さがなく、他の建物から移動してくることはまず不可能。 一般人に目撃されないよう騒ぎを避けたいのは相手も同様なので、戦い方を考慮すれば十分今の戦力で立ち向かえるだろう。 「石には持ち主がいる。ここにひとりで住んでる、お婆さん」 名前は萬田とみ(まんだ・とみ)。このビルのオーナーでもある。 夫とは11年前に死別していて、家族はいない。石自体はその日の朝、かつて亡くなった夫が世話していた屋上のガーデンで偶然見つけたものらしい。 11年前と聞いて、リベリスタの何人かが気づいたような表情で視線を交わす。 「そう。このお婆さんの亡くなった夫は、『ナイトメア・ダウン』で亡くなったリベリスタなの」 普段は感情を感じさせない色違いの双眸からは、少しだけ陰りが見える。 「夫がリベリスタで多少の知識はあっても、お婆さんは一般人。だから今夜侵入したシンヤの兵隊たちに脅され、無理やり金庫を開けさせられてから殺される……ビルも原因不明の火災で消失するの」 言葉と同時に万華システムから流れる映像は、いつも残酷な未来を提示し、リベリスタたちに言い様のない不安を感じさせた。 「……これが本来、起こり得る未来」 映像を止めたイブは、再び視線をリベリスタたちに向ける。 こうさせないための、自分たちなのだという認識を新たに植えつける効果もあった。 「回収と撃退の手段は任せるけど、他の一般人たちに私たちの存在は気づかれないよう、細心の注意を払って」 ●承前 横浜。雑居ビルのとある一室。 「あの人……まだ出張から帰ってきてないのね」 とみは溜息混じりに自室へ戻ってきて溜息を吐き、ふと視線を部屋の隅にある金庫へと向けた。 「そろそろ半年分になる家賃、回収しないとねぇ。困ったわぁ……」 五階の住人の家賃滞納にうんざりしたように呟きながらも、無意識に身体は金庫へと向かい、扉を開けて中にある小さな宝石ケースを手に取る。 「ねぇ、あなた……どう思う? あの人、悪い人ではないんだけどねぇ……?」 とみはケースを開け、今朝拾ったばかりの赤く輝く宝石をジッと見つめ、まるでいなくなった夫であるかのように、静かな口調のまま語りかけた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ADM | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年11月27日(日)22:30 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●説得 横浜市、市街地から少し外れた雑居ビル――。 夜。出入りの少なくなったこのビルの手前には、アルジェント・スパーダ(BNE003142)と『敬虔なる学徒』イーゼリット・イシュター(BNE001996)の姿があった。 二人は監視役として、周囲にフィクサードがいないかを確認している。 一方、残ったリベリスタ達は最上階の萬田とみ(まんだ・とみ)を尋ねていた。 現れたとみへとお辞儀する『粉砕メイド』三島・五月(BNE002662)は、持っていたアクセス・ファンタズムを開き、自分達とアークの事を手短に紹介する。 突然の訪問にも関わらず、リベリスタ達はとみによって応接室へと通されていた。 落ち着いた感じの和室。ビル内にも関わらず部屋は居心地の良い木々の香りに包まれている。 『ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)は部屋の奥にあった仏壇を見て、その前に立つと静かに手を合わせた。 「偉大な、先達に……感謝と、挨拶を……」 黙祷する彼女の胸に去来するのは、ナイトメア・ダウンで散った戦士への敬意と憧憬。 とみはやってきた全員に、ゆったりとした仕草でほうじ茶を手渡していった。 最後に部屋に入った『七つ歌』桃谷七瀬(BNE003125)は、微笑して小さく頭を下げ、お茶を受け取る。 彼の発する柔らかで温和な雰囲気に、緊張が和らいだとみは優しげな笑顔を返した。 「それで……皆さんはどんな御用なのかしら?」 本題を尋ねたのに合わせ、『積木崩し』館霧罪姫(BNE003007)がお茶を受け取りながら答える。 「始めまして、私はリベリスタの罪姫さん。突然だけど今日このビルは放火の被害に合うの」 罪姫からリベリスタと自己紹介され、とみは少し哀しげな表情を浮かべた。 「そう。貴方達、リベリスタなの……放火って?」 少しばかり不安を感じた様子で、とみは聞き返す。 『雇われ遊撃少女』宮代・久嶺(BNE002940)と『ぜんまい仕掛けの盾』ヘクス・ピヨン(BNE002689)が、真夜中に現れる侵入者達の狙いや行動、『賢者の石』についてを順に説明していった。 大体の話を終えた所で、七瀬が真剣な表情でとみに願い出る。 「その石が敵の手に渡れば、旦那さんと同じ道を辿る方が出るかもしれない……お願いです。その石を僕達に預けて下さい!」 とみは七瀬の願いに、考えた表情でしばし沈黙した。 年端も行かないこの子供達が、自分を騙そうとしているとは到底考えられない。 リベリスタが常人には計り知れない能力を有しているのは、30年以上も連れ添った夫をずっと側で見て理解しているつもりだった。 だからこそ、余計哀しく思う――この子達もいつか夫と同じ様に抗えない脅威と戦い、死に逝く運命にあるのかもしれない。と。 「……わかりました」 小さく頷いて答えると、とみは別の部屋から小さな宝石ケースを運んで来る。 丁重にテーブルの中央へとケースを置き、その中にある楕円形の石へと一行の視線が集中した。 小さく赤い輝きを放つ石を見て、静かな溜息を吐いた五月は、とみへと改めて向き直る。 この厄介な石の為に、犠牲になる所だった老女を護らなくてはならない。五月はそう決意していた。 「私たちに貴女を護らせてください」 ●攻防 普段はこの時間、ビルの2階では『SEVEN SEAS』という名のBARが営業を続けている。 だがBARのシャッターは下げられていて、照明も灯ってはいない。 天乃がとみを連れてBARへ行き、ガスの修理が終わるまで店を閉めて欲しいと願い出、とみとリベリスタ達を残してビル内は無人となっていた。 へクスは『賢者の石』を胸に隠し、とみの護衛としてエレベーターに篭城する。 エレベーターは五月の提案で電源を落としてあり、7階で固定されていた。 『賢者の石』を口に含むのは少し大き過ぎたが、いざとなれば飲み込んででも強奪を阻止しようと考えている。 準備の終えたへクスを見て、久嶺は明るく声をかけた。 「とみさん、頼んだわよ!」 「えぇ、任せてください」 へクスの返答を受けてから、彼女は裏手の非常階段へと回る。 事前に購入したローションを階下へと巻きながら、自身は6階へと向かった。 そこには既にBARとの交渉を終えた天乃と罪姫、外で待機していたアルジェントが待機している。 一方、ビル内に残った五月と七瀬は階段の6階へと降り、同じく外にいたイーゼリットがそれに合流した。 イーゼリットは結界を唱え、周囲の人払いを済ませると肩をすくめる。 「石を手に入れて、それで終り……という訳には行かないものね」 呟いた彼女は、静かにフィクサード達の到着を待つ。 ビルへと近づいてくる集団を最初に気がついたのは、非常階段で待機していた天乃だった。 足音の数は全部で18人。少し離れた位置でビルの様子を伺っている。 その内の9人がビル正面側、6人が非常階段側へと駆け寄って来ていた。 更にビルの屋上へと向かう3つの羽音と壁を走る音、だが自分達のいる位置の真裏を移動しており、視界内に姿は見当たらない。 聞き取った音の数を、彼女はアクセス・ファンタズムでビル内部の仲間へと知らせる。 屋上の敵は予想してたよりも数が多く、ヘクス一人で対応するには少し厳しいと天乃は判断した。 そこで非常階段を罪姫達に任せ、彼女は壁を駆け上がって上階の迎撃へと向かう。 天乃が去ったのと入れ替わる様にして、地上へ現れた敵達はそれぞれ散会し、壁や階段を遮蔽にしながら一斉に6階へと銃撃を浴びせてきた。 アルジェントが素早く反応し、罪姫と久嶺を両手で掴んで下がり、階段と手摺を盾にして銃弾を防ぐ。 両手にオートマチックを構えた彼は、足を狙った早撃ちで敵の動きを止めようとする。 だが上から下にいる相手の足を狙うには、階段や壁の遮蔽が大きな障害となっていた。 「チッ……」 小さく舌打ちしたアルジェントは慎重に銃を構え直し、相手の動きに合わせて狙いを定める。 久嶺も同様に敵の足を狙うが、やはり遮蔽物が邪魔となって、なかなか思う様には当らない。 「ここから先は通さないわよ!」 久嶺は階下へと宣言しつつ、銃撃を部位狙いから切り替え、確実に相手を仕留めるチャンスを待つ。 更に思う様に行動できずにいたのが、本来前衛役となるはずの罪姫だった。 地上で敵が立ち止まってしまった上、自分達と相手との間には久嶺によって多量のローションが巻かれていて、不用意には前進できない。 やむなく仲間と同様に距離を取ったまま、罪姫はチェーンソーを抜き放って真空の刃を飛ばす。 「離れていても、罪姫さんが刻んであげる」 闘気を爆発させた罪姫の斬撃は、遠距離でも相手を斬り裂く威力を持っていた。 そこへ久嶺とアルジェントが重ねて射撃し、確実に敵を一体ずつ仕留める。 しかし普段の戦闘と違い前衛の存在しない射撃戦は、双方にダメージの蓄積を齎していた。 敵からの集中射撃を浴びたアルジェントがかなりの深手を負い、その場に倒れこむ。 それと引き換えに3人目のフィクサードが久嶺と罪姫によって倒され、敵は牽制をかけながら退却を始めていた。 「アタシの名前は宮代久嶺、よぉーく覚えておきなさい!」 久嶺は手傷を抑えながら、手摺にもたれ掛かる様にして逃げるフィクサードへと告げた。 色取り取りの花が咲くガーデンを中央に配置した屋上には、2人のフライエンジェとビーストハーフのフィクサード達が既に辿り着いている。 「簡単に、通しはしない」 天乃は下へと通じる扉の前に立ちはだかると、軽やかなステップで流れる様に金属製の爪を舞わせ敵を次々と切り裂いていく。 その切っ先の鋭さに舌を巻いたフライエンジェ達が慌てて後方へと下がり、ビーストハーフを前面に押し立て反撃へと転じる。 癒しの風の援護を受けた前衛が繰り出す幻影の刃と、後衛から飛んでくる魔力の矢の連携によって、天乃の体力はジワジワと削られていった。 ナイトクリークの彼女が3対1の状況で、しかも最前線で正面から戦って勝つ事。それは本来ならば難しかったかもしれない。 しかし天乃の体力が限界を迎えるよりも早く、出血によって癒しの風が追いつかなくなったビーストハーフがその場に沈んだ。 、前衛のいなくなったフライアンジェ達は魔炎を立て続けに放つと、そのままビルから撤退を始める。 撃退に成功したものの天乃の損傷が大きく、再度戦闘を継続する為には自己回復である程度の休息を要していた。 「厄介な状況……これはこれで、面白い」 ドアへと背中を預けたままの天乃は身体を休ませつつ、他の戦況を音から判断するべく意識を傾ける。 ビル内部に階段を駆ける音が響き渡り、武器を手にしたフィクサード達が次々と迫ってきた。 待ち構えていた前衛の五月が突撃してきた相手へと掌打を当て、爆発的な気を送り込んで最前列の進行を止める。 「『賢者の石』を手に入れる為の行動。その報いがどんなものか……この馬鹿共に教えて差し上げます」 立ちはだかる様にして構えを取る彼の後方から、イーゼリットが魔炎を放ち、後ろから押し寄せるフィクサード達を薙ぎ払う。 「お生憎様。そう易々と手に入れさせてあげると思う?」 言い放つイーゼリットの視線の先から、次から次へと敵からの剣が、拳が、銃が、矢が正面の五月へと押し寄せて来る。 後方にいた七瀬は度重ねて負傷する五月へと、常に癒しの歌を奏で続けていた。 「限り癒しの旋律をのせて、僕は歌う。僕は祈る――優癒祈歌!」 七瀬とイーゼリットは、最初に自身達の魔力を底上げしてから戦闘を始めている。 もしその準備を怠っていれば、七瀬の癒しより五月の負傷度合いが、イーゼリットの火力よりも五月への集中放火が、それぞれ上回っていただろう。 戦闘開始からしばらくの間、敵が突破を試みては五月が拳で防ぎ、イーゼリットが魔炎で後退させ、七瀬が全員を癒すという連鎖を繰り返して凌いでいた。 だが回復援護と全体攻撃を行う後衛のフィクサード達を、イーゼリットが優先的に集中して倒していったことから、事態は好転を始める。 「出来れば燃費を重視したいから、あまり乱発したくないの」 言いつつイーゼリットの放った四つの魔光は、敵に出血を伴う激しい傷を負わせ、戦況の膠着を防ぐ結果に繋がった。 また前衛の五月自身が体力を回復させて戦線を維持し続け、そこに七瀬の癒しの力が加わっていた事は大きな意味を持つ。 フィクサード達がどれ程攻撃を試みても、先頭で立ちはだかるメイドの動きに変化はない。 狙いを切り替えて火力の大きいイーゼリットを狙おうとしたが、度重なる負傷にも怯まずに果敢に反撃を続けてきた。 強引に突破しようものなら、五月から痛烈な炎の拳が叩き込まれ、追い討ちをかけるように後方からイーゼリットと七瀬から魔力の矢が飛んで来る。 「通してあげる訳ないでしょうに」 五月の表情に少し余裕が生まれたのは、敵の数が確実に減っていったことにより、ようやく先が見え始めていたからだった。 上からも下からも争う音が聞こえ始め、とみは恐怖でエレベーターの隅に縮こまる様にしていた。 いつ何処から現れるかわからない侵入者を、ヘクスは無言でジッと待ち続ける。 (何人束になっても、エレベーターに通じる穴を開ける事はまず不可能なんですからね……) 彼女はそう判断していた――ならば敵が現れるとしたら、正面から以外は考えられない。 やがて上階から、階段をゆっくりと降りる音が聞こえて来る。 両手の盾を翳してしっかりとガードを固めたヘクスの視界の先には、見慣れたツインテールの少女の姿が入ってきた。 「無事……?」 「ヘクス、助けに行くわよ?」 現れた天乃の声と、アクセス・ファンタズムから久嶺の通信が重なり、ヘクスはそれぞれに自分ととみが無事である事を伝える。 どうやら敵は全てエレベーターに辿り着く前に迎撃できた様だが、依然下の階からは激しい戦闘の音が続いていた。 手短に状況を知らせる通信がイーゼリットから送られ、それぞれが応援へと向かう。 ヘクスは依然エレベーターに残り、とみを護るようにして敵の奇襲に備えている。 屋上から天乃が、6階の五月達に合流した。 新手を見たフィクサードはそこで屋上部隊の敗北を悟り、その場から撤退を始めようする。 しかしそれを黙って見過ごすリベリスタ達ではなかった。 炎を纏った手甲を奮い、五月は先頭の敵を殴り飛ばす。 「……唯の赤い石ころだったなら、こんなことにもならなかったでしょうに」 彼が呟いたのはこの戦闘で傷ついたビルやとみを慮っての言葉。 後方からイーゼリットが魔炎を放ち、複数のフィクサードが焼き払われる。 「折角の計画を先回りされた貴方達に。くすくす」 勝利を確信した彼女の笑みは、その炎とは対照的な冷たさを滲ませていた。 その炎から逃れたフィクサードへも、七瀬の魔力の矢が追撃する。 「光集。突貫。聖性の光歌―――閃光聖矢!」 貫かれたフィクサードがまた一人倒れ、その数を減らす。 疲労した五月と入れ替わりに前線へと入った天乃は、残ったフィクサードを一掃すべく斬撃の舞いを披露する。 「意外とやる……」 思いの他に粘りを見せる敵へ少しだけ感嘆しつつも、その踊る爪先は確実に相手へ深い傷を負わせていく。 後列のフィクサード達はこれ以上の攻撃を断念して撤退を始めていたが、5階には先に回り込んでいた罪姫と久嶺が待ち構えていた。 驚きの表情を見せて立ち止まるフィクサードへ、残虐な笑みを見せる罪姫。 「罪姫さんの前に立ったんだもの。解体される覚悟はあるのよね?」 全身のエネルギーを溜めた二本のチェーンソーを巧みに操り、罪姫は正面の敵を切り刻む。 例え2本のチェーンソーを運良く耐え切っても、続け様に久嶺から急所へと早撃ちを決められ、抗うこともできずに沈んでいく。 「あっはっは、無様ね!」 為す術もなく倒れていくフィクサードへ、久嶺の嘲笑が飛ぶ。 各人の連携の取れた攻撃を浴び、挟撃されたフィクサード達は間もなく全滅した。 ●結末 罪姫と七瀬は重症を負ったアルジェントの回収と治療に向かい、イーゼリットは通信でアーク本部への報告を行っている。 天乃は振り返ると、残っていたリベリスタ達に声をかけた。 「後片付け、していく……」 彼女はスタスタと階段を降り、手早く後始末を始めている。 一方、エレベーターでは陽気な久嶺の声が響く。 「ヘクス、ほら、いつもの!」 久嶺は手を挙げて、ヘクスの方を見ていた。 「ハイタッチですか……好きですね……」 ヘクスも渋々ながら手を返し、二人はしっかりとハイタッチを交わす。 エレベーターから青ざめた表情で出てきたとみに、五月は小さく頭を下げた。 「お騒がせしてすみません」 謝る彼に、大きく深呼吸をしてから笑顔を返すとみ。 「いいのよ……護ってくれて、ありがとう」 それは偽りない、彼女からリベリスタ達への感謝の言葉。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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