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<賢者の石・争奪>Ring the Red Knell

●賢者の石
 アザーバイドにしてアーティファクトであり、魔道技術の進歩、躍進に貢献してきた代物。
 それ自体は崩壊の要因とはならない。しかしそれの周囲に影響を及ぼす属性を有する。
 この世界と親和性の高い魔性の赤い石。

 ある者は契約主の女を前に。
 ある者は数多の仲間を前に。
 ある者は信じる者たちを前に。
 それぞれに場を違え、たった一つ求めの矛は重なった。
「―――目標、『賢者の石』」

●三つ皿の天秤
 対如月・ユミチームが持ち帰った賢者の石をアーク研究開発室が調査。
 それらから判明した波長と反応パターンを割り出し、万華鏡にフィード。
「結果、『賢者の石』の反応が複数確認されました」
「複数?」
 ちらほら顔を見合わせるリベリスタ達に気付いてか、気付かずにか。
 『灯心』西木 敦(nBNE000213)は同年だと資料に聞く『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)の名を口にする。
「彼女の帰還によって得られた情報により――『塔の魔女』アシュレイ・ヘーゼル・ブラックモア(nBNE001000)達の目的は大規模儀式であり、穴をあけることにあるだろうと思われ、さらに賢者の石が件の大規模儀式に役立つ可能性が高い……と、推測されています」
 それ以上の一切は不明。推測の域でしかないが、推測に過ぎぬと一笑する者はいない。
 恐山会――『バランス感覚の男』千堂 遼一(nBNE000601)から後宮派が動き出したと報が入った今。
 魔女達の目的を思えば、研究に勤しむために賢者の石を求める姿は想像し難いものだった。
 奇跡のような代物であるはずの賢者の石が大量発生した理由もわかっていない。世界が急に不安定な状態になったこととの因果関係は現在調査中だと言う。
 ――ただ、『賢者の石』の力は確たる事実。
「複数確認された『賢者の石』をアークが獲得できれば、敵の目論見は崩れるはず。
 そしてアークの設備、装備の強化ができる可能性もあります」
 まさに背中合わせの好機と危機。
 張り詰める空気の中、配布された紙面の資料をめくる乾いた音が響く。
「目標、『賢者の石』。皆さんに、『賢者の石』獲得に向かっていただきます」

 反応が確認されたのは、森林に佇むとある教会の鐘楼。
 鐘楼は教会本体と別個にあり、枯れ葉の掃かれた一本道で繋がっている。
 背の高い樹がまばらに立つ森林は平坦で、鐘楼を木漏れ日が柔らかく照らす。
 鐘楼の下、石で出来た教壇の傍らに下がる鐘つきの紐が冷たい風に震える。
 樹に連なる葉はざわめき、澄んだ空は朗々と高く。道の脇に積もる枯れ葉は虚空に舞っていた。

「今回、恐山派以外のフィクサードがこの件に関して協力を申し出ています。
 皆さんの友軍は穏健派『三尋木』から、椋木・メイカ(くれき・――)率いる六名のチーム。
 注意事項として、恐山派以外の派閥とは利益配分協定が結ばれていません」
「それじゃあ狙いは賢者の石?」
 一人のリベリスタが眉を顰める。
 それに苦笑で肯定し、机の端に山積みにしたままのファイルに青眼を流した。
「……俺達と友軍の関係は相互不可侵。指揮系統も別ですし、お互い攻撃することもできない。
 あとはお察しの通りですが、友軍といっても期待はできません。むしろ警戒すべき存在です」
 資料の次のページをめくる。椋木・メイカ、女、ソードミラージュ。モズ、男、クリミナルスタア。
 つらつらと『友軍』の最低限の情報が綴られ、一文の伝達事項。
「後宮の指し向けてくる兵は獲得に向け、堅実に臨んでくるだろう」
「予測される数は三十。推測される編成は……そこそこ前のめりか?」
 リベリスタの口で紡がれた紙面上の言葉に首肯し、フォーチュナはリベリスタに向き直る。
「恐らく、あたるのは誰がトップだという認識のない集まりです。だからこそ厄介かもしれませんが……。友軍からの情報でも、名が割れているのは古暮・アキラ(こぐれ・――)というクリミナルスタアがいるだろうと。それくらいです」

 先は敵軍、友軍のフィクサード、そしてアークのリベリスタの三つ巴。
「どうぞ、友軍をうまく使ってください」
 躊躇なく橙髪のフォーチュナは言う。
 友軍に名乗りあげた彼らは漁夫の利を狙うのだろう、それにのってやる必要はないのだからと。
「俺としても皆さんが利用される側っていうのは嫌ですし。さらさら信用ならない友軍でも、彼らも皆さんと同じく力を持つ者。使い方次第で、皆さんの力になります。そうすれば、被害も抑えられるはずですから」
 一応であろうと友軍の形である以上、何らかの必要に迫られれば彼らも動く。
 それを上手く動かせられれば、状況の秤は箱舟のリベリスタに傾くのは明白。
「他にわかった情報は追って皆さんの手元に送信します。
 ……では、お気を付けて。無事に、帰って来てください」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:彦葉 庵  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 2人 ■シナリオ終了日時
 2011年11月28日(月)00:22
 争奪戦の一戦をお届けに参りました、彦葉です。
 ノーマルですが三つ巴は相応に厄介です。ご油断なく。

●任務
 リベリスタの手による『賢者の石』獲得

●舞台
 森林の中、教会の鐘楼。周辺に一般人はいません。
 木々の間隔は広めで、一本道以外には枯葉が積もっています。
 三派ともに鐘楼を中心にして同じ距離、それぞれ別方向からスタートだとお考えください。

●後宮派
 30名。古暮・アキラ以外はたいした強さではありません。
 古暮は性別不明、メンバー中唯一のクリミナルスタア。スキルはRank1~2のいくつか。
 他メンバーはクロスイージス・ソードミラージュを中心にホーリーメイガス、インヤンマスター、プロアデプトが数名ずつ。

●友軍
 6名。
 ソードミラージュ、ナイトクリーク、クリミナルスタア、ホーリーメイガス、マグメイガス、スターサジタリーが一人ずつ。
 スキルはRank1~2からいくつか。
 外れ者・モズが仕事を請け協力中。確実ではありませんが友軍へ『提案』等も可能です。

●賢者の石
 OP以外の情報は深紅蒼ST「ひとりでできちゃった!」、弓月可染ST「Nothing in Her Hand」のリプレイをご参照下さい。

 これより先の運命は皆様のもとに。
 どうぞよろしくお願いします。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ホーリーメイガス
来栖・小夜香(BNE000038)
プロアデプト
雪白 万葉(BNE000195)
インヤンマスター
アンデッタ・ヴェールダンス(BNE000309)
ホーリーメイガス
エリス・トワイニング(BNE002382)
マグメイガス
来栖 奏音(BNE002598)
クロスイージス
神谷 要(BNE002861)
ホーリーメイガス
ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)
クロスイージス
黒金 豪蔵(BNE003106)
■サポート参加者 2人■
デュランダル
東雲 未明(BNE000340)
覇界闘士
浅倉 貴志(BNE002656)

● 落葉の中
「後宮派、やっぱり足止めに来るかな」
「友軍側から、そろそろこっちにも後宮派が来るって連絡が来たわ」
 『墓守』アンデッタ・ヴェールダンス(BNE000309)が接近してくる音を頼りに後宮派の影を探り、連絡用端末を幻想纏いに収める来栖・小夜香(BNE000038)の声が答えた。
 会話の間にも休まない足は進み、教会から遠ざかり鐘楼に近付いて行く。
 踏みしめた乾いた葉はさほど苦にはならず、代わりに静寂の中に音が響く。
「なんか……面倒くさい……展開に……なりそう」
 後宮派、三尋木派、そしてアークの三派の集う舞台を駆けていく。
 小さな呟きの主である、エリス・トワイニング(BNE002382)のぴんと立った髪が揺れる。
 彼女の言う通り、賢者の石争奪に向け、三派の思惑と個々の思いが絡みあう戦場は厄介そのもの。
「……賢者の石」
 目指される目標の名をぽつりと零して唇を閉ざし、エリスは予感の発端を想起する。

 ――時は数時間ほど遡る。
 友軍となる『三尋木派』への提案――『超重型魔法少女』黒金 豪蔵(BNE003106)、『嗜虐の殺戮天使』ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)の両名が主だって進行させていた。
「私たちが合わさっても人数はあちらに及びませぬ。ここは協力するのが得策ではありませんかな」
『協力。具体的には?』
 機械越しの声は冷静で、既に人数・大まかな編成と共に後宮派の事を知っていた。
「私達が足並を揃えて、挟撃。まずは後宮派を殲滅しませんこと?」
『最小人数の俺達にはリスキーなお話だね』
「……では、貴方様方は6人だけで30人を倒せるおつもりですかな?」
『まさか?』
 煮え切らない。
 豪蔵とティアリアが眉を顰めたところで、一歩進み出たエリスが子機に向かい合う。
「後宮派排除に関しては……相互協力。優先的に、排除」
『ああ、この間の』
 映像はやりとりしていないが、エリスはこくりと頷く。
「それと、お互いに……賢者の石は……自由競争で入手」
「……いいね。できる限り、お嬢さん方に協力しよう」
 そのやりとりを最後に、カチリ、提案の幕が下りた。

「来たよ」
 葉を掻き分ける音がいち早くアンデッタの鼓膜を震わせる。
 片手で地図を広げた雪白 万葉(BNE000195)が、現在地と距離、そして後方を肩越しに確かめる。
「避け続ければ鐘楼から外れ、さらに前後に挟まれそうですね」
「では、凌ぎながら最短で急ぎましょう」
 万葉の隣で淡い光を纏い、ブロードソードが具現化する。
 柄を握った『不屈』神谷 要(BNE002861)が黒いコートを翻し、一足に飛ぶ。
「……猶予もありません」
 僅かに話す合間にも、あと数cmで互いの初手が届く距離に迫る。

 次の一歩を踏み出した時、気糸が銀糸を掠め、散らし。剣が風を切った。
 間隙無く気糸の後に続いた細剣を、『薄明』東雲 未明(BNE000340)が刀身で受け止める。
「すぐ追い付くから」
 鉄塊を弾き、未明は自身の体の制限を外す。
「ええ、お言葉に甘えますわ」
 浄化の鎧を未明に施したティアリアの背を担い、浅倉 貴志(BNE002656)が鐘楼に双眸を眇めた。
「……急ぎましょう」
 呟いた彼の背面で、まばゆい光が瞬く。
 来栖 奏音(BNE002598)の神気閃光が一帯を照らした。
「そ~れ! どぉ~ん! なのですよ♪」
 集中を交え移動を抑えていた彼女と、全力を移動に傾ける者達。
 その間を繋ぐリベリスタの姿もあったが差は開き、遅れて追いついた。
 後宮派が足止めを優先し、力を有するとは言え単独で襲われなかったのは幸運か、押し量った上か。 
「まぁ、最初が肝心とも言いますし♪」
 立ち上がるフィクサード達に向かい、未明の大剣が唸る。前面に出たソードミラージュを大きく跳ね飛ばす。
 一人目の沈黙。浅くなった呼吸を整え、剣を構え直し紫の瞳が細められる。
「あと三人なのです~」
 奏音はどちらとも窺わせない――ほんわりと、無垢な微笑みを浮かべていた。


● 鐘楼に至り
 彼らが到着したときには、僅かに後宮派が先行して鐘楼に入っていた。
 閉じられた戦線をこじ開けるに至り、時を同じくしたらしい三尋木派と肩を並べる事になる。

「十字の加護を此処に」
 戦いの意志を敷き、階段を塞ぐ盾に向かい要が先陣を切る。鉄を抉り、火花が散った。
 クロスイージス達に視界が開かれ――スポーツ刈りのゴリマッチョに、ロリータな衣装でポージングする豪蔵が映り込む。がちゃがちゃと盾越しに動揺が見て取れる。
「『魔法少女ジャスティスレイン』、ここに参上。さあ、受けられますかな……マッスルキャノン!」
「少女!? ガッ……!!」
 ロッドから無常に放たれるジャスティスキャノン。ぶち当たる瞬間にも彼はマッスルアピールを欠かさない。
「まずは敵の陣形を崩そう。戦闘するなら協力して」
「はいよ」
 アンデッタが守護結界を施し、友軍を振りかえる。
 頷いた友軍の内、モズら三人の男はエリスと万葉の見知った顔だが、一瞥を向ける暇もなかった。
 交戦の隙に、物質を透かし万葉の目。超直観をもって観察するエリスの目。
 しかし、互いに目的の賢者の石は映らない。
「見当たりません。恐らく、ここから死角になる場所でしょう」
 エリスに耳打ちした言葉は、ハイテレパスを介してリベリスタ間で共有された。伝わる情報に小夜香が翼を広げる。
「私が上から侵入して後宮派を食い止めてくるわ」
「一人では危険すぎるわ。それに飛べば……」
 飛行し乗り込めるのは小夜香ひとり。
 獲得には必要な手順、だが的になるのは明白――ティアリアが浄化の加護を与えながら彼女を引き止める。
「揉める時間はない、逃げられる」
 三尋木派友軍の筆頭、メイカから攻勢の片手間に声がかかった。
「こちらから護衛を出し、提案に沿って挟撃も行う。手数を相手にするだろう、半分は下に残す」
「……お忘れではありませんな?」
 戦いの合間、渋みのある声が釘をさす。
 メイカは鐘楼を仰ぐようにして、豪蔵から目を逸らした。
「私自ら行く。無論、双方害はなさない」
 次の句より先に、ホーリーメイガスの詠唱が三尋木派に翼を与える。
 空を見据えた小夜香の背に宿る翼が中空を打ち、メイカ、モズ、詠唱者の三人が上空に舞い上がった。

(……モズ、ね。まぁ、使えるコマは使いましょうか)
 手元を離れるコマに双眸を眇め、残るコマに――スターサジタリー、マグメイガス、ナイトクリークに視線を流す。
 それぞれに翼を狙う者へこうげきを仕掛けている。
(賢者の石を手に入れるのは……最後に微笑むのはわたくし達ですわ)
 その為にも立ち止まる事は出来ない。
 彼女の手にある鉄球の棘が床石を削り、鎖がしなる。
 嗜虐的な色を帯びた笑みが浮かび――轟音。
 穿った盾の金属片も、衝撃で破壊した内の腑も血肉に代え、殺戮天使が小首を傾げる。
「そこをお退きなさい」

 背筋を震わせた瞬間、傍らの盾をなくした最前列の男の顔が歪む。
 急速に迫る雪崩のように詰められた間合いから逃れる術もなく、貴志のガントレットによって大地に沈み込んだ。
「上……待ち構えてる」
「手前のクロスイージスを抜いて8人ほど」
 じゃらりと、鉄球を繋いだ鎖が冷たく鳴く。
「問題ないわ」
「心強いですね、殿も無事ですし」
 入口には奏音と未明。
 多少の傷を負っているものの、幾つも任をこなした彼女達にはささやかなもの。
「では、私は後続と入口を塞いでおきましょう。魔力も尽きませんので、問題ありませんぞ」
「奏音も地上の制圧をしておくのです。終わったら上に行くのですよ♪」
 隙間から仄かに射し込む日の下で、奏音が残党らしい声の方向に顔を向ける。
 自分と未明が打ち洩らしていない分、故意に残された兵だとしても。
「後顧の憂いは断っておきますぞ」
 それぞれの名乗りで役割が決まり、即座に取り掛かる。
 ぐっと豪蔵が見送りのポーズを決める。射し込む窓からの陽光の下、汗がきらきらと反射していた。


● 鳴り響く弔鐘
 空に近い鐘楼の先端で鋭く薄い刃が重なりあう。
 二人目の後宮派の女が絶命したとき、鐘楼の天辺で、鐘が鳴った。
 ――零れ落ちる赤い光。
 小夜香が、メイカが、古暮が、身を乗り出し手を伸ばす。寸前、彼女の前を影が過る。
 残影の剣が影の腹を貫き、口を歪めて崩れ、視界を譲った。
 小夜香の目の前に広がる青空と鐘と、対峙するフィクサード達。
「賢者の石は」

 要とナイトクリークを先頭にして、螺旋状の階段を進む。
「死者の鳥よ、妨げられることのない眠りを運んで。この地が死霊の巣となる前に」
 アンデッタが猿の手に囁けば鴉が形を成して黒羽が舞う。
 黒矢のように向かった先で、別の翼がはためく。格段上の集中領域にある万葉が見逃すはずもなく、翼をピンポイントで貫く。速攻で返される神秘の矢を、ナイトクリークの女が寸でのところでかわした。
 ちらりと女から向けられた視線に、後方に控えるアンデッタがにこりと笑む。
「……ん。怪我……治す」
 すぅと、エリスが少し湿気た空気を吸い込む。
 清浄な声音が紡ぐ福音が響き、繰り返しの接敵でついた傷を癒す。
(非常事態……よくない状況ではありますが、同時にチャンスでもありますね)
 エリスの癒しの力を受けて塞がる傷を感じながら、決意を秘め大きく踏み込む。
 華奢な身体はフィクサードの侮りを裏切り、銀は鈍色の盾を貫き鮮血が頬を濡らした。
 コートの袖で拭い、次の敵の懐に潜る。
(必ずや彼の石をアークの手に)

 ――鐘楼の壁に反響し、鳴り響く鐘の音。
 一瞬、全員の足が止まり、貴志が頭上を仰いだ。
(歓喜……いや、何の感情だ)
 渦巻く感情を頭上に感じながら、黙して階段を駆け上った。

 音をたてて開いた扉に、小夜香が振り向く。その背に迫る後宮派の男。
「後ろ!」
 密かに舌打ち、マグメイガスとスターサジタリーが狙いを定める。 
 全てをかなぐり捨て逆上した男が円形の盾を前に、それを弾く。
「くたばれぇ!」
 揃えられた黒髪が切っ先を掠めた。それでも小夜香は怖じる気配すら見せない。
「神の炎よ、焼き払え!」
「あああぁぁぁあ!!」
 小夜香がクロスを翳し、『敵』を振り掛かり焼き払った。
 悪魔のような断末魔を上げて盾の男が朽ち、モズが小さく呻いて立ち上がる。

 小夜香の無事を確かめ、アンデッタが三尋木派に近付いた。
 戦場を観察し、ホーリーメイガスが絶えずモズの傷を癒し息を長らえ、ソードミラージュのメイカが後方に下がったその不自然さに気がついた。
「守護結界をかけるから! 大丈夫、君達の背中は僕が守るよ!」
「ありがたいね、お嬢さん」
 リベリスタが来て以降、塞がり切らない傷を庇いモズは防戦に徹し、メイカを庇い続ける。
 メイカは好意を口にした少女をを背に回さず、隣り合ったまま。
 リーダーであり石の所持者たれば増した警戒心に焦れながら、機会を窺いアンデッタは式符・鴉を繰る。
(盾、が……役?)
 見知ったフィクサードの顔をちらりと横目に見て、エリスが現状を見渡す。
 重なる屍、そして生きる仲間。鐘楼とその屋根という、決して広くはない戦場。
 彼女は迷わずブレイクフィアーの光が瞬き、厳然と身を蝕む力を払いのける。

 死体を盾に代用した後宮派の生き残りが、盾を捨てる。光の傍らにできた影で、古暮が一直線に駆ける。
 幾度も浴びた斬撃と神秘の力井により満身創痍。
 それでもなお力を振り絞り、迎撃する要の剣を潜った。
 空を切った剣の間隙を縫って、照準が心臓に重なり――要の後ろでティアリアが微笑んだ。
「おイタが過ぎるわね」
 弾丸が肩にめり込んだ瞬間、浄化の鎧が魔弾を弾き一挙に不可抗力の痛苦を齎す。
「そこまでですよ」
 血反吐を吐くより早く、万葉がピンポイントで急所を撃ち抜いた。
 古暮にそれ以上交わす力などなく、そのまま前のめりに古暮は倒れ込んだ。

 戦闘の終幕に、最前線を担い続けた要の元にエリスがぱたぱたと駆け寄る。
「平気……?」
 素肌を撫でる癒しの微風に要の頬が綻び――同時、重なる詠唱に、赤い瞳が見開かれた。

「――ダメ!」
 アンデッタと要の声が重なる。ティアリアが息を詰めた。
 三人の赤い瞳に、振り向いた小夜香の姿が映る。
 だが、放たれた力は戻らない。


● 石の行方
 ――ぱらぱらと焔は火の粉に代わり、メイカ達に届く前に尽きた。
 メイカ達を庇い立つのはモズ達、男三人のフィクサード。彼ら越しにメイカは唇に弧を描く。
「少々手荒い見送りだが、私達はここで失礼しよう」
「あっ……」
 引きとめようと手が伸びる。口だけで取り返せる状態ではない。
 それでも、手を伸ばさずにはいられなかった。
 背後で動くリベリスタの気配を察し、メイカが一度足を止め冷淡な吐息を零す。
「好きにするといい。そこの男の言う善人の集団ではないと認識させてもらった以上、礼を言っても良い。
 だが、これ以上は――私達を侮るな」
 加護の翼を宿した三尋木派は、鐘楼の屋根縁から身を躍らせた。
 追うように一歩進み出た貴志の手を万葉が抑える。
「全滅より先に連絡ができる手筈を整えているはずです」
「……準備の良いコマ。まるで共闘の提案を疑わなかったような……」
 椋木・メイカに視線が向く最中、モズは真逆から降りていく。消え際、言葉のない肯定に柳眉を顰める。
 両腕にセファー・ラジエルを抱え顔を埋めるようにして、エリスの青い瞳がじっと屋根縁を見つめていた。
 盟約がある今、これ以上なす術はなく、見送るほかない。
「最低限。最低限、後宮派には渡らなかった……でも」
「仕方がありません」
 小夜香がきつく唇を噛んで俯いた。
「最悪は、回避できたよ」
 閉じれば瞼の裏に浮かぶ赤い輝き。少女は強く、届かなかった掌を握りしめていた。

「ふんっ! 魔法少女ジャスティスレイン――正義の勝利!」
「お疲れさまでした」
 最後のクロスイージスを沈め出入り口に残った面々が一つ息を吐く。
 ぺこりと奏音が頭を下げ、負傷をものともせず跳ねるように一段上がる。
「では次に参り……」
「待って」
 枯れ葉を踏む音に、血を拭っていた未明が顔を上げ、豪蔵が止まる。
 彼は反射で構えたロッドを降ろし、厳しい眼差しで女三人の背を見据えていた。
「あれは三尋木派。まさか」


 賢者の石・争奪戦――報告。
 後宮派30名は壊滅。賢者の石は三尋木派フィクサードの手に渡る。

■シナリオ結果■
失敗
■あとがき■
全体の返却に遅れ、大変申し訳ありません。

『<賢者の石・争奪>Ring the Red Knell』、情報の少ない中、ありがとうございました。
後宮派フィクサードの戦法はほぼ相談卓で見破られ、戦闘面では三派の中で最も優勢でした。

ですが、残念ながら足並みにばらつきがあり隙となってしまいました。
友軍を含め、様々な場面への想定、対応などややこしかったと思います。
後少しでしたが厳しく判定させていただきました。改めて、争奪戦へのご参加、ありがとうございます。お疲れさまでした。