● なんだろうこれ? と、手に取ったのが過失か。 だが、そんなこと少女は知らないし、分からない。 珍しい石を発見した、と。拳大の大きさのそれを、ランドセルに仕舞っては持ち帰った。 普通の石なら捨てたけど、それは特別。 帰って、母親に見せてあげたら、きっとびっくりして、きっと喜ぶはず。 純粋に母親の喜んだ顔が見たい。それは少女の小さな親孝行。 その帰り道。 「居たぞ! あいつが賢者の石を持っている!!」 複数のフィクサード達が見つけたのは賢者の石……を持っている少女。 アザーバイドにして、アーティファクトである賢者の石は、単体では力を成さないが何かの力の源泉と成りえる存在。それを後宮・シンヤ派のフィクサードは探していた。 「止まれ! 殺すぞ!!」 凶器を持った大人を見て逃げ出さない子供がいるだろうか。その少女も本能のままに逃げようと振り向いた、その瞬間人にぶつかった。 尻餅を着きながらも見上げてみれば、赤く派手な燕尾服を来た少年。 その目と目が合えば、何故かその人に逆らえない様な錯覚に陥って、そのまま抱き上げられてしまった。 「たかが子供1人にそんな人数とか、君達も暇なのかな?」 少女のぐったりとした身体を抱えつつも、その男は後宮・シンヤ派のフィクサードから目を離さない。 「チッ、Crimson Magicianか……」 「ご明答。でも今は三尋木派フィクサードのクリム。不殺なんて生温いこと言わないよ」 そう言いながら、鬼ごっこが始まった。 着いたのは古く、人気の感じない神社。 その社の中に賢者の石を持った少女を横たわらせ、閉じ込める。 本来ならば、さっさと賢者の石だけを奪って少女を捨てて帰った。けれど、それができなかったのは後宮派フィクサードの執拗な攻撃があるからで、賢者の石を盗ったとしても、その後追われてしまうのも面倒だ。 それにもうひとつ、少女を賢者の石の盾にすること。 自らが突破されたとしても、少女の命で時間を稼げれば、賢者の石奪取に失敗しても逃げ出す隙ができるはず。だからこう、少女に催眠をかけた。 ――けして、鞄の中身を人にあげてはいけないよ それを言っただけで、虚ろな目で少女は首を縦に振り、鞄を抱きしめた。 「まあ、負けないように頑張るけど、保険ってのは必要だよね」 背後には賢者の石が、手前には後宮派のフィクサードが。 「三尋木の姉さん。この仕事はちょーっと骨が折れそうだよ」 構えたのは、返り血の着いたデスサイズ。 ● ブリーフィングルームの椅子に腰を掛けた『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)が声を発する。 「皆さん、こんにちは! 先日アークに持ち帰って来た『賢者の石』の話はもうご存知ですよね?」 それひとつでは力は無いが、使いようによっては強大な力と成りえる代物――賢者の石。 崩壊へと近づくこの世界で、近日発見されるようになってきているが、関係性は不明。 アークの研究者達が、その持ち帰ってきた賢者の石を分析し、その波長を利用して他の賢者の石を万華鏡で察知することに成功した。 「その賢者の石を持ち帰って来て欲しいというのが、今回の依頼です」 先日、『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)が無事に生還した。 彼女から告げられた情報を元に『その賢者の石を利用し、アシュレイ達が大規模儀式を行い、何らかの穴を開ける』という推測にアークは辿り着く。 飽くまで推測の域を出ないが、彼女達の手に渡って安全というものでは無いのは分かりきっている。 「もし、それがアークへと持ち帰られた場合、武器の性能や、アークの設備等にも影響を与えてパワーアップ! ということもあるかもしれません!」 賢者の石の可能性は広い。 それはそれとして、依頼の内容について話を始める。 「目標は少女の持っている賢者の石。そして、敵は後宮・シンヤ派のフィクサード達です。なお、もうひとつの武力介入もあり」 そこで杏里が一息深呼吸を入れる。 「穏健派『三尋木』のフィクサード、Crimson Magician。本名クリム・メイディルの介入があります。三尋木派とのフィクサード達とは不戦条約を結んでいますので、向こうからの攻撃はありませんし、その逆も絶対にいけません」 いわゆる賢者の石を巡った、三つ巴。 三尋木がアークに賢者の石争奪の強力を申し出てきたが、自らの組織に賢者の石をもたらすのが本当の目的だろう。あくまで味方では無い。 「目標はクリムが守っていますが、彼1人で複数人相手するには厳しい状況です。確実に苦戦が続けばクリムも突破され、賢者の石が奪われてしまいます」 社の扉はクリムが立っているため、正面から賢者の石目当てに問答無用で入ろうとすれば、止められるだろう。何らかで入れたとしても、少女が掴んで離さない。 正直な所、少女の命は賢者の石の二の次である。命の行方はリベリスタの誠意に任せるとしよう。 本当は少女も助けてと言いたいところだが、事態が事態。杏里は唇を噛んで必死に抑える。 「やり方はたくさんあります。最終的にはアークが賢者の石さえ持って帰ればいいだけの話です。けれど、後宮・シンヤ派のフィクサードも簡単には逃さないと思うので戦闘は避けられないと思います」 逆にクリムはアークには手を出さない。 けれど味方でも無い。向こうも目的は同じなため、悪賢く手を打ってくるだろう。 「なお、後宮派のフィクサード達はアークの平均よりも少し強めの方々が8人です。それでは無事の帰還、お待ちしてますね」 杏里は深々と頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年11月27日(日)22:31 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●介入作戦! シンヤ派のフィクサードの異様なまでの執着は、賢者の石がどれほどの物かが窺える。 運よくここまで逃げてこれたものの、1人で複数相手にするのも厳しいものだ。 「これは骨が折れる仕事だよ、三尋木のねーさん……」 そっと敬うフィクサードの名前を口からこぼしてみたものの、それが何になる訳でも無い。 クリム・メイディル的には賢者の石はさほど興味は無かったが、主が興味があるというのであれば拾ってくるのもまた一興。 それくらいにしか思っていなかったその結果、追われ逃げて、この様。 「人前は嫌いだって……」 だるそうに頭を斜めにしてみても世界は変わらず、目の前のフィクサードが襲い掛かる。 その時、辺りに強結界が施された。 向こうのフィクサードも気づき、ピクリと静止する。もちろん、クリムが展開した訳でも無いのは見てとれる。 ならば、誰がだなんて言う必要も無いだろう。 第3勢力―― 「アークのリベリスタですか」 クリムの目線が横へと泳げば、リベリスタが5人そこへ走ってきた。 少し前に走り出したクリミナルスタアの男がナイフを突き立てクリムへと迫る。 ナイフと猫の爪みたいな鈍器がぶつかり合う音が神社で響く。『エア肉食系』レイライン・エレアニック(BNE002137)がフィクサードとクリムの間に割って入ったのだ。 「大丈夫かえ、クリム!?」 「死にそうですね」 フィクサードを受け止めながらも、後ろを振り向き問いかけたレイライン。それに対しクリムはどことなく危機感無さそうににっこり笑って答えた。 それだけ言葉を交わすとレイラインがフィクサードに弾かれ、クリムがレイラインを受け止めた。 増援……という文字は似合わないが、共闘しに来たリベリスタ達。だが戦力が間に合ってしまえばクリムは姿を消すかもしれない。 その時『盆栽マスター』葛葉・颯(BNE000843)がクリムの袖を掴んだ。 「君もこいつらに持ってかれるのは困るだろう? 協力させて貰うのだョ」 その一言でだいたいの事情はリベリスタ達に知られている事が分かった。それはそれでも問題は無いのだが、ひとつ問題が減ったと同時に、新たに問題が増えたとも言える。 「かと言って……貴方達にも渡したくは無いんですけどねぇ」 あくまで持ち帰るのは己の背後にいる者のため。共闘したとて、協力では無い。加えて恐山会以外のフィクサードは、アークと不戦以外はギブアンドテイクも無い。自給自足、と言っても過言は無いかもしれない。 それぞれの事情が交差する中、颯とクリムはあははと笑いながらも凄い勢いで火花が散っていた。 「まあまあ、まずは目の前の状況を打開すべきだ」 割り切ったように廬原 碧衣(BNE002820)が話しかける。 その中でも戦闘は既に始まっている。敵のホーリーメイガスの神気閃光が響いた。 「こりゃー! おまえら戦わんかー!」 尻尾を逆立たせてレイラインが遺憾の意を振るわせる。 言葉だけではいたちごっこの始まりだ。まずは目の前の敵からどうにかするべき。それは双方……いや、3方が暗黙の元にわかりきっていた。 「さて、まずはやるべきことをやろう」 『蒼い翼』雉子川 夜見(BNE002957)が小太刀を構える。 「クリム。干渉、手助け、一切無用だ」 それだけ言うと夜見は爆砕戦気を身に纏い、前へと走り出す。 「ええ、もちろん。健闘だけを祈っていますよ」 リベリスタとフィクサードという名前の下には、相容れない大きな壁があるのかもしれない。 一方。 「こそこそやるのって初めてだから気がしまるな」 「だな、合図は……まだか」 エクス キャリー(BNE003146)と一緒にアルジェント・スパーダ(BNE003142)が、社の裏手では主力と離れて2人のリベリスタが行動していた。 未だ聞こえぬ合図を待ち、その手に武器を持ちながらも機会を待つ。 ●騙し騙され 戦いの火蓋が落ちた所で、此方はシンヤ派フィクサード達。 「ッチ、もたもたしてっから、リベリスタが来たじゃんかよ!」 「うわぁ、追い詰めたと思ったのに……最悪」 彼等は先の伸びたゴールに心底イラついていた。 今しがた、神気閃光を放ったホーリーメイガスとスターサジタリーがそんな言葉を交わしていたのも、その繋がりでもある。 だがその瞬間、ホーリーメイガスの背中には何か重いものがぶつかった様な、物凄い勢いでたたかれた様な感覚が一瞬走り、そして激痛が襲った。 「あ……え?」 後ろを向けば、赤い線の走るバスターソードを構えた少年が立っていた。 「すぐに、終わらせてやる!!」 『赤光の暴風』楠神 風斗(BNE001434)が再びバスターソード――デュランダルを構える。 背後からの奇襲はフィクサード達には予想外だったため、油断したホーリーメイガスには重たい一撃となった。 それに続き、『蜥蜴の嫁』アナスタシア・カシミィル(BNE000102)が同じ敵に大雪崩落を放った。 彼等が背後に立ったため、フィクサード達のバランスのとれた前後衛の配置も大きく崩れた。 だが―― 「2人で後ろ立つなんざ、死にたいみてーだな!」 「格好の的ってね」 クリミナルスタアの2人が風斗へとナイアガラバックスタブを放ち、その首を掻っ切った。風斗の首から血が流れ落ちていくが、風斗はまだ倒れない。 (何の関係もない少女を犠牲にすることは絶対にさせない……っ!) あくまで賢者の石の回収が目的だが、それはあくまでアークとしての目的。 自ら志願してアークの戦闘員となったからにはその命令には従うが、己自身の目的はもうひとつ。少女を守ることであった。 「おーっと、手が滑ったー」 わざとらしい言葉をクリムが言った時、誰かが倒れた音がした。 身体から猛出血し、血の軌跡を描きながらも地面に倒れたのは風斗が攻撃したホーリーメイガス。 放たれた疾風居合い切りは2回。飛んだ2本のカマイタチは、ホーリーメイガスのフェイトを根こそぎ持っていった。 「共闘だから、効率よく潰そうか」 笑う赤いロメオの口はつり上がるばかり。 レイラインがもう一方のホーリーメイガスへソードエアリアルを放った後、アナスタシアが動く。 再び放つは大雪崩落。 「ごめんねぃ、でも容赦はしないよぅ!」 ホーリーメイガスの襟元を掴んで、そのまま頭から地面へと叩きつける。 「あぐっ!?」 叩きつけられたショックで目は霞み、世界が回る。その中でも本来の仕事を全うすべく回復の歌を奏でようと体勢を整えた。 だが一歩早かったのは颯のナイフだ。 「悪いネ、回復さんは面倒なのだョ」 巻き込めるだけ巻き込んで放たれた残像のナイフがホーリーメイガスへと当たる。戦闘不能にさせるまではいかなかったが、体力のギリギリまで追い詰めた。 回復させてしまったものの、次に颯が残影剣を放つときまでは立ってはいないだろう。 敵の殲滅が目的では無いが、急ぎ仕事につき荒仕事。けれども、『その時』が来るまでの消化試合である。 ふとクリムが後ろへ下がった。 けしてリベリスタだけでは戦況は不利。プラスしてクリムゾンの高火力で戦況を保ったものの、まだ相手は6人残っている。 けれどリベリスタがどうなろうと正直クリムにはどうでも良かった。それを見抜いたレイラインが叫ぶ。 「こりゃ! お前という男は、女性に庇って貰いながらその恩を返さずどこか行くつもりかえ?」 レイラインがクリミナルスタアの攻撃を庇いつつも、顔だけクリムへ向いて咆哮した。 「お手厳しい……」 それを聞いた碧衣が同時に後ろへ下がりクリムの下へと走った。 スターサジタリーのハーニコムガトリングがリベリスタを襲っている中で、碧衣がクリムと背中に自分の背中を合わせた。 「なあ、クリム」 「なんですか? 青いお嬢さん」 ハニーコムの弾丸は確実に2人を巻き込みながらも話を続ける。 「ただ足止めをするのも芸がないので、どうせなら私と遊ばないか?」 「……乗りましょう、ルールはできれば手短に」 話の中でクリムが疾風居合い切りを、奥で弓を構えるフィクサードへと放った。 「──奴らの撃墜数勝負ではどうだ? お前が勝てばその大鎌で私を好きにするといい。私が勝てばお前が今持っていアーティファクトを何か貰おうか」 「単純明解で良いですね、因みに俺は現時点で撃墜数は1です」 お互い伝えるべきことは伝えた。 瞬時に背中を離れさせ、クリムが放つは前衛へとデットオアアライブ。 碧衣がヘビーボウを構えれば、多重のピンポイントが弧を描いてフィクサード達を襲う。 ゲームの提案はクリムの逃走の可能性を完全に阻止した。 そのデットオアアライブがクリミナルスタアの1人に炸裂しているが、最後まで体力を削る事は無かった。 「あれ? いさぎよく倒れればいいものを……」 「このっ、調子乗ってんじゃねーぞ!!」 そのままクリムがテラーテロールを返されそうになった時、アナスタシアがその間に介入した。 代わりに攻撃を受けたアナスタシアは、演技で不利を演じていたものの、蓄積されたダメージでフェイトが飛ぶ。 「あはは……9月ぶり、だよぅ」 崩れた身体をクリムに支えてもらいながらの、ぎこちない挨拶になったが、アナスタシアは彼女らしく笑ってみせた。 「……見違える様に、強くなりましたね。吸血鬼のお嬢さん」 数ヶ月前に顔を合わせた時は、敵として会ったのだが、今はアナスタシアの目にはどう映っただろうか、その行動に出ているかもしれない。 フィクサードの背後から夜見が小太刀を突き立て、オーララッシュを放つ。 前方へと崩れる様にフィクサードが倒れ、クリムと夜見の目が合った。 「……Crimson Magicianか」 零したその言葉に、クリムはにっこり笑って返した。 「ふん、面白い男だ」 「光栄ですね」 それだけ言葉を交わし、交差するように残っている敵へと走り出す。 ●逃亡作戦! 相手の数は4人へとなったところだが、回復手のいないリベリスタ達は消耗が激しい。 クリムと共闘し、まともに本気で倒しに行けばまだ状況は有利だっただろうが、有利になればクリムは狡猾にも戦線を離脱しようとする。 フィクサード達も回復手が倒れたのだが、異常なまでの賢者の石への執着で、油断すれば社へと向かおうとしていた。 そんな有限のいたちごっこが続く、それが狙い目だったかもしれない。 「俺達の――本気はこれからだ!!」 風斗が力いっぱいに咆哮しながら、眼の前のスターサジタリーへとオーララッシュを放つ。 彼のこの言葉には意味がある。 まさに文字通り、これからが本番だ。それが合図だとフィクサード達に分かるのは、もう数十秒と迫っていた。 「聞こえた!」 「うし、いくぞ!」 一方、社の裏でその言葉を待っていたエクスとアルジェントが行動に出る。 エクスがブロードソードを交差させ、古い社の壁を力任せに壊した。飛び散る木屑と共に中へと入り、少女を探す。 「いたか?! エクス」 鞄を抱えたまま動かない少女は、部屋の中心で蹲っていた。 「ごめんな、遅くなって」 その少女を優しく抱き上げながら、エクスは言葉をかけた。放心状態で口も聞けないものの、もう少しで助けられる。 そのまま歩き出し、3人が向かうは、社の扉――。 少し時間は戻って、戦場。 風斗が咆哮したそのすぐ後に、社の裏手からは大きな物音がした。 リベリスタ達には事情がわかっていたが、フィクサード達は悟った――例えばリベリスタが6人では無かったとしたら? 「まさかとは思ったけど、そのまさかだったなんてね」 クリムが先程、碧衣と背中を合わせた時面白い事を聞いた。 『足止め』と。 なんの足止めか、確証は無かったため社へは赴かなかった、というかリベリスタが上手く不利を演じたためそれどころでは無かった。 「あはははは、これはやられたかな。笑えないね」 「賢者の石とあのお嬢ちゃんはアークが無事に保護するサ、それよりこいつらが追えないように足止めするべきだよネっと」 「そりゃ、一番安全だ。でもまだ俺も諦めたくないなー」 颯が走るフィクサードへソードエアリアルを放ちながらも言った。だがクリムとてあげたくないのは同じ。あくまでフィクサード組織はそれぞれの派閥へ石をもたらすのが先決。不戦という名の騙し合いだ。 振り向いて走り出そうとしたクリムに碧衣が立ちはだかった。 「周囲に後宮派が居ない筈なので追って『護る』必要はない。なので、ここで後宮派の連中を食い止めれば『奴らには』石が渡る事はないよ」 「奴等には、ね」 碧衣を押しのけ前へと出……たい所だが。 「ストップストーップ!」 アナスタシアがクリムの服を掴んで離さない。 「あーもう、わかった! わかったから!」 不戦条約が無ければここで全員吹っ飛ばしてやりたいくらいだ。ずる賢いのは一体どちらか。 それに気づいたのはシンヤ派も同じ。彼等は彼等で社へと走り出している――。 アルジェントが扉を開けば、向かってくるフィクサードにリベリスタが混ざってごちゃごちゃな戦場。 「走るぞ!!」 「わ、わかった!」 アルジェントが促せば、エクスは走り出す。 「こっちだ!」 風斗が声をあげながらも、フィクサードの1人を吹き飛ばして道を作る。 その方へとエクスが走り、目指すは風斗とアナスタシアが出てきた方に置いて来た車。 「いかせっかよぉお!!」 だがフィクサードもフィクサードで、食いついて来る。しつこいほどの執着と、気合は明らかオーバーヒート。 ヘッドショットキルが飛び、エクスに当たろうとしたが、寸前でアルジェンドが庇った。 己の身を呈してでも、エクスの抱える少女を守る。どれほど攻撃が来ようと彼がいる限りは攻撃はエクスへ届かないだろう。 そのフィクサードへ、夜見がメガクラッシュで更に後ろへと後退させた。 「渡さない、わ、わたさっ、うああああ!!」 最後の残った後衛、スターサジタリーが弓を引き、ハニーコムを放った。 重なる矢達がリベリスタを襲ったが、庇い庇われ、エクスは止まらない。 もう少し、もう少しでゴールが見える。だが―― 「ぶっ殺すわ」 「賢者の石持って帰らないと、持って帰らないと!!」 クリミナルスタア2人が立ちはだかった。 「わっわわ!」 急ブレーキをかけたエクス。ナイアガラアバックスタブが放たれ―― 「残念賞だョ、賢者の石はアークがもらうネ」 「エクス殿、走って大丈夫だよぅ!!」 頭上から颯が舞い降り、アナスタシアがエクスの肩を1度だけ叩いてそのまま敵へ。1人へソードエアリアルを放ち、もう1人へ大雪崩落が炸裂した。 全員が何度も作戦の再確認をし、決行し――道は開き、エクスは走り出す。 ●不戦の無くなるその日まで 「はい、そこまで。撤退した方がいいんじゃない?」 最後まで立っていたスターサジタリーが弓を引こうとしたが、クリムが割って入って撤退を促す。 「く、くそっ!!」 言われたままに走り出し、残ったのは倒れたフィクサード達と、クリムにリベリスタ。 風斗が警戒し、まだデュランダルを構えている。 「ああ、もうこっから取り返す気は無いよ」 シンヤ派同様、スキルが交差し血が流れながら戦えるのであればやっていよう。だが最大の壁は不戦条約だった。 まだ少女へやる事があるリベリスタ達はその場を後にしようと歩き出す。 「二回もゴメン、クリム殿。恨まないでねぃ!」 両手を顔の前で合わせて謝りながらアナスタシアはその場を後にした。 「もう、超恨みますし、というかシンヤ派のこいつらどうすりゃ……」 「おい、クリム。約束の賭け事はお前の勝ちだ。不戦関係無く斬ってくれ」 帰り際、碧衣との約束は1-0でクリムの勝ち。 「ああ、では遠慮なく」 そう言われて重傷さえ覚悟し、目を閉じた碧衣だったが――天使の息で体力が回復する感覚がした。 目を開けた頃には目の前に誰もいなかった。 ――車内では、夜見が少女の記憶を改変していた。 クリムのかけた魔眼の命令を書き違え、その手から鞄を受け取る。 「これが、賢者の石か?」 出てきたのは赤く不気味に光るアーティファクトかつ、アザーバイド。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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