それなりに歳も取った。
探偵業とは名ばかり、喫茶店も趣味業だ。
主な収入はちょっとした資産転がしと、アークの賃金。
アークで知り合った相手と婚姻届を出した。
年齢差?聞いてくれるな。
昔の彼女に伝えようとメールを送った。帰ってくるはずもない。
先輩にもメールを送った。メーラーデーモン様が、そんな奴はいないとわざわざ返してくれた。
文末に、「Merry Marry you」の言葉を付けて。
神秘なんてのは、細部に現れる。そうだろ?
十数年が経った。
地下の暗くギークな喫茶店は、一つ上の階に移り
落ち着いた風情の喫茶店へと変わった。
歳で暗いのが辛かったし、気分の変化もある。
気が付いたら、娘が男を連れて来て、挨拶していった。
次は孫の話だ。
大袈裟にアークでの俺のロクでもない活躍を聞いて
爺さんみてェになるんだ、って息巻いてやがる。
ジェイド=翡翠を名乗るんだと。
やめてくれ、と懇願しているんだが、しょせん老人の繰り言。
若くて視界の狭い孫ちゃんは聞いちゃくれん。
「ねえ、さっきの真っ赤なドレスのお姉さん!もしかして」
「ああ、お爺ちゃんの……ま、友達だな」
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