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<剣林百虎>
富士地底の底で百虎は獰猛な笑みと共に巨大な門の前に立った。それはかつて封印された異界への門だ。
「ようやっとこいつをこじ開けてやれる時が来たようだな」
剣林百虎は最強となることを求めている。それは一度『日本最強の異能者』と呼ばれるようになったからと言って止まるものでは無かった。ただ、神秘の世界においても1人の武勇で世界を変えられるようなものではない。
極東の闇の同盟とも言える主流七派。
『剣林』の戦力はそのバランスの中で、常に戦いの渦中にあった。しかし、裏を返せば七派という檻の中に閉じ込められていたとも言える。
そしていまや、アークの台頭によってバランスは崩壊した。
逆凪は内部で互いに喰い合い、三尋木は国内を去り、裏野部に至っては消滅している。
六道と黄泉ヶ辻は自身の狂気を満足させるために暴走している以上、恐山のコントロールは最早通じないも同然だ。
剣林とて変化は例外では無い。アークのリベリスタは言い放ったというではないか「今は剣林等を相手にしている場合ではない」とまで。それは実際の所どうあれ、『武力』なる議論において剣林の代紋の持つ意味がこれ以上なく低下している事を意味するだろう。
だが、侮るならば侮れば良いのだ。相手がその心算ならば、暴獣もよりその気になろうというもの。
他派が己の信念に従って動くのと同じように、『剣林』もまた己の信念――最強であること――のために動き出せば良い。檻を失った『手負いの虎』はこれまでの猫のように手ぬるい存在ではいられない。
「てめぇらのお陰だ。お陰で俺も自由に動けるってもんよ」
武闘派『剣林』の首領、百虎が最強になろうと思った理由は至ってシンプルだ。
誰よりも強くありたい、そう願ったのだ。
かつて強者によって虐げられた訳でもない。弱者を虐げることに喜びを覚えた訳でも無い。
あえて言うなら、若芽が太陽の光を欲するように。赤子が親を欲するように。彼はその最強という輝きに魅せられ、ひたすらにそれを求めたのだ。
百虎の持つ最強への渇望こそ、彼の抱える『逸脱』。
「始めようぜ、世界最大の祭り。最強を決める祭りをよ!」
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