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【所感】 光介の手記―4―
種別: 全角200文字、改行無し    レス:500件

ホリゾン・ブルーの光(ID:BNE003658)
綿谷 光介

2014/12/12(金) 03:03:38 
これが「家族はすでに全員失われてしまった」という記憶を
指輪に植え付けられている段階であったなら、
ボクは彼の一連の動きを「逃避行動」として解釈したかもしれません。
単に、従来の目標に、代替物造りの欲求が差し込まれただけ、といいますか。
しかし彼は、倫敦で娘のなぎささんが生きているという情報を手に入れてからも、
あくまで自身の実験を続けていきます。
そして、家族の模倣体・同位体を完成させるに至るわけです。
が、肝心の模倣体の扱いを見てみると、それは非常にぞんざい。
壊されたら多少動揺はするものの、少なくも表面上は実験体として、
代わりを造れる存在として扱っています。

さて、ここからできる推測はどういったものでしょう。
娘が生きていると知った彼が、それでも「家族を取り戻す」意思を明確に示し、
疑似家族的要素を生物兵器に付与してきた意味。
あまり考えたくないことですが、おそらく……
現状、彼にとって至高の生物兵器と至高の家族とは、
すでに同義と化しているのではないでしょうか。
言い換えれば、彼にとって至高の生物兵器とは、実の家族を
集大成的な技術で作り替えた「至高の存在」を意味するのではないでしょうか。

天秤の反対側からこぼれおちてしまった「家族」は、もうどうあっても拾い直せない。
しかし、それでも「家族を取り戻す」ためには、
目標をより貪欲に、強欲に。研究をより意義あるものに。
要は「生物研究の追求」の到達点が、「家族を取り戻す」にも
直結していればそれが一番良い……。
こうしたロジックが働いたかどうか定かではありませんが、少なくともボクには、
「生物研究の追求」と「家族を取り戻す」という目標が、
彼の中ですでに1本化されているように見えるのです。
盛大に狂気と自己矛盾を孕みながら。

そうすると、いまの彼が執拗に愛娘本人を欲するのにも合点がいきます。
「まさやの代わりも見つかってないのに~」という言葉にも、
ある程度意味が出てきます。
自分の手で、至高の存在として、家族全員を再創造したい。
それが現在の、表・裏・指輪すべてをあわせた
「指輪を携えた海音寺政人総体」の行動の意義である、とボクは考えています。


◆再びモチベーションについての内省◆
長々と考察してきましたが。
結局、こう考えたうえでボクはどうのぞむのか、
というところに問題は帰結するわけです。

一番最初に書いたとおり、彼とボクの本質が似ているのかどうかというのは、
いまとなってはボクの最重要命題ではありません。
ボク自身が失った「家族」に縛られてきたから、
何かの答えを得たくて彼と刃を交えたい、という話ではすでにない。
もし事実として彼が指輪を手にしていなかったら。
逆にボクが指輪を手にして魔術を探求するような現実があったなら。
話は違っていたかもしれませんが。

正直にいえば、いまは……おこがましいかもしれませんが、
1人の親愛なる少女のために、なぎささんのために戦わせてほしい。
それは、自分が生きていても赦される場所を得るためだけに、
贖いとしての戦いを続けてきたボクが、初めて抱く動機です。
初めての、エゴだけではない動機です。
そのくらい、ボクの心は彼女の存在に救われてきたのだと、いまは感じています。

思い切り筋違いかもしれない。ありがた迷惑な話かもしれない。
でも、いま、1つだけ、彼女の心に還元したいことがあります。
海音寺政人の目的も、所業も、到底認められることではないけれど。
彼が芯からフィクサードであるという事実は、いまさら覆しようがないけれど。
それでも、「家族を取り戻す」という歪んだ目的のきっかけ……
呪われて歪んだ思いの「きっかけ」だけはどこまでも本物だった。
狂い果ててもなお、手放せない思いは、もとがそれだけ純粋で強靭だった。
辿り着いた先がどれだけ穢れてしまっていたとしても……
最初に「家族の幸せ」を願った心に嘘はなかった。

わかるんです。
ボク自身、家族の存在を歪めて、家族が生きていたら決して望まないであろう、
罪悪感と償いの道を走り続けてきたから……。
いまの歪んだあり方は、誰に誇れるものでもありませんけれど。
でも、この償いの「きっかけ」だけは、
「スタート地点」だけは、父さんと姉さんへの愛だった。
誤った道をいつまでもどこまでも突き進んでしまうほどに、
それは自分の中で違えようのない大きな思いだったんです。
モチベーションとしての海音寺政人への共感はもうやめたといいましたが、
これだけは自分の生き様から語らせてほしい。

だから、この決着の時に……彼女の心に何かを還したいんです。
海音寺政人の従来の欠片を、何か。
海音寺政人を元に戻したいなんて思わない。許したいとも思わない。
わずか一片でいいし、気のせいでもいい。そんな程度の何かでいい。
もしかしたら、「父親の重ねた罪の中に、どこまでも自分の存在があった」なんて
認識させようとするのは、ただの残酷な仕打ちにすぎないのかもしれませんけれど。
それでも勝手ながら、彼女のこの先の人生の旅路に、携えていってほしい荷なんです。

持ちきれなかったら、ボクが一緒に背負ったっていい。
逆に持たせたことを恨まれるなら、ボクは彼女の前から姿を消してもいい。
そういう思いで、いま、戦いにのぞもうと思っています。


……さて。
物思いにふけっているうちに、どうやら出発の時間が来てしまったみたいです。
そろそろ筆を置いて、出かけてこようと思います。

さぁ、長く身を委ねてきた物語の、最終章を開きましょう。
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