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TOP(2014/08/11) <黄昏を前に>
種別: 全角200文字、改行無し    レス:500件

影の継承者(ID:BNE000955)
斜堂・影継

2014/08/12(火) 19:31:10 
http://bne.chocolop.net/img/top_bg/BNE_bg_20140811ex.JPG
<黄昏を前に>


 感情的な理由を述べる必要は無いだろう。
 それを考えれば、どうしたいか等分かっていた。
 否、干渉の方針が定まった現時点で――それは否定しようも無いものだった筈だ。
「……こうなってみりゃ、複雑だな」
 小さく呟いた斜堂・影継(BNE000955)に小さく沙織は頷いた。
 彼の提案で行われた『調査実験』は、アークに唯現実を突き付けただけだ。
 1999年の8月を生きるリベリスタと交差した道が、如何なる意味を持つのかを。
 自分達の生きるこの世界と、隔絶された時間の彼方に本当の意味での連続性があるのかどうかを――この世界の、時間が。『未来』が変わるのかどうかを。
 2014年現在、確かにこの場所に存在するアークに理解させたに過ぎないのだが。
「歴史への『干渉』が持つ意味を考えれば、色んな意味で危うい話だとは思ってたんだがよ。
 こうなれば、少しは納得も行くか?」
 影継がチラリと視線を投げた先には、土に汚れた古いケースが存在している。ナイトメア・ダウンの暴威を直撃せぬ場所に彼自身の発案で埋められたタイム・カプセルは十数年の時間を泳いでいる。そのもの自体が用意されたのは僅か数日前の出来事だが――現代(ボトム・チャンネル)で掘り起こされたそれは、確かに歴史の年輪を刻んでいた。
「つまる所、『あの世界』は――間違いなく『過去』なんだろうよ。
『この世界』と繋がってるってこった。室長が当て込んだ通りに、な」
「そうなるな。他のリベリスタの確認でも、似たような結論だから」
 話を結論付けた影継に智親が同意を述べた。
 交差する道の果てに埋められたカプセルが現代で発掘出来たという事は、まさに過去への干渉が本格的にこの未来に繋がっている――という証左である。どれ程の影響があるのか、単純に生み出される影響力の程度までは読み切れないが、アークにとって必要不可欠な確認だけは確実に済んだとも言える。
「エゴかも知れん。リスクが勝る話かも知れん。
 今すぐに穴を塞ぎ、やがて来る『それ』から目を逸らして――嵐が過ぎ去るのを待つのが一番の正解じゃないなんて、俺には言い切れない」
 沙織はたっぷりの沈黙の後に、大きく息を吐き出して言った。
「だが、ナイトメア・ダウンはやって来る。確実に、あと何日もしない内に。
 それを知らない誰かは死ぬ。立ち向かうリベリスタ達は死ぬ。穴を塞いでも、確実に。
 俺が造ったアークは――いや、お前達アークはそれを止める力があると信じたい」
 影継の口元に不敵な気配が漂った。不遜なる少年は、沙織と出会った頃より随分と冷静に大人びた。そして、彼は強くなった。だが、時に無鉄砲にも思える強烈な闘争心は磨かれるばかりでまるで曇ってはいなかった。
「アークは、ナイトメア・ダウンを止める」
「その為のアークだ」
 沙織の決意宣言に智親は頷いた。
「その為の切り札――『神威』を、起こす」
 ナイトメア・ダウン――R-typeの齎した神秘的影響力の残滓は、このアークに神の目『万華鏡』と『もう一つ』を与え給うた。R-typeの残したギフトは遥かな時を超え、それを撃つ矛となる。アーク最大の切り札は、ずっと前から――三高平市という決戦都市が新造されたその時から密やかに用意されていた。
 人知れず、調整と強化を続けられながら。そこに存在し続けていたのだ。
 多大な準備と危険を伴う発動だが、これ以上の舞台は無い。
「全く――神の次はやっぱり神か。人間サマの時代が懐かしいぜ」
「すまんな」と謝った沙織に「いつもの事だろ」と嘯く影継。
 繰り返す。感情的な理由を述べる必要は無かったのだ。アークが、沙織が、或いは志あるリベリスタ達が求めていたのは――アクセルを踏める『理由』だけだ。
 目の前に点されたグリーン・ライトがその本懐を遂げさせるものならば。
 やがて来る黄昏は、彼等の乗り越えるべき壁でしかない。

 ――運命を捻じ伏せ、従える。戦いの時は、もう間近に迫ろうとしていた。
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