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<裏野部一二三>
自身が誰かに敗れる等という事を彼は余り考えた事がない。
きっと彼は誰よりも貪欲だった。
きっと彼は誰よりも獰猛だった。
高度に発達した知性を有する人間という『特別』に生まれながら。
その知性という枷を受けぬ獣のような彼は――獣牙を得た人間の如くだったから。
「……さァて……」
裏野部の――いや、賊軍の本陣本丸の奥深く。自身より失われた力と、自身に戻ってくる力の双方を感じながら裏野部一二三は口元を歪めていた。
賊軍による四国制圧は『主流七派(あーくとろくは)』のお気に召さなかったらしい。
やや中立寄りのスタンスであろう黄泉ヶ辻を除けば、四国在中の勢力は全て敵といっても過言では無かろう。尤も彼等とて先程『世間話』の電話をかけてきたあの京介が自分と戦いたい等と気まぐれを起こせば別になるのだからあてになるようなものでも、あてにするような相手でもないのだが。
元より七派ルールは今回の一二三のような独断計画を阻止し、護送船団式に組織を守る為のルールである。詰まる所、あの残骸がそれでもまだ機能している以上はこの状況を一二三も読んでいなかった訳では無い。
(……だが、それでもだ)
自身は全てを統べるのだ。
単純な殴り合いで剣林を上回るのは困難だ。政治力で恐山を出し抜くのも、逆凪を『日本フィクサードの王』から追い落とすのも然りである。
元々、敵同士だった彼等と敵同士に戻っただけ。微温湯の繁栄は裏野部を永らえさせただろうが、それは裏野部では有り得ない。あくまで裏野部は――自身はその徹底した嗜虐性をもって彼等を超えねばならぬのだ。
無謀とも思われる暴虐の計画の発動は一二三、最大最後の賭けである。
「さぁ、来な。リベリスタ――いやさ、フィクサード共。俺がまとめて全部、喰ってやる」
おまえたちのすべてをきばあるけものがくってやる
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