死のうとしないエリューションが何を考えてるかなんて興味ないな。お前、ゴキブリが何を考えてるかって思いながらバルサン炊く?手加減する?
というわけで情操教育の時間です。
土曜は学校がお休みなのでサンダーと一緒に時を過ごせます。
「サンダー。」
「はい。」
もう真崎夕子と呼ばれないことにも慣れたようです。わたしの前でのみのポーズかもしれませんが、それでも良い。
「これからわたしが話すことは、とても大事なことですが、忘れてしまっても構わない。」
「はい。」
どこから話そうか迷い、少し考えてから、わたしは話し始めました。
「道路や、鉄道、会社、銀行。水道や発電所。交番、警察、役所。それらの使い方のルール・それは人間が出来るだけ過ごしやすいように作られたものです。」
「はい。」
「それは一人じゃ出来ないことだった。多くの人で計画を立て、みんなでここを正しく使おう、ルールを守ろう、守らない奴は許さないようにしよう、と気持ちを合わせて初めて出来たことです。」
「はい。」
「みんなが真面目に生きる、と信じて、作られたものだ。」
「はい。」
「でもねえ。そういうものは、ズルく利用するととってもたくさん利益を得られる。
人が貯めたものを盗んだり、対向車線に出て車を追い抜いたり、ありもしない評判を立てて相手の組織の評価を下げたり。そういうことをやるやつはいる。」
「……はい。」
「やりたくなる気持ちはわかる。でも、そういうやつばっかりになったら困る。
人類みな野菜泥棒になったら、農家はいなくなり、野菜はこの世からなくなっちまう。
肉も魚もそうだし、当然他の仕事もそう。
だから、横からかっさらうやつは許しちゃいけない。」
「はい。」
「そういうやつは、人間じゃない。
人と人の間と書いて人間と読むが、人の間に生きていけていない奴だ。
人間が決めたルール、人間が作ったインフラ、人間そのものを、有害な方法で利用する奴は、人間じゃない。」
「……。」
「犯罪者は拘束され、牢に叩き込まれる。人権がないからな。人間じゃないから人権がないんだ。」
「……。」
「悪いことをするな、とは言わないよ。ただ、やるときは理解してからやれ。人間扱いされなくなるってことを。」
「はい。」
「お話終わり。寝ていいよ?」
「はい。」
昼寝しました。
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