税制は脱税の為にある。
正義とは力ある者の主張だよなあ。
そう思いながら今日も山道を駆けあがります。
正義という言葉が気に障るなら、治安維持と表現しましょう。
犯罪者が犯罪者たりえるのはそれを取り締まる警察が犯罪者より圧倒的に強力な暴力を備えているからです。
取り締まる側に金や権力がないのなら、それはもう取り締まりではなく単なる抗争、内戦であります。
アークの一員として、先日の依頼で醜態を晒しちまったのでそんなことを考えてしまうのです。
「お前は犯罪者である」それは、こちらが圧倒的に強いからこそ言える台詞なのでありまして。
有害なエリューションを取り締まり制圧する存在である――――と、少なくともわたしは信じている――――アークは、装備も、地力も、科学力も、金も権力も、他の誰より優れていなければそもそも用を為さないのだ。
それに、わたしはわたしの個人的目的として、誰よりも強くならねばならない理由があります。
わたし自身が正義であるためには、わたしこそが、装備も、地力も、科学力も、金も権力も、他の誰より優れていなければそもそも用を為さないのだ。
枯れ葉交じりの湿った土の上、站椿の姿勢でじっと立ちます。
最早エリューションの力を持つわたしにこの構えは何の負担も与えません。ハイバランサーのスキルも会得しましたし、今以上にこれで磨きあげられるものがあるとも思えない。
その先へその先へ。できるだけ予備動作なく飛びあがり、体を捻り足を凪回せば、木々の葉が散ります。
その先へその先へ。この小さな体に持て余すほどの力でもまだ全く足りないのです。山頂へ全力疾走。上り坂が消え去り、かっと蒼い空。
開けた視界の中へそのまま跳躍。
少し浮き上がった視界は途端に頭上へ流れ去り、急転直下のジェットコースター。
されど安全ベルトやループのコースなどはなく、落ち行く先は――――
人型の穴って空くんですねえびっくりした。
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