子育てに向かない生き物たち。
シンクで手袋を焼いているとサンダーが近寄ってきました。
くさいとのこと。
我慢せよと告げると部屋の隅に戻って行きました。
換気扇を回してはいるものの、匂いと言うのは気流に余り関わらず拡散し溜まるものであるということをわたしは了解しています。
空き缶や空きペットボトルから匂いを取るには内容物の洗浄もさることながら、水で中を満たして匂う気体を追い出すことが効果的であることも知っています。
手袋を焼くことに別に大した意味はありません。
仕事で汚れてしまったし、かと言って指紋の残ったものをそのままゴミとして廃棄するのは危ういし、野外で焼くと人目に付く可能性があるしとその程度の理由です。
やがて手袋が燃え尽きるとわたしはその灰を水で流し、サンダーに「もう終わった」と声をかけました。
「何を焼いていたの。」
「手袋。」
「何で?」
「要らなくなったから。」
ここまで応えてわたしはハッとしました。
“要らないものは流しで焼いていい。"
もしこの子がそんな風に学んでしまったら不味いことになる。
留守番を任せている間に、わたしが秘蔵しているこの場ではとても内容を書けないようなDVDやオライリーの技術書やサンダー自身にシンクで火をつけられたら。
火災はマズい。消防士に部屋に入られる。サンダーの左耳のわたしが銃で撃った大きな傷を見られる。海洋堂 リボルテックヤマグチ No.131 メタルギアソリッド ピースウォーカー ソリッド・スネークにとても言えない体液をまぶして冷凍してあるのさえバレる。肉体は無傷でも社会的に大火傷を負う。
ここは何とか言いくるめなければ。
「火遊びは死ぬ気でやれ。」
とても正しいことを言った気がしました。満足。
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