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TOP(2013/09/01) <タワー・オブ・ペリーシュ>
種別: 全角200文字、改行無し    レス:500件

影の継承者(ID:BNE000955)
斜堂・影継

2013/09/01(日) 00:46:20 
http://bne.chocolop.net/img/top_bg/BNE_bg_20130901ex.JPG
<タワー・オブ・ペリーシュ>


「……おや、これは珍しい顔を見たものだ」
 極度に肥大した自尊心の持ち主は、他人を厭うものだ。大凡他という個に何ら価値を見出さない彼――ウィルモフ・ペリーシュは特にその典型であると言えた。古今東西、総ゆる魔術を極めたともされる魔術王。神器とさえ呼ばれる『最悪』のアイテムを容易く此の世に産み落とす災厄のマジック・カーペンター。
「何十年振り……いや、百年は軽く過ぎているか。『昼寝』は十分に楽しめましたか?」
 元来自己の領域への闖入者を好まない彼が、諦め混じりとはいえ『客』の相手をする気になったのは、此の世の何処にでも存在しながら、此の世の何処にも存在していない――彼の『塔』を踏破してきた者の、それそのものの価値と言えるのだろう。
『塔』の最上階はペリーシュの居室である。上等な椅子に身を預けたまま机よりくるりと入り口に向き直った彼の視線には一人の女が立っていた。
「まったく――ものぐさな男じゃわ」
 ペリーシュの様子に呆れたように声を発した彼女は――『恐ろしく恰幅の良い』婦人である。『年甲斐』も無い派手過ぎる格好と、華美過ぎる化粧が何とも言えないその容貌を全く激しく引き立てている。
「妾を着座のまま迎えるとは、これぞ万死に値するぞえ?」
 剣呑そのものといった女の言葉をペリーシュは笑い飛ばした。
「アポイントメントを伺った覚えはありませんな、『第四位』。
 この場に現れるより先に諦めて下されば何よりだったのに。
 全く誰よりも『ものぐさ』な貴女がこの場に現れたのだ。
 小生に用件があるならば、出来る限り手短に聞きたいものですな?」
「妾を帰らせたいならばもう少し芸を磨く事じゃな、魔術師(ウィルモフ・ペリーシュ)」
 ペリーシュ自慢の悪意の嵐――つまり『客』を『帰らせる』為の仕掛けの数々も全く何処吹く風といった所である。しかして女は一応は彼の求めに応じる気配を見せていた。
「つまり、用件は此の程東で気配消失した『愚作』の件じゃ」
「……消失? 貴女の『作品』が?
 いや、それを単純に『作品』と言うのはやや憚られますがな」
 ペリーシュは女の言葉にやや怪訝そうな顔をした。彼女の『愚作』とは彼女が此の世に混沌をもたらす為に気まぐれで撒き散らした『革新的災厄』である。時に叡智という形で、時に願望機という形で彼女の『作品』は世界の何処かに潜んでいる。ペリーシュのような『作家』が『作品』を生み出すのに対して、我が身を切り離してそれを作り出す彼女のそれはまるで『子』である。これは全く別物と言えるのだが……
「おうとも、妾の眠気もそれで醒めたというものよ。
 ウィルモフ・ペリーシュ。主はその話を知らぬかえ?」
 彼女は文字通り目覚めたばかりであった。
 百年を超える時間とて、彼女にとっては一眠り。怠惰なるその時間を破るに到った状況を、まずはこの場に求めている。
「……東か。成る程」
 ペリーシュは独りごちる。
「まず間違いない。
 小生は『下の連中』の詳しい動向は知らぬが、最近は『我々』を騒がす輩がおりましてね」
「東にかえ?」
「ええ。神話の『箱舟』を冠したリベリスタ達。
 驚くべきか――嘆くべきか。はたまた失笑するべきか。
 ジャック、ケイオス、リヒャルト・ユルゲン・アウフシュナイター……
 どうも連中は歪夜を三柱も打ち倒すにいたったらしく。はて、貴女の子がそこにどう絡むのかは……小生には興味もありませんがね」
 ペリーシュの言葉に女は小さく呟いた。
「『箱舟』か」
 醜く膨れたその体を揺らすようにして思わず笑みを漏らしていた。
「面白い。面白くも無き此の世を面白く――
『箱舟』は『王冠』よりは妾の時間を楽しませてくれそうじゃ。
 のう、ペリーシュ。妾にその話を詳しくせぇ。無論、嫌とは言わさぬぞ?」
 肩を竦めた大魔道は降って沸いた『災難』に今日の研究を諦めた。
 物事には避け得ない『災厄』がある。彼は今日という日の『合理的判断』を誤らない――
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