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<行動、開始>
「少佐。懸案事項は一通りクリアされたものと思います」
「フン。手間取ったようだが……一応褒めてやる事とするか!」
大田剛伝よりあてがわれた『拠点』のホールで傍らのクリスティナ中尉から報告を受けたリヒャルト・ユルゲン・アウフシュナイター少佐は鷹揚に頷いて麾下戦力――『親衛隊』の顔触れを見回した。壇上のリヒャルトにとっては何れも見慣れた顔である。
「少佐、お願いします」
「ああ」
クリスティナの促しに応えたリヒャルトの目が爛々と輝いた。
「――諸君、聞いているものと思うが、既に準備は整った!
我々『親衛隊』は今まさに千載一遇を得て、『時』を迎えようとしているのだ!
屈従に塗れたこの七十余年、怒りを感じぬ日は無かった事と思う。卑劣なる敵国の勝ち鬨を苦く刻まなかった者等おるまい。しかし、それもこれまでだ。我々の大いなる拳は必ずや無知蒙昧なるカス共の傲慢を打ち砕く、鋼の咆哮となろうと確信している!」
誉れ高き親衛隊の制服に身を包み、声を張り上げるリヒャルトはまるで忘我の陶酔にある。『愛する祖国』の為にまさに今行動を開始しようとする自身を総身、鉄の獅子にも例えたい心持ちであった。
「諸君こそ、愛国者!」
「Ja!」
「諸君こそ、勝利を抱くに相応しき戦士である!」
「Ja!!」
「諸君こそ、全ての敵を追い詰め屠る誇りと鉄の猟犬達だ!」
「Ja!!!」
リヒャルトのボルテージと共に場に居る『親衛隊』の熱も増した。
異常と呼ぶ他無い熱気は狂気に満ちた『亡霊』達には良く似合う。彼等の帰るべき『祖国』は今は無く。それでも彼等は己が正義を微塵たりとも疑っていない。大戦当時の熱狂さえそのままに『時代錯誤』な士気を維持して生きてきた。それはまるで呪いのようでもある――
「繰り返す。狩りの準備は整った!
今日の良き日を新たなる歩みの記念としよう。平和ボケしたこの世界に総統閣下の遺志が残されている事を――我々『親衛隊』の存在を知らしめてやろうではないか!
全ては正義の為に。
全ては大義の為に。
忠勇であれ。精強であれ!
我等、鉄十字猟犬――」
『親衛隊』のシュプレヒコールに包まれて、リヒャルトは凄絶に笑う。
「――戦闘行動を、開始する!」
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