http://bne.chocolop.net/img/top_bg/BNE_bg_20130331ex.JPG
<逆十字円卓~Replay~>
「……かくて、愛すべき円卓の一柱はまた欠け落ちたという訳ですな」
黒の逆十字を中央に描いた地下聖堂のテーブルを囲い男は――『魔術師らしからぬ』絢爛華美なる衣装を纏ったウィルモフ・ペリーシュは芝居がかった所作と共に心底失望したような声を上げていた。
「それも同じ相手に二度。それも『空白地帯』のルーキーに再びも。
無敵は悲しい。何時からバロックナイツは児戯程に『劣化』していたのやら」
張り詰めた空間に朗々と響く彼の声から読み取れるのは極限までに肥大した自尊心。己以外の何者をも元より歯牙にかけていないという確信である。口では『組織として恥をかいた世界最強』を揶揄しながらも、それはある種のポーズだけである。彼は初めから誰一人認めていないのだから、誰が敗れようとも本来問題にはしない人格なのだ。
「……っ……!」
ペリーシュが『持って回った遠回しな表現』で円卓に問題を提示するのは毛を逆立て、軽く牙を剥いた円卓の一人――『白騎士』セシリーの反応を楽しんでいるという部分もある。彼は本来一番にいたぶってやりたい相手である――瞑目したままの盟主から反応を引き出す事が難しい事を知っていたが、忠誠心溢れる騎士を挑発するのは容易い事もまた理解していた。
「抑えろ」
「分かっている!」
……同時に彼女をからかえば『黒騎士』アルベールが、アルベールで手に負えなければディーテリヒが口を出さざるを得なくなる事も。当代随一ともされる『世界最高の魔術師』にとって形式上とは言えど『盟主』は特に目障りな目の上のたんこぶ――気に食わない相手であるのは言うまでもない。
|