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<アーク本部>
鉄砲を撃った経験は無い訳では無かった。
専らそれはスポーツ的な、趣味的なハンティングの世界ではあったが。何事においても器用に物事をこなす沙織はそれに多少の自信を持っていた。
「……しっかし、化け物撃っても勝てねぇよなぁ」
愛用の散弾銃を構えるポーズを取った彼は苦笑い混ざりに一人ごちた。
ケイオス一派の猛攻はアーク本部さえも揺るがす勢いだった。本部に用意した防備戦力は第三防衛ラインの苦境にかなりの負担を強いられていた。万が一、本部に敵が侵入してきたとするならば、沙織は本来はいの一番に逃げ出すべき、逃げ出さねばならない人間なのかも知れないが――残念ながら彼はそこまでは『割り切れる人間』では無かった。
モニターに浮かぶ戦況を彼は祈るような気持ちで眺めていた。
(勝て。勝てよ。勝てる筈だ。その為の準備は、整えた)
一念よ天に届けと言わんばかりに彼にしては『希望的観測』をその計算の内に交え、時間毎に更新される状況に気を配る。
一体、そんな時間がどれ位続いた後の事だったろうか。
――司令本部へ通信!
ミリィ・トムソン(BNE003772)の声に沙織の表情が引き締まる――
――只今を持ってケイオスを撃破!
「……やりやがったか……!」
思わず身を乗り出し、備え付けのマイクに怒鳴るように言う沙織。
――確認に拠ればモーゼスも討ち取ったみたいだ。『楽団』戦力は総崩れだな。
リオン・リーベン(BNE003779)の言葉に沙織は小さく拳を握った。
報告はアークが初めて経験する事になった『生存戦争』は薄皮一枚の紙一重ながら、勝利に終わった事を意味している。
喜びと安堵と疲労と――あれこれを綯い交ぜにした調子で沙織は呟いた。
「……本当に、お前等は良くやった」
その声は誰にも届かなかったけれど。
恐らくは彼等自身が自身を――友を労ったものと同じに違いない。
※ケイオス・“コンダクター”・カントーリオを討ち取りました。アークの勝利です!
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