下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






▼下へ
TOP12/12/31 <倫敦の闇は深く……>下
種別: 全角200文字、改行無し    レス:500件

影の継承者(ID:BNE000955)
斜堂・影継

2012/12/31(月) 23:22:57 
『しかし派手にやりあったもんです。うちの連中も無傷とはいかなかった位ですし』
「結構。リアリティの演出には多少のトラブルは必要だ」
 倫敦の蜘蛛の巣が日本に派遣した部隊は『紫杏派とアークのスペック、あの楽団の存在を加味した上で最大程度の激戦を発生せしめ、加えて紫杏派を敗北させる程度』の物量であったという事だ。戦いが激しさを増す程に紫杏派がその力をすり減らすのは必定。更に言うならば『勝利の目が見える限りは紫杏も早い段階で撤退を考える、或いは計画を諦める事は無い』という事だ。あの歳若い天才は究極のバランスを取らなかったとしても瑞々しい自信過剰を発揮したのかも知れないが、その辺りはそこはそれ。合理的に確率を向上させる事が老教授の『やり方』である。
『これでも、同情はしていますけどね』
「奇妙な事を言うな。お前達の仕事は完璧だったのだろう?」
『勿論。だが、感想ってのは時に不合理なモンです』
「成る程、やはり感情(ブラックボックス)は解析の余地が深い」
 しかし、この場合真に重要なのは『何故そのプロセスが必要だったか』の方である。教授は有力なフィクサードである六道紫杏から『大抵の場合は自身を信じて行動する』程度の信頼を実際に勝ち得ている。そんな『可愛い教え子』を何故殊更に破滅させる必要があるのか?
「今頃、泣いているのかな。可愛い私の教え子は」
『そりゃあ酷いもんでしょうよ』
「慰めてあげなければいけないな。力を貸してあげなければ。『その内、そう遠からぬ未来、態勢が整わぬ内に今度はアークに追撃を受ける立場になるだろうから』」
 幾度目かの繰り返しになるが、六道紫杏は天才である。
 極めて自我が強く、極めて奔放な――何より『六道の女』だった。その野心は無限で、その向上心は何処までも続く。彼女を師事した老教授はそれを嫌と言う程知っていた。彼女のような人間を、『自分で考え、自分で動く力を残したまま支配する事』の難しさを重々に知っていた。ならばどうするか、どうすればいいか。それは――
『きっと彼女は教授がどれだけ頼りになり、どれだけ素晴らしい師であるかを理解するでしょうね。家も、恋人も頼れない。そんな時に一体誰が――誰だけが自分を救い、導く人間であるかを知るでしょう。そして、教授は彼女の期待に応えてみせる――』
「実に悲しい事件だった」
 ――人間は寄る辺なしには動けまい。それは自身の才覚であり、自身を支える仲間達であり、自身が心を配る特別な人間である。大敗し――例え道具のように扱っていたとしても――仲間を失い、最後に居場所を失う。条件が揃った時、老教授は唯囁いてやれば良いのだ。

 ――大丈夫、君には私がついている。君を連中の手に等渡してなるものか。
   大丈夫だよ、六道紫杏。私がきっと君を助けてあげる。

 彼女は六道が魔道を極め、非道を尽くした結果を――六道なる怪物が湯水のように資金を掛け、労力を注いだ結果を、研究成果を倫敦に持ってくるだろう。翼を折られた小鳥はその才能を如何なく発揮し、彼の用意した黄金の檻の中で倫敦派に多大なる利益をもたらすだろう。
 モリアーティ・プランは一人の少女を人形のように変える仕事。
 必要だったコストは『その気もない援軍を幾らか送った』事実だけ。
 後は彼の――ジェームズ・モリアーティの仕事ばかりを御覧じろ。
▲上へ