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TOP(2012/10/14) <新生の刻(とき)> 下
種別: 全角200文字、改行無し    レス:500件

影の継承者(ID:BNE000955)
斜堂・影継

2012/10/15(月) 20:47:31 
「……勝ち、ました……」
「プリンスの敵討ち、とは言いませんけどね」
 リンシード・フラックス(BNE002684)、ヘクス・ピヨン(BNE002689) 。バイデンと関わり深かった二人が少しだけ複雑な顔を覗かせたが――
「なのはな荘、ブイッ!」
「いやったーっ!」
「これで元に戻ればいいけど……」
「見ていてくれましたか、お姉様っ!」
「香夏子はカレーをお腹一杯食べたいのです」
 ――ルーメリア・ブラン・リュミエール(BNE001611)、アーリィ・フラン・ベルジュ(BNE003082)、マーガレット・カミラ・ウェルズ(BNE002553)、宮代・久嶺(BNE002940)、宮部・香夏子(BNE003035)、【なのはな荘】の面々の祝福にその表情もすぐに緩んだ。
「別世界の命運なんてあんま関心も無かったが――『面白かった』ぜ?」
「倒し甲斐があったのは間違いありませんね」
 霧谷 燕(BNE003278)に穿つ銀槍――ノエル・ファイニング(BNE003301)が頷いた。
「手強い相手でした」
「うむ、震えるような大舞台であった」
「――最初から、信じてたけどね」
 この地で失くした友(ルカ)も自分の戦いも、決して無駄にはなるまいと。劉・星龍(BNE002481)、アイリ・クレンス(BNE003000)に応えたウーニャの目は遠い。
「この世界を、俺は……この世界を救いたかった……!」
 想いを吐露した飛鳥 零児(BNE003014)の願いは叶うのか。
「これは終わりなのでしょうか」
 リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)の言葉は幽玄なる溜息のようでさえある。
「それとも、始まりなのでしょうか?」
 聳える世界樹が崩れ落ちたその根元から――汚れを洗い流すかのような清涼な水が湧き出していた。大半が塵に変わった世界樹の『在った場所』に姿を見せたのは小さな芽である。失われた世界樹の代わりにその場所に生み出されたのは余りに小さな新芽であった。
「きっちりしめ……られたか?」
「……ハッピー・エンドがあるかどうかは分かりませんが」
 ブレス・ダブルクロス(BNE003169)、三島・五月(BNE002662)が呟いた。
「富永と一緒じゃ怖くなかった」
「……あんまり買うなよ。しかし、まるで――何かを暗示するようじゃないか」
 プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)に苦笑交じりの富永・喜平(BNE000939)が何を思ったかは知れない。
「私達は『境界線』を守れたのでしょうか……?」
 ラインハルト・フォン・クリストフ(BNE001635)の自問に答えてくれる者は無い。
「ふふ、皆の為に沢山ご飯を作ってやらないといけないねっ!」
 しかし、丸田 富子(BNE001946)の笑顔の通りである。
 確かに戦いは終わったのだ。
「戦う者は挫折もしよう、されど時に大きな成功を掴もう」
「滅びを唯待つ姿よりも、今好感を持てる事は違いありませんね」
 古賀・源一郎(BNE002735)と ロマネ・エレギナ(BNE002717) が微かに笑った。
「イザークさん……」
 スペード・オジェ・ルダノワ(BNE003654)の見つめる先には残り僅かなバイデンを束ねる戦士が居た。
「派手な喧嘩だったねえ?」
「生き残るのもいいもんじゃろ?」
「それで――気に入った? この結末」
「……フン」
 仁義・宵子(BNE003094)、更科・権太(BNE003201) とティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064) の問いかけにイザークは鼻を鳴らしただけだった。興奮し、ときの声を上げるバイデン達の『粗野』さえ戦士達の耳には心地よく。自分達がこの世界にやって来る前は、苦難にも震えるばかりだったであろうフュリエ達が傷付いたリベリスタ達を癒して回るその姿は誇らしくも感じられるものになった。
「フュリエたん! ハイタッチ!」
「……え?」
 不思議そうな視線を自分に返したフュリエの少女に、にっこりと笑った結城 竜一(BNE000210)は手を上げてジェスチャーでそのやり方を教えてやる。
「俺達の世界では、上手くやったらこうやるの!」
 時間が元に戻る事は無い。
 犠牲も、痛みも、それに纏わる感情も。かつての『完全』を保持したままならば、完全世界は何度でも蘇ったのだろうが。不完全の――禁断の味(へんか)を知ったこの世界は、この新生はかつての姿からは余りに遠い。ラ・ル・カーナは何を求めるのだろうか。バイデンは、フュリエは、リベリスタは?

 ――その全ての答えは人心地を取り戻した荒野には無かったけれど。

「え、えっと……こう、ですか?」
「イェー!」
 パチン、と景気良く音を立てた少女の白い掌と、竜一の掌の微かな痛みは。少なくともこの瞬間、『世界が救われた事』をハッキリと二人に実感させるものになっていた。
「――――」
 黙して祈る、葛葉 祈(BNE003735)を漸く張れた空が見下ろしていた。
 今この一時だけは――『一時だけは』この世界に痛みは無い。
 この先に来る『禁断の知恵の実』の代償さえ、今はその青に浮かぶ事は無く。

 ――確かにこの日、ラ・ル・カーナは新生した。
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