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<新生の刻(とき)>
風芽丘・六花(BNE000027)の見た光景は状況の変化を告げていた。
「おにょれー!? こんどはなんなんだー!」
「おー、グッバイですね。元デカイ木」
……身も蓋も無いが、まさに日暮 小路(BNE003778)の言葉は端的に状況を示すものだった。悠久の地に根を張る世界樹が――世界樹『だったもの』がボロボロと崩れ去っていく。無敵を誇るかのような威容も、神の悪意も悪い夢だったかのように。幾らそれを望んで攻撃を仕掛けても成らなかった結末が戦士達の見る光景の中で現実のものになっている。
「お嬢様、こちらへ!」
「ありがとう、ミルフィ!」
アリス・ショコラ・ヴィクトリカ(BNE000128) 、ミルフィ・リア・ラヴィット(BNE000132)
「ハッ、意外と俺もダイ・ハードかい?」
「ふー、厳しかったねぃ」
ソウル・ゴッド・ローゼス(BNE000220)、遠野 御龍(BNE000865) 、
「この俺に掛かればこの程度」
「俺達に掛かればこの程度、だ!」
「……恥ずかしいヤツ」
通常営業の斜堂・影継(BNE000955)の言葉を訂正するツァイン・ウォーレス(BNE001520)、視線を明後日に向ける上沢 翔太(BNE000943)……【LGK】の面々も健在のまま。
「空気が美味しく感じられるのは気のせいかしら?」
「いや、案外事実かも知れないぞ?」
冗句めいた東雲 未明(BNE000340)に口元をニヤリと歪めるオーウェン・ロザイク(BNE000638)の姿もある。
「大丈夫ですか……?」
「ええ、何とか……ごめんなさい」
「そんな事、ミュゼーヌさんが守ってくれたからっ……!」
肩を貸す七布施・三千(BNE000346)と、深手ながらもそんな彼に微笑みかけるのはミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)……
崩壊するその迷宮より飛び出してくるのはその背を見送った仲間達。足場を支えるべく皆が尽力した仲間達のその姿。傷付いていない者は殆ど居ないが、だからどうだというのか。
「びっくりしたんだよぅ!」
「やれやれ、今回も何とか……ですか」
「やったのだ! 分かっていたのだ! 流石、天才!」
「素晴らしい結果でございまする。まさに――LOVE!」
次々と果たされる友の生還を、アナスタシア・カシミィル(BNE000102)の何処か惚けた声と門真 螢衣(BNE001036)の言葉が際立たせれば、勇者の帰還は神葬 陸駆(BNE004022) や一万吉・愛音(BNE003975)のもののみならぬ万雷の如き歓声を荒野の全てに轟かせた。
「良い、棋譜であった」
両目を閉じ、過ぎた戦場に思いを馳せる酒呑 雷慈慟(BNE002371)である。
「ふっ、今回も勝ってしまったな! アンタレス!」
「まおは……がんばりました」
「正直ね、結構燃えたわよ」
「ま、イーちゃん的にはざっとこんなもんですよ?」
自身の得物に言葉をかけるのは小崎・岬(BNE002119) 、荒苦那・まお(BNE003202)が呟き、伏見・H・カシス(BNE001678)、双海 唯々(BNE002186)が笑う。
「帰る場所をきっちりと護る、やっぱカッコいい仕事じゃない」
「ふっ、信じてたぜ! 一番に迎える何処までもドラマチックなワタシ!」
「やあ、何とか生き延びた……」
「皆、無事で何よりでした」
「死んだら元も子もないしね。まぁ、クールな結果じゃない?」
「フウ、今回は焦ったわ」
「良く働いたモンだ……ああ、疲れたわ……」
表情を漸く緩めた神城・涼(BNE001343)が名の通り――涼やかに笑って得物についた『血』を払う。ことしぶといという事に関しては特筆するべきものがある白石 明奈(BNE000717) は若さなりのバイタリティで胸を張った。一方で年齢なりにか疲れ果てた須賀 義衛郎(BNE000465)のしみじみとしたその一言に応えたのは汗ばんだ髪をかき上げたのは氷河・凛子(BNE003330)と雲野 杏(BNE000582)、「ビールでも飲みたい」と言わんばかりなのは坂東・仁太(BNE002354)、佐倉 吹雪(BNE003319)であった。
「何とか……ね。良かったわ、本当に」
苦しい時間は乗り越えた。瀬戸崎 沙霧(BNE004044)の向こうでは、
「やったね!」
「お、おう……」
反射的に思わず抱きついたエアウ・ディール・ウィンディード(BNE001916)に 十凪・創太(BNE000002) が目線を逸らす。
「勇者とはかくあるべきなのです!」
「皆……頑張った……」
「全く、愛と勇気の――結末ですね!」
真雁 光(BNE002532)、エリス・トワイニング(BNE002382)、小鳥遊・茉莉(BNE002647)の視線の先、短い時間の中に『立ち枯れて逝く』世界樹は悠久の時間を早回ししているが如くである。
汚れ、傷み、澱んで、腐ったそのパーツは零れ落ちるなり風の中に塵と変わり逝く。剥がれ落ちる度に大樹は小さくなり、小さくなる程に無数に産み落とされた異形達もそれと同様に――滅びの道を辿っていく。それは元に戻る術を持たないのだろう。そして、狂ったラ・ル・カーナにおいてのみ許された生存権は――残酷にこの先には認められていないのだろうか?
「やりましたね!」
「ええ、やったわ!」
「まぁ、な」
「ふー、やっと終わったのか」
「博打ってぇのは……こんなモンだ。粘り強い方が『結構』勝つのさ」
「『射的』よりは骨があったかな」
「やり切った、と言えような」
「全く――軽く絶望はまるでディナーを美味しくするスパイスね」
笑顔で一声を発したのは陽渡・守夜(BNE001348)と ルア・ホワイト(BNE001372) 。はしゃぐ姉に嘆息したのはジース・ホワイト(BNE002417)。恋宮寺 ゐろは(BNE003809)の溜息に禍原 福松(BNE003517)が笑いかける。リィン・インベルグ(BNE003115)とカイン・ブラッドストーン(BNE003445)、レイチェル・ブラッドストーン(BNE003442)の兄妹は冗談めいている。
「『殲滅砲台』の面目躍如、かしら?」
「とても、良かったと思うのー」
「にゃはは……やってくれたようじゃな」
「罪姫さんは、まだ空腹のままだけど――」
「――戦いは、終わったのね」
崩壊する世界樹(それ)を間近で見上げたクリスティーナ・カルヴァリン(BNE002878)、小鳥遊 京(BNE000880) 、瀬伊庭 玲(BNE000094)、館霧 罪姫(BNE003007)とウーニャ・タランテラ(BNE000010) の呟きが茫洋と――色彩を取り戻しつつあるラ・ル・カーナの空に吸い込まれた。
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