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TOP(2012/09/23) <沙織の強行>
種別: 全角200文字、改行無し    レス:500件

影の継承者(ID:BNE000955)
斜堂・影継

2012/09/24(月) 01:46:30 
http://bne.chocolop.net/img/top_bg/BNE_bg_20120923ex.JPG
<沙織の強行>

「……と、いう訳だ。いい勘してるな、あいつ等」
 ブリーフィングで智親より『申し訳程度の技術的解説』と状況の説明を受けた沙織は智親が指した 小雪・綺沙羅(BNE003284)と ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)の事を頭に思い浮かべ「ああ」と頷いた。
 ラ・ル・カーナで彼女等が感じた事 は全くの無駄では無かった。彼女等の言葉を受け、その能力の全てを尽くした智親の見出した事実はまさに今滅びの淵に立つラ・ル・カーナを救う為のほぼ唯一の手段と考えられているのだ。
「ラ・ル・カーナ側とも確認を取ったがな。リベリスタが集めてきた『忘却の石』。アレの作用とシェルンによる世界樹リンクの能力を合わせれば、世界樹の中に存在するR-typeの構成要素だけを破壊する事が出来るかも知れない。世界樹をミサイルでぶっ飛ばせば解決するって話ならもう少し景気のいい事も言えるんだがな。
 一応可能性としては『高い』と言える程度の推測は出来る、で精々だ。何せ実験する訳にもいかないんだから科学者は絶対とは言えねえよ」
「そりゃそうだ。絶対に効く薬が無いのと同じ事。ましてや今回の急患は臨床試験もしてない新薬じゃないと治せないと来てる。実に厄介極まりないのは間違いないよ」
 沙織の言葉に苦笑いで智親は頷いた。
「どう転ぶにせよ時間は貴重だ。
 一応、ラ・ル・カーナ側には世界樹を『リセット』する為に必要な『忘却の石』の準備を要請しておいた。しかし、バイデン共や巨獣共が『変異体』という化け物に変わっているという話も聞くぞ。連中は理性や知性を減退させている代わりに以前より凶暴で強烈だ。世界樹から新たに生まれるものも含めてこのままじゃあっという間にラ・ル・カーナはおしまいだろうな」
「……」
 智親の言葉に沙織は片目を瞑る。
「その上、現状ではシェルンも普通の方法じゃあの樹には近づけない。ましてやリンクするなんてもっての他だ。どうするかって話をしたらな、これまた愉快。世界樹の一部を物理的に破壊して内部に侵入、コアに直接働きかけるしかない、との回答だ」
 智親は肩を竦めてそう言った。かつてこの国がR-typeなる暴威に抗する術が無かったのと同じように、ラ・ル・カーナの落日はそう容易く食い止まるものではない。智親自身、自分が述べるのは『机上の手段』でしか無い事を良く知っていた。故に珍しく饒舌さを失い沈思黙考の風である沙織の心算を伺うように彼は言葉を選んでいる。
「ま、どっちも『ありえる』」
「ああ、決めるのはこの俺だ」
 司令である貴樹は既に本案件についての指揮権を沙織に譲渡している。『可能性を信じて』ラ・ル・カーナを救うのも、危険を避け撤収を行うのもどちらも考えられる結論ではある。人道的感覚で言うなら助けたいのは山々でも、忌憚無い事実を挙げるならばかの世界はボトム・チャンネルではなく、かの世界の滅亡はアークの終末を意味するものではない。事実、状況に一歩引いて静観しているリベリスタも居なくは無いし、その意見も分からないでもないのだ。
「俺は――」
 沙織は言いかけて一瞬だけ言葉を宙に彷徨わせた。
 しかし、その空隙も刹那の間である。
「――いや、アークは世界樹と対決する」
 言い切った沙織は強い意志を示していた。戦略司令室の意見投票を経ずに自身の指揮権で進む道を決めていた。それは彼が忸怩たる思いで見つめていたナイトメア・ダウンへの報復であり、アークという組織への信頼であり、紡ぐべき未来への賭けであった。
 そう、ラ・ル・カーナにR-typeが出現した以上は。
 この世界が『彼』に再会しないという保証は無い――
「可及的速やかに戦力を編成する。何時、何が起きてもいいように。可能になり次第、作戦を発動出来るように。お前も例の『忘却の石』の能力抽出を急げ」
「あいよ。まぁ、俺もその方が分かり易いわ」
 時間が無いという事もあるが――何時に無く強く決断し、強行を決めた沙織の肩を智親は笑ってバンバンと叩いていた。
 ナイトメア・ダウンの爪痕はこの世界のあちこちに残っている。真白イヴという一粒種を残して死んだ彼の妻は『日本の歴史から消失した』リベリスタの一人である。
「人間様、舐めんなっての。毎回好きに壊して回れると思うなよ」
『痺れるような命令』に思わず上唇を舐めた智親の目は燃えていた。
 それが代理戦争だったとしても、十三年前の意趣返しだったとしても。アークはその為に作られた。目の前に迫る無形の巨人による滅びを見て見ぬ振りをするならば、ボトム・チャンネルも又、遠からぬ未来に同じ運命を辿るだろう。

 ――そして本部内に司令代行による緊急通信が鳴り響く……!
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