http://bne.chocolop.net/img/top_bg/BNE_bg_20120531ex.JPG
<戦略投票結果!>
僅かに緊張を強めたエウリスの面立ちを嘆息と共に眺める。
相も変わらず不敵そのものといった風の沙織は張り詰めた空気を振り払った。
「お人よしってのは何処にでも居る。
状況が分からないバカ然り、状況が分かっていても迷わないバカ然りだ。今回の話が『バカの選択』かどうかは全く別の話になるけどな。
……少なくとも『お人よし』には違いないあの連中に感謝しとけ」
戦略司令室に呼び出されたエウリスに告げられたのは彼女の短絡的で愚かしい直情的な願いに対するアークの回答だった。呆れ半分、想定半分で言う沙織は些か口悪いその台詞の中身よりは随分とサバサバした――むしろスッキリしたような表情で言葉を続けた。
「つまる所、お前の護衛送還と――ラ・ル・カーナへの積極干渉を前提にしたフュリエ族に対する使節団の派遣が正式に決まった」
「……!」
目を見開いて表情を輝かせるエウリスに又沙織は僅かに辟易した。異世界の勢力に頼る事は本来は『外憂を招く』事に他ならない。彼が言った通り『アークが基本的にはお人よしな組織』だったから良かったものの、そうでなければそれは新たな危険を孕む事にも等しかったと言えるだろう。牧歌的なフュリエに権謀術数の概念が無いのか、単にエウリスが単純なだけなのか、それとも彼女に『見る目』があるのかを沙織は確定する事は出来なかったが――何れにせよ、無邪気に喜ぶその姿には苦笑の一つも零れるというものだ。
「具体的な日程、プランについてはこれから詰める事になる。
ラ・ル・カーナの様子を此方側から探知する事が出来ない以上は、お前からの細かい追加聴取も必要になるだろう。基本的な流れとしてはアークは精鋭を用意しお前の帰還を護衛する形になる。お前に後は話を繋いで貰って、フュリエの――シェルン女史との会談をセッティングしてもらう形になるだろうな。一応、前向きにラ・ル・カーナへの干渉を取る事は決めているが、その内容や程度については幾らか詳細な情報収集が必要という事だ。こちらはリスクを飲むのだから、お前もホント、宜しく頼むぜ?」
長い台詞を一息に言った沙織はどれ位通じているか……とエウリスの顔をちらりと覗いた。何やら酷く感激している様子のエウリスの頬は紅潮し、大きな瞳はうるうると潤み、薄い唇は小さく震えていた。
「ありがとう! サオリ! だいすき! アークの皆もだいすき!」
「……は、は……」
直情的な反応からは嘘は見えない。
それを看破する事に長けた――生き馬の目を抜くビジネス界の貴公子は大変な女の子好きでもある。しかしてその女の子からうっとりしたくなるような台詞を受けても、何時になく微妙な顔をしている事実がある。灰色の脳細胞よ、今働け。当のエウリスのその代わりに!
(……フュリエが意識を共有するならエウリスの好感はプラスに働くか?
要するにつまる所、彼女の言が『真実ならば』の話だが――)
※戦略投票の結果
1、エウリスの要請に従いラ・ル・カーナに戦力を派遣する:票数85
2、エウリスの要請を拒否し、三ツ池公園のリンク・チャンネルの封鎖態勢を用意する:票数19
3、エウリスを『ラ・ル・カーナ』に送り届け、フュリエ勢力にコンタクトを取る:票数115
以上の結果から<3、エウリスを『ラ・ル・カーナ』に送り届け、フュリエ勢力にコンタクトを取る>が採択されました。
具体的な作戦計画・内容については後日、投票率を鑑み、投票時の備考内容等で妥当と思われる部分も取り入れ、戦略司令室により作成されます!
|