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TOP(2012/03/25) <深春・クェーサー> 上
種別: 全角200文字、改行無し    レス:500件

影の継承者(ID:BNE000955)
斜堂・影継

2012/03/25(日) 22:48:33 
http://bne.chocolop.net/img/top_bg/BNE_bg_20120325ex.JPG
<深春・クェーサー>

「……」
 岡山県内某所――深春・クェーサーは目を閉じ黙り込んでいた。
 彼女がこうして沈思黙考に沈んでいるのは今に始まった事では無い。鬼ノ城自然公園での鬼道との交戦。痛恨から辛くも逃れたあの日より彼女は常に『その先』を考え続けている。
 鬼道は一旦その活動を控え、岡山県内の治安は一応の小康状態を保っているが、状況が異常なのは最早誰の目にも明らかだった。忌むべき戦場――あの『温羅』が蘇った封印の地には彼のみならず、天を突く鬼の本拠『鬼ノ城』が復活を果たしている。今一時の穏やかな時間が明日も続く保証は無く、続く未来が決して許容出来ぬ類の物になる事は知れていた。
「……………」
 しかして、深春は先の戦いで虎の子の戦力――名門のダン・キッシー、劉美鳳、コーデリア・ルイセを失う形になっていた。少数精鋭を掲げたそのチームすら半壊し、機能を失っているのは他ならぬ彼女に分からぬ筈も無い。
「……よぉ、大将。状況が動き始めてるみたいだぜ」
 拠点の入り口のドアが開く。
 椅子にかけ、瞑目したままの深春に声を掛けたのは白いスーツにパナマ帽を被った長髪の男――フォックストロットだった。鋭い目つきをした彼はそんな面立ちに似合わない人好きのする声で少女の元まで歩み寄る。触れなば切れん雰囲気を纏う彼女に全く動じていないのは彼らしいと言えば彼らしいと言えるのだろうが。
「話を聞こう」
「んじゃま、アンタに頼まれてた情報収集の件だが。
 例の『吉備津彦』。奴だ。奴が残した対『温羅』用の武器――いや、兵器があの『温羅』の復活と共にこの世界に現れたらしい。鬼連中とあのアークの連中は激しくやり合ってこれを分け合ったみたいだな。俺達は後手を踏んだ事になる」
「続けて」
「いや、まぁ……だから言っただろ? アークはかなりやるってさ。
 鬼共が勘付いたのは恐らく宿敵への嗅覚か何かで、まぁこれにしか通用しない話だろうが。連中は違う。あの『万華鏡』は全く嘘みたいな精度で知り得ぬ事まで盗んじまうのさ」
 深春が目を開ける。フォックストロットの顔を真っ直ぐに見る。
 彼は金でどんな仕事も請け負う傭兵である。フィクサードであり、リベリスタでもある。こうして真似事をする事もある。元々深春はチームのこの男、更に通称『青大将』からもアークの話は聞いていた。神秘界隈に現れた超新星。『あの』ジャック・ザ・リッパーを仕留めたという俄かには信じ難い戦果を聞いても二人は大した驚きの反応を見せなかった。それが物語る所は交戦した人間に分かるアークの力の証明であるのだろう――彼女もそう判断していた。
「……知っている。私も彼等と轡を並べたのだから」
 最初に共闘を受諾したのはその話を聞いていたからである。
 しかし、果たして深春の暫定評価は共闘の形を取る事で正式な本物へとステージを上げた。二度の戦いでアークの見せた奮闘は十分に言う程のものを彼女に感じさせていた。つまり、彼等は強い。十分に信を置ける戦力であり、相応の覚悟も持っている。
「クェーサーも零落したものだ。
 全てが我が身の非才を理由にする以上、とても父母にも先祖にも顔向け出来ないな。当代がこんな小娘では彼等にも遠く及ぶまい」
 自嘲する事も無く淡々と事実を並べた深春から危険なものを感じ取ったフォックストロットはひょいと肩を竦めた。
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