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<交渉結果!>
「結論から言えば、アークは先の交渉団が持ち帰ったお前との『協定』を呑む事にした」
二十一世紀は魔女も携帯を持ち歩く時代である。
予め告げられていた電話番号を押した沙織は相変わらずやたらに軽いアシュレイの調子に構わず端的な事実だけを告げていた。
「わあ! 嬉しい! 今日から皆さんとはオトモダチですね!」
「そうある事を望むけどな」
朗らかなアシュレイの言葉に沙織は皮肉な言葉を返した。
友情の始まりは突きつけられたナイフである事もある――事実は小説よりも奇なりとは良く言うが、果たして今回はどうなのか。耳元で囀る柔らかなアルトは嫌という程に耳触りが良く、沙織は何とも判断に困る有様に何度目か知れない溜息を吐き出していた。
「但し、此方にも条件がある。リベリスタを交えた検討会議で多く集まった意見だ」
「はいはい」
「三高平はお前を受け入れる事に異存は無い。但し、全てをフリーにする訳じゃない。幾つかの制約を呑んでもらう。
まず第一にお前がアークと『協定関係』にある事は、広く明らかにしない事。狭くに関しては……お前が行動の制約を呑まなかった以上はそういう事なんだろうが。少なくとも大々的にお前の存在を外に宣伝したくない理由は山程ある。その辺りは分かるな」
「お話、ご尤もです」
「こっちはこっちで『オルクス・パラスト』や『仁蝮組』には説明する事になるしな」
「はいはい。分かってます」
沙織の言葉を聞いたアシュレイは受話器を耳元に当てたまま頷いた。
「宜しい。第二に三高平居住の条件を伝える。三高平はお前を受け入れるし、基本的な自由は認めるが……例外はある。まず、アーク本部について。必要な事もあるだろうからブリーフィング・ルームの利用までは認めるが、こちらで設定した『秘匿階層』に足を踏み入れる事を禁止する。又、お前がフォーチュナとしてアークに協力する場合でも、こちらの許可無く万華鏡にアクセスする事を禁止する。併せて、こちらで設定する『要人』と会う際には必ずアークのリベリスタを立ち会わせるというルールを架したい。異論は?」
「ありません。それもご心配尤もですから」
「いいだろう。じゃあ、この話は進めても構わないな?」
「はい」
アシュレイと沙織。二者は言葉をかわしほぼ同時に頷いた。
お互いに腹の内を探り合うやり取りだが、魔女の真意が、沙織の真意がどうあれ……この場では約束が締結される。
その先、彼方にある何も見えなくても、今そこにある危機は目に見えるものである。果たして、関わるもの全てに『塔』をもたらすという魔女との約束がどんな意味を帯びるのかを今、誰も知らなかったが――
「あ、そうだ。私からも一つだけ」
――魔女は何事でもないかのように笑っていた。
「リベリスタの方と約束したんですよ!
私、メイド喫茶やりたいです! 出来そうな建物一つ貸して下さい!」
全く、冗談のように朗らかに。
※賛成192、反対15でアシュレイとの協定が締結されました!
→アシュレイのアトリエ(メイド喫茶込み)は準備中(はぁと)
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