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TOP(2011/12/28) <インター・ミッション>
種別: 全角200文字、改行無し    レス:500件

影の継承者(ID:BNE000955)
斜堂・影継

2011/12/28(水) 16:52:42 
http://bne.chocolop.net/img/top_bg/BNE_bg_20111228ex.JPG
<インター・ミッション>

「貴方達、凄い人気と評判ね」
 受話器の向こうでさもおかしそうに笑った美しい女の声に時村沙織は小さく苦笑いを浮かべていた。
「『極東の空白地帯』でバロックナイツ、歪夜十三使徒が陥落!
 神秘界隈のトップニュースだわ。蛇の道は蛇、かしら。うちがそっちに協力している事を嗅ぎ付けて、こっちにも色んな探りが来た位だもの。そっちはさぞかし大変なのでしょうね?」
 日頃は皮肉屋で意地が悪い同盟相手だが――シトリィンの言葉は胸がすいた、とばかりの爽快感に満ちていた。彼女がアークに協力を持ちかけた際、内外からは随分と突き上げがあったのだ。それを考えれば自身の先見の明を誇りたくなる……と同時にうるさ型の鼻をあかした格好になったのだから気分も晴れやかになるというものであろう。
「効果は劇的、だな。
 日本なんて相手にもしてなかった……そんな空気だった外国の連中がこぞって情報交換やら相互協力の申し出をしてきてるよ。
 いっそ清々しい位の掌返しだな。『使徒』ってのはそれだけの名前って事なんだろうが」
 奇しくもジャック・ザ・リッパーが望んだ通り過日の決戦は語り継がれる『伝説』の一つになったらしい。物事の真相を探るに案外外から見える事実等があてにならない事はままある。今回の件もある意味においてはその証左の一つであると言えようか。
 アークは万全なジャックを独力で仕留めた訳では無い。しかし、その辺りの真相を外の連中が詳しく知る道理も無い。そして当然ながら――そこにどんな事情があろうとも――戦争は勝利こそが尊いという事実に変わりは無い。
「当然の事よ」
 上機嫌のシトリィンは沙織の言葉を短く肯定した。
「五十年と少し前の話だけど――今のアークより規模の大きなポーランドのリベリスタ組織が使徒一人に滅ぼされた事があるわ。ケイオス・“コンダクター”・カントーリオによる『混沌』事件。それ以外にも『史実』には山のような敗北記録が積み重なってるわよ。『使徒』っていうのはそういう連中。世界中のリベリスタから、フィクサードからも。忌まわしく恐れられ、蛇蝎のように嫌われている連中。願わくば、人生の中で彼等に関わる事が無いように――願われているそういう連中。リベリスタも、フィクサードも連中に煮え湯を飲まされた事のある人達は皆、ここぞと快哉を上げている事でしょう。使徒の撃破はそれこそ歴史的な快挙よ。十三使徒が陥落したのは、だってこれが初めてなんだから」
 シトリィンは「尤も十三使徒の座が全て埋まったのは七年前だけどね」と付け足した。
「成る程。遥かローマからラヴレターも届く訳だ」
「言っておくけど、関わらない方がいいわよ。ヴァチカン(れんちゅう)には」
「全くだ。忠告はありがとよ」
「……その分じゃ、貴方も色々と『分かっている』みたいだけど。
 今回の件は世界的にアークの声望を高めたのは間違いないわ。実際の所、如何に幸運が重なっても『使徒』を殺し切る運命を握る組織は少ないでしょうし。でも、有象無象は余り信用しない方がいいわよ。海外(そと)の連中は貴方達を利用する心算はあっても、良き友人足るとは限らない。
 ……そうね、順風の今なら兎も角。逆風の助けになるかどうかは未知数よ。違って?」
「『でも貴方達が動き出す前から支援してきた私達は別』か。
 上手い牽制を入れるな、シトリィン。だが、杞憂だよ。現時点でアークは手広く同盟先を増やす心算は無い。体良く使われるのは御免だし、何より日本が危機に陥ったからといって海を越えて助けに来てくれる程の献身は連中には望めないだろうから。情報交換先が増えたのは、正直有り難いとは思ってるけどね」
「……話が早くていいわ、貴方は」
 シトリィンは言葉とは裏腹に少し退屈そうな溜息を吐いた。
「でも、貴方達が『使徒を陥落せしめる程の組織』である以上は、『使徒』の撃破がリベリスタから見て大変喜ばしい事であった以上は。こちらも礼儀を尽くすべきよね。近く追加の人材をそちらに送るわ。『ダークナイト』の力を持つ子よ。貴方達の今後の戦いと戦力の拡充に役立つでしょう」
「サービスがいいんだな」
「感謝していいわよ。『オルクス・パラスト』は大事になさい」
 リベリスタの世界にも政治が在る。決して世界中の組織は一枚岩ではないし、主義主張が異なる事もあれば勢力争いを起こす事も多いのだ。謂わばそれは専属の同盟関係に対する見返りなのだろう。シトリィンは本気か冗談か分からない調子でそう告げた。
「そうだ、沙織」
「うん?」
「『塔の魔女』の件だけど、結局あの女はどうしたの?」
「ああ――」
 沙織は自分のデスクの上に置かれた可愛らしい便箋に視線を投げて呟いた。
「『これから』だ。丁度、招待状が来た所だから――」
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