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<後宮 シンヤ&バロックナイツ>
会員制のショット・バーの一幕である。
「お二人で呑んでいる所を、失礼しますよ」
「……あァ?」
後宮シンヤの涼やかな言葉に外国人のカップルの片割れ――男の方が面倒そうに視線を向けた。強いアルコールを呷るように飲み干しているのに酒気に濁らない視線は底冷えするような色合いを湛えている。蒼白と言っても良い肌色に色のついたサングラス。奥から覗く剣呑な瞳は光の加減の所為か、ファッションか。二色にも見える。
「相変わらずの殺気ですね。私の事を覚えているでしょうか?」
「知らねェな。殺すぞ、消えろ」
「……もう、ジャック様ったら。相変わらずですねー。
はい、覚えておりますよ。シンヤ様……でしたっけ。剣林様のお屋敷で確か……先の作戦は大変だったみたいで、お疲れ様でした」
展開のあやとは言え、シンヤの仲間を殺しておいて余りにもにべもない男――ジャックに対してにこやかな笑みを浮かべたのは美しい女――アシュレイの方だった。ウェーブがかった髪を揺らして愛想の無い男に代わるように声を掛けてきた男に対応する。
「でも、良くここが分かりましたね。連絡先等は差し上げていなかった筈なんですけどねー」
「この辺りは私に協力的な人間が多いんですよ。
お二人は目立ちますからね。探せない話じゃなかった……って所ですか」
小首を傾げたアシュレイにシンヤは薄い笑みで応えた。
蛇の道は蛇という言葉がある。
蛇の道を知るのは蛇こそであるという諺であり、言うまでもなく専門を知るのは専門である……といった意味合いである。
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