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<蝮原会談>
「今顔を突き合わす訳にはいかないんでね。モニター越しで失礼するぜ」
アーク本部のブリーフィングルームの一室。
モニターの中の大きな時村沙織がそんな風に言葉を投げた。
「勿論、構わんさ。話を聞いてくれて助かったぜ、時村の」
紆余曲折を経てこの場所まで通された蝮原咬兵は小さく肩を竦めてそう応えた。
「そこのデカイ旦那は保険って訳かい?」
「まぁね」
蝮原がちらりと視線を向けた先にはセバスチャン・アトキンスの巨体がある。
「アンタが暴れ始めた時、一人で相手が出来そうなのはセバスチャン位なもんだろうからな。アンタだってずらずらと監視を並べられた上での会談なんていい気はしないだろう?」
「全くだ。配慮を痛み入るよ。オルクス・パラストの絶対執事か。俺も買われたモンだな。そんなものはどうでもいいが」
無言のまま目礼をしたセバスチャンに蝮原は似たような動作を返した。蛇の道は蛇。お互いに聞き知っては居る間柄である。
「例の話についてだがな。こちらから幾つか質問や疑問が出てる」
「……と言うと?」
「まず第一にお前さんの真意だな。相良雪花を救いたい理由。個人的には聞くだけ野暮とは思うがね」
「ああ、野暮だ。だが、答えよう。お嬢は先代……相良橘平の一粒種だ。先代と約束した俺には何としてもお嬢を守る義務がある」
「成る程。聞いている通りだな。次、投降させるフィクサード共についての保証の問題だ。投降する連中は制御が効くのかどうか」
「愚問だ。俺の面子を潰す奴が俺に言われて投降するか? それに投降自体もあくまで『俺に続いて』の話だ。条件に挙げたお嬢の救出が上手くいって……俺がアンタ達に身柄を任せてからの話になるだろう。そうでなきゃ筋が違う」
「つまり成功後の話と。まぁ、確認みたいなものだな。その投降する一派はお前の組織の連中って事で構わないのかね?」
「いいや。だが、俺の『仲間』である事は確かだ。
リベリスタは知らねぇがフィクサード周りの『組織』なんてものが如何にあてにならねぇかはお前さん達の方が理解してるんじゃないか?」
蝮原の皮肉に沙織は笑った。
「確かに。まぁ、投降してくる連中が『まとも』で『言う事を聞く』なら問題ないさ。まぁ、それでも難しい感情のリベリスタは少なくは無いようだがね」
「……俺としちゃ仲間に『手土産になってくれ』なんて頼むのはかなり抵抗があったんだがな。一応、お前達が容れやすいようにこの後の敵を減らしてやれる……って心算だったんだが。
まぁ、投降の件は受け入れないなら受け入れないでも構わん。フィクサードの連中は別に投降したがっている訳じゃねぇからな。俺に力を貸してくれるって意味で、この裏稼業を捨ててもいいって言ってくれてるって所だ。何れにせよ世話になった上でお前達に迷惑をかけるような事はしねぇし、させねぇよ。
……俺にとって今重要なのはお嬢の為にお前等の力が借りられるかどうかだけだからな」
「さて、それはこれから結論を出す所だが――」
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