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TOP(2011/06/14)
種別: 全角200文字、改行無し    レス:500件

影の継承者(ID:BNE000955)
斜堂・影継

2011/06/14(火) 23:11:25 
http://bne.chocolop.net/img/top_bg/BNE_bg_20110610ex.JPG
<千堂 遼一>

 都内某所、雑居ビル。あるオフィス――
「……僕が誰か? いや、そんなのは重要じゃないでしょう。
 重要なのは今僕が伝えている事実の方でね。うん、余り長いお喋りを楽しめる程、時間的余裕は無いでしょ?」
 携帯電話を片手にした男――千堂遼一は今話している相手、今話している内容とはかけ離れている位に気楽な調子でそんな言葉を吐き出していた。
 真実というものは一観点から見て、不備なく万全に見通せるという程簡単なものではない。世の中には重要なものもそうでないものも含めて山のように事情が積み重なり、絡み合う蛇のような思惑が事態を悪戯にややこしくする事は日常茶飯事とさえ言える。
 千堂からしても『敵と電話する』等という状況はそうある事では無いのだが、そこはそれ。この男の場合気に留めた様子も無い。
「うん。そういう事だね。
 要するにね、時村本邸が襲われる訳ですよ。目的は当主・時村貴樹の暗殺。カレイド・システムが感知していない? うん、その通り。理由があるから感知しない。その辺は言う必要の無い事だから伏せておくけどね。フィクサード連中は暴れ出してるんでしょ? わざわざあれだけ派手にやっているんだからそこに理由があるのは道理だ。理屈では分かって貰えると思うけどね。……うーん、そろそろだと思うし。何なら本邸と連絡を取ってみればいい」
『フィクサード千堂』の電話の先は今まさに戦争をしている真っ只中のアーク本部である。会話の相手はその司令代行。内容と合わせて考えれば立場を考えれば俄かには信じ難い行動ではあるのだが。
「……ああ、うん。信じてくれた? なら良かった。
 話を続けるけど。時村本邸を襲撃するのは『相模の蝮』こと蝮原咬兵とその他数部隊ね。そっちにもデータはあるだろうから細かい部分は割愛させて貰うけど作戦に参加する主なフィクサードは『相模の蝮』蝮原咬兵、『Ripper's Edge』シンヤ、山楝蛇 蘭子、フォックストロットに『ブラックダイヤモンド』の黒武石炭、それから配島君ね。何れもそちらが既に交戦してる相手の筈だよ。
 まぁ、君達がチートを使うんだから。他に使う人が居ても不思議じゃないでしょう? 彼等はカレイドシステムを避けてね。これから本邸を襲撃しようって手筈になってる。本邸との通信をジャミングしてるのは正門の配島君。裏門は石炭君が固めてる。主に戦闘を担当するのが残りの連中。
 まぁ、皆手強いと思うけどそういう事。頑張ってね」
 電話を切った千堂は「ふぅ」と一つ息を吐いた。
 一仕事を終えた彼に彼の部下は恐る恐るといった調子で尋ねる。
「……いや、何て言うか……疑う訳じゃないんですけど、大丈夫なんですか? こんな事して」
「いいんじゃない?」
 部下の問いにロッキングチェアを傾けた千堂は相変わらず覇気の無い調子で答えを返した。
「まぁ、確かに色々困った事は起きるかも知れないけどさ。
 大事なのは僕達が困るかどうかじゃない?」
「はぁ……」
『仲間』の重要情報を敵に流しておいて薄情極まりない千堂に部下は生返事を返した。
「危ない橋とか。仲間を売っていいの、とか思ってる?」
 千堂はそれを察したかのように含み笑いと共に聞き返した。
「……その……」
「橋の上ではバランスが大切だろ。
 元々、フィクサードのエージェントなんてやくざな仕事だし。僕を切り捨てるメリットとデメリットが吊り合わない限りどって事無いよ」
 千堂はぶらぶらとICレコーダーをぶら下げて見せる。「あ、君も同じだから。余計な事しないでね」と釘を刺す千堂に部下は背筋を寒くした。
「それに仲間じゃないだろ。元々、商売敵なんだし。
 ほら、『とんでもない機会』が来ちゃったから対アークで何となく纏まってはみたけどさ。昨日までの敵が今日から友達なんて無いでしょ。『多数決』で蝮に任せる事になったけど、組織の力学が働いてるのは明白だ。蝮が仕事成功させたら、『こっち』の立場が弱まるじゃない。未来永劫仲間って訳じゃないんだし。これは良くないさ」
 冷淡極まりない。
「大規模陽動でリベリスタをつり出して即応性の高い主力を撃滅。同時に司令を暗殺して混乱を発生させ、立ち直る前に主力部隊で三高平自体を叩く。
 ……合理的って言えば合理的だけど無理だよねえ。皆好き勝手なんだもの。
 ま、うちは別に暗殺に戦力をやった訳じゃないしね。誰が倒れたってそれは好都合。商売敵か敵が減るだけ。計画失敗の上、共倒れしてくれたら万歳だ。
 ああ。僕だけじゃないんだよ、動いてるのは。
 僕なんて品のいい方さ。『砂潜り』のトコも蝮への切り札を手に入れる為かな? とんでもない事やらかしたみたいだし、連合は間もなく崩壊するだろうから」
 窓から差し込んできた午後の日差しに目を細めた千堂は面倒くさそうにそう言うと欠伸を噛み殺しながら背筋を伸ばした。
 後は野となれ山となれ。
 結果に関わらずどうなるかが分かっているならば、後はバランスを崩さないように腐心するだけ。千堂の流儀は単純だ。
「……それにね」
 彼は少しだけ冗談っぽく悪戯めいて最後に言葉を付け足した。
「実は僕、あんまりアークに崩壊して欲しくないんだよな。
 だってほら、日本ってリベリスタが壊滅して長かったじゃない。悪党が沢山跋扈してるのに対抗できる正義の味方が居ないとか、バランス最悪で気持ち悪くて気持ち悪くて……」
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